第4話 転校してもらいます
引っ越しが全て終わった。そもそも俺の荷物なんてほとんど無く、持ってくるものは少なかった。
その他の家電製品は最初からアパートに備え付けられたものなので持ってくる必要はない。それにこの家には最新の家電製品が置いてある。
最新かどうかわからなかったが、結依が最新と言っていたので最新の物なんだろう。
それだけではない。この家にはテレビがある。一家に一台テレビがあるというのは嘘ではなかったようだ。噂によると何台もテレビが置いてある家もあるらしい。とんでもないな……
冷蔵庫もただの飾りでは無くちゃんと中身が入っていた。
我が家の冷蔵庫はほとんど物が入っていなかった。まぁ、そのおかげでいつ電気を止められても問題なかったんだけどね!
俺は今、結依が入れてくれたお茶を飲んでいる。
目の前では行儀よく座る結依の姿があった。
「これからのことについてお話ししますね」
「はい」
「雪君には私の通う学校に転校してもらいます」
「えっ……そんなこと出来るのか?」
結依の通う学校かなり学力の高い生徒が集まる。その上、家柄もいいお金持ちの子供たちが通う学校だ。
ただ頭がいいだけでは駄目なのだ。
「大丈夫です。家のことは気にしなくても平気です。こちらで手を回しますので」
まるで俺の心を読んだかのような言葉だ。
「ただ、さすがに編入試験は受けてもらうことになります」
「編入試験ってかなり難しいんじゃないか?」
学力もトップクラスの学校だ。そんな学校の編入試験となればかなり難しい問題が出るに違いない。一般的な入試の問題よりも簡単だったら、みんな一般入試なんて受けず、編入試験を受けるに決まっている。
きっと俺の学校とはレベルが段違いだろう。
「雪君の言う通り難しい試験のようです」
「なら……」
「でも、心配はしていません。雪君の学力なら難なく合格できると思っています」
たしかに勉強は頑張っているけど……
「ここに以前、雪君のように編入をした人が受けた試験問題があります」
テーブルの上に国語、数学、理科、英語それぞれの問題が置かれる。
数学の問題をとって中身をパラパラと眺める。
あれ? 意外と簡単だな。この程度なら……
ふと、結依の方を見るとにこりと笑っている。
「もしかして、この問題偽物なのか?」
もしそうなら、予想以上に簡単であることが説明がつく。
「いえ、間違いなく本物ですよ……簡単だって思いましたよね?」
「まぁ……」
正直拍子抜けって感じだ。これならなんとかなると思う。合格点が高いとか、か?
「雪君の実力なら当然だと思います」
嬉しそうに笑っているが、まだ合格したわけではないから安心はできない。
「来週の日曜日に編入試験を受けてもらいます。それまでに色々用意をしてしまいましょう」
俺が今通っている学校にも仲のいい友達はいるし、教師にはよくしてもらっている。俺の家が貧乏だと言うことで問題集を買ってくれた人までいるのだ。転校する前に挨拶はちゃんとしておきたい。
かなり急な展開だが最低限のことは出来そうだ。何も言わずに転校することだけは避けたい。
「いきなり転校しろなんて言われて嫌ではないですか?」
「たしかに友達に会いづらくなるのは寂しいけど、二度と会えない訳じゃないしな。それに俺は買われた身だから文句なんてないさ」
「そうですか……」
結依は不安そうに俯く。
「それに、結依と同じ学校に通うなんて小学生以来だから少しだけ楽しみなんだ」
「私も! 私も楽しみです!」
勢いよく顔を上げる。こちらに乗り出す勢いだ。
「学校でもよろしくな」
「はい!」
「とは言うものの、まだ合格してないんだけどな」
「雪君なら絶対に大丈夫ですよ」
そう言って微笑む結依の笑顔を見て、期待に応えられるように頑張ろうと思った。
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