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第40話 我慢は良くない

発売日ということで本日2度目の更新です!

 片付けを終えた俺たちはソファに座りテレビを見ていた。今見ているのは録画しておいたアニメだ。意外と言っていいのかわからないが結依は結構アニメを見る方のようだ。


 俺の基準が間違っているかもしれないが……なんたって貧乏でテレビなんかなかったから基準がいまいちよくわからない。俺からしたらアニメに限った話ではないが、みんなテレビを見る方になってしまう。


「うぅ……続きが気になります……」


 アニメを見終えた結依が声を漏らす。結依と一緒に見始めたばかりの俺からしてもかなり続きが気になるところで終わっていた。


「結依はやっぱり今見たもののようにラブコメが好きなのか?」


「はい! 勧められたら基本的に見てみますが、やっぱり一番好きなジャンルはラブコメですね。


雪君は好きなジャンルとかありますか?」


「うーん……」


 テレビはなかったが、本は勧められて読んだことはあった。それこそ勧められれば、ラブコメやファンタジー系、推理系、ホラー系など様々なジャンルを読んだ。どれも面白かった。

 以前古本屋さんでバイトをしていた時仲良くなったお客さんにおすすめの本を教えてもらったり、時には貸してもらったりなどしていた時期もあったのでそれなりに数は読んでいる。

 古本屋のバイトといってもお客さんがほとんど来なかったので時間はかなりあったし……


 今思い返してみると何系が好きというのは考えたことがなかったな。


「そうだな……ラブコメかファンタジー系かな」


「そうなんですね! それなら私のおすすめを見てみませんか?」


 結依の表情は自分の好きなものを教えたい! 共有したい! という気持ちが伝わってくる。古本屋の時の子も同じような表情をしていたのを思い出す。なんだか懐かしい気持ちになる。


「せっかくだし見てみようかな」


「是非! その前に飲み物を持ってきましょうか」


「そうだな」


 俺たちは準備を始め、見る準備を整える。


「さっそくみましょう」


「なにを見るんだ?」


「これです!」


「あ……」


 題名を見て思わず言葉が漏れた。こんな偶然があるのか……


 この作品は俺が古本屋のバイトをやめる前にその子が貸してくれると言っていた作品だった。実際は借りる前に辞めることになったので内容は知らない。


「知っていましたか?」


「いや、題名に見覚えがあったから……いつか見たいと思っていたんだ」


「それならちょうどよかったです」


「そうだな」


 何との懐かしい記憶を呼び起こす偶然だ。その子は今どうしているだろうか? 

 そんなことを思いながら見始めた。


 


 ◆◆◆


 


 最終話のエンディングが流れる。全十二話、一気見してしまった……。途中でやめることが出来なかった。

 結構長い時間見ていたはずだが、体感は一瞬だった。


 本当に面白かった。主人公とヒロインの何気ない日常は気持ちがほっこりした。物語が進むにつれて二人を取り巻く環境の変化、時にすれ違い、時に支えあいながら困難に立ち向かっていく姿。


「二人が報われて本当に良かった……」


 かみしめるように出た素直な感想だ。気持ちを落ち着けるために一つ大きく息をする。飲み物を飲もうと思ったがもうなくなっていたので仕方がない。それは結依も同様だった。


「面白かった。勧めてくれてありがとう」


「い、いえ……楽しんでもらえてよかったです」


 そういって笑う結依。そんな結依の姿になんだか違和感を感じる。


「どうした?」


「な、なんでもありませんよ!?」


 何かありそうな反応だ。結依はそのままうつむいてしまう。


 いったいどうしてしまったのかと結依を見ているとあることに気が付く。


 体に力がはいっており、まるで何かに耐えているようだ。


 ……あっ


 俺は一つの結論に至った。確かにこれは言いにくいことかもしれない。


「もしかして……トイレに行きたいのか?」


「っ?! ち、違います!」


 どうやら正解らしい。

 今は足を結んでいる状態だし、結依の方から一日中つけると言い出したのだ。さらには一度足の結びを外そうとした俺を止めている。もしかしたら結依から外すとは言いにくいのかもしれない。だからと言って一緒にトイレに行くのは恥ずかしいのだろう。俺だっていやだ。


「……」


 こうやって見ているとなんだかもう少しだけからかってみたいという、何ともよくない感情がこみ上げてくる。


 俺はそんな感情を振り払うように結依に提案する。


「ちょっと飲み物を飲みすぎてトイレに行きたいんだけどこれ外していいか? さすがに一緒に行くのは恥ずかしいし」


 そう聞くと結依はコクコクと頷く。


「ありがとう」


 結依の許しも出たことだし足の結びを外す。そして俺は再び結依に問いかけた。


「先に行く?」


「すみません! 失礼します!」


 我慢の限界だったのか、若干涙目で答えるとすぐに立ち上がりそのままトイレの方にかけて行ってしまった。


 そんな結依の姿を見送り、さっき結依に加虐心のようなものを抱いてしまった罪悪感を誤魔化すように大きく息を吐きだした。

発売まで来れたのは皆さんのおかげです。ありがとうございます!

加筆修正に特典SS、タペストリーなどもありますので是非お手に取ってもらえると幸いです!

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書籍購入して読みました! 結依さん可愛い&エロい笑(カラー絵) 今後も楽しみにしています
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