第35話 成瀬の思い
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今日の授業がすべて終わり、生徒会の手伝いに向かうために荷物をまとめていると、人が近づいてくる気配がしたので顔を上げる。するとそこには成瀬の姿があった。
「よっ、今日も生徒会の手伝いか?」
「何で知って……あぁ、白雪さんか」
「そういうことだ」
「成瀬をよろしく、って言われたよ」
「なんか照れるな」
昨日の成瀬のことを思って出たであろうあの優し気な声を思い出して言う。
「良い人だな」
「俺にはもったいないくらいだよ」
成瀬だって良い奴だ。
「そんなことないと思うけどな」
「……ありがとう」
何とも言えない気恥ずかしさを感じた俺は少し茶化すように言う。
「それにしても許嫁だなんてな」
「親同士が決めたんだよ」
成瀬の言い方に違和感を覚える。
「もしかして嫌なのか?」
「まさか! 俺に不満なんてない。ただ……凛の方はわからないから……」
喋ったのはわずかな時間だったが、昨日の白雪さんの様子から成瀬が不安に思う必要なんてないように思えるが……
何かを言おうとして口を開こうとした瞬間、成瀬を呼びに来た男子生徒によって遮られる。
「成瀬! 部活行こうぜ!」
「あぁ!」
男子生徒の方を向いて応える成瀬。
「部活行ってくる。一ノ瀬も頑張れよ」
「あ、あぁ……」
そういって教室から出て行く。言うタイミングを逃してしまった俺は、成瀬が教室を呆然と見つめる。
「雪君! 生徒会室に一緒に行きましょう!」
成瀬と入れ替わるように結依がやってくる。
「……雪君?」
「いや……行こうか」
「はい……」
荷物を持って立ち上がり、結依と共に生徒会室に向かって歩き出した。
教室を出てから少し歩いてから結依に気になっていたことを聞いてみることにした。
「成瀬と白雪さんの仲ってどうな感じか知ってるか?」
「? どういう意味ですか?」
「いやぁ……」
成瀬がどう思っているかなどは気軽に話してはいけないように思える。なんて言ったらいいか分からず苦し紛れに言う。
「ほら、許嫁って親同士が決めるものっていうイメージがあるからさ」
「そうですね……私は白雪先輩の方しかわかりませんが……仲は良いと思いますけど……」
「そっか、変なことを聞いて悪い」
「いえ……」
結依は何か言いたげだったがそれ以上は何も言ってこなかった。
そうこうしているうちに生徒会室に到着した。扉を開けると俺たちは教室の中へと入る。
生徒会室に入ると姫華生徒会長と白雪さん以外に二人の男子生徒の姿がある。
「姫野先輩! お疲れ様です!」
「一条君、お疲れ様です」
一人の男子生徒が近寄ってきた。
「えっと……」
結依のことしか見ていなかったのか、こちらを見て困惑している。
そんな状況を見かねた結依が気を利かせて俺のことを紹介してくれる。
「彼は、一ノ瀬雪哉君。体育祭に向けて忙しくなるのでお手伝いをしてくれることになったんです。こちらは一年生で、会計の一条陽希君です」
「よろしく」
「一条です。よろしくお願いします」
軽く挨拶を交わす。
もう一人奥にいる男子生徒の紹介を結依がしてくれる。
「もう一人の会計で、二年生の伊達真也君です」
「よろしく」
「よろしく」
二人ともに挨拶を終えたタイミングで光が生徒会室に入ってくる。
「遅れてすみません!」
そんな光に対して姫華生徒会長が言う。
「大丈夫ですよ。みんな揃ったことですし始めましょうか」
俺たちは話し合いをするために席へと着いた。
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