第37話 お願いってこれかよ!
発売日まであと2日!
一日を終えた放課後の時間。
結依と共に教壇の上に立っている。みんなの前に出たのは昨日決まったことをみんなに伝えるためだ。一応俺も仮ではあるが生徒会メンバーとなっているので今回は結依と共に前に出ているのだ。ただ、基本的に結依が話すので本当に前に出ただけではあるが……
「昨日生徒会で決まったことについて連絡させていただきます。この前皆さんに答えてもらった男女混合二人三脚についてです」
注目が集まる。それぞれ思っていることは違うと思うが、結果を気にしている者がいる。
「結果から先に言いますと男女混合二人三脚は新競技として追加されることが決まりました」
「おぉ!」
「えぇ……」
反応は様々だった。喜びの声を上げるものもいれば、ひそかにガッツポーズをしてるものまでいる。基本は男子だが……
逆に落胆の声を漏らす人もいれば、いやな顔をしている者もいる。こちらは女子が多い。
特に反応せずただ聞いている人もたくさんいる。前に立つと想像以上にクラスのことがよく見える。それこそ一人一人の表情などはっきりと見える。結構面白い。
結依はざわめきが少し収まってから報告の続きを行う。
「ですが、今回の体育祭では正式な競技種目としては扱いません」
皆が疑問の表情を浮かべている。クラスの一人が結依に向かって浮かんだであろう疑問を素直にぶつける。
「新競技として追加するのに正式な競技種目ではないって言うのはどういうことですか?」
「本来各競技で順位をクラスごとに競い合い、順位に応じた点数の合計で最終結果を出しますが、その競技の中には含まないことにしました。男女混合二人三脚はエキシビションマッチという扱いになります。ですので、必ずクラスから参加者を出す必要はないです」
「出たい人だけが参加する競技ってことですか?」
「はい、その通りです。参加する人はペアの人を見つけて参加してもらいます。組む人はほかのクラスでもいいですし学年が違っても問題ありません」
明らかにがっかりしている人が何人かいる。逆に出なくていいことが分かりほっとしている人もいる。
一人の男子生徒が言う 。
「姫野さんは男女混合二人三脚に参加する予定はありますか」
その瞬間、教室の空気が変わる。男子だけではなく女子までもが結依の回答に耳を傾けている。
当の本人である結依はそんな雰囲気など全く分かっていないように答える。
「はい、生徒会メンバーとして新競技に採用した立場ですので参加しようと思っています」
生徒会メンバーだからと言ってそんなことする必要なんてないと思うが、これは結依なりの責任ある立場としての振る舞いなのかもしれない。
そんな結依の言葉を聞いて次に来る質問なんて決まり切っているだろう。しかしその質問はされることはなかった。なぜならその質問が来る前に結依が答えたのだ。
「私はここにいる雪君と参加します」
「………………は?」
思わず間抜けな声が出る。
初耳なんですけど!?
何も聞かされていなかった俺は驚いて結依の顔を見るがいつも通りの笑顔をクラスのみんなに向けている。
まだ頭が追い付いていない。結依から視線を教室のみんなの方に移すと男子からの殺気のこもった視線が突き刺さる。
「また抜け駆けか?」
「幼馴染みの特権ってやつか?」
「俺も姫野さんの幼馴染みになりたかった」
「なんか、姫野さんと幼馴染みの気がしてきた」
「夜道って怖いよな」
「純粋に羨ましい!!」
様々な声が聞こえてくる。中には物騒な発言もある。
成瀬の方を見ると面白そうに笑っている。他人事だからって……
「雪君は体育祭までの期間、臨時の生徒会メンバーとしてお手伝いをしてくれているんです。男女混合二人三脚は私一人では参加できないので雪君にお手伝いをお願いしました」
昨日言っていたお願いってこれのことかよっ!
「生徒会メンバーとしての仕事ならまぁ……ギリギリ?」
「ギリギリだな」
「仕事としてなら……」
「まぁ……」
生徒会メンバーとしての仕事ということで少し殺気が収まる。
結依はそんな男子たちの視線などどこ吹く風で話を続ける。
「参加したい人は来週までにペアを決めておいてください。それでは以上になります」
結依が自分の席に戻るために動き出す。俺もあわててそれに続く。席に戻るまでの間、男子たちと視線を合わせないようにしたのは言うまでもないことだった。
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