第32話 お手伝いをしていただけませんか?
姫華生徒会長の提案でお茶をすることになった俺たち。生徒会室にあるテーブル
を囲むように座っている。
俺の隣には結依が座り、対面には光が座っている。
副会長の白雪さんは結依の対面に座っており、姫華生徒会長はいわゆる誕生日席だ。
結依が入れてくれたお茶が目の前にある。姫華生徒会長がそれを一口飲んでから口を開く。
「自己紹介から始めましょうか。まずは私から、この学校の生徒会長をしています桜聖 姫華です。よろしくお願いいたします」
「よ、よろしくお願いします」
慌てて姫華生徒会長に挨拶を返す。
改めて見るととんでもなく美人だし、雰囲気が何というか上品だ。きれいな黒髪。桜の髪留めを付けており、それが黒髪と相まって非常に映えている。
自己紹介を聞いて気になったことを口にする。
「あの……桜聖っていうのは……」
俺の言葉を聞いてほほ笑む生徒会長。
「この学校の理事長をしているのは私の祖父です」
珍しい苗字だったしまさかと思ったが、やっぱりそうだったのか。
「ですので、私のことは苗字ではなく名前で呼んでもらえると嬉しいです」
「わかりました」
「次は私ね。白雪 凛。生徒会副会長をやっているわ。よろしく」
「よろしくお願いします」
白雪さんは何というか近寄りがたい美人といった雰囲気の人だ。雪のように白い肌。ショートヘアで少しかっこいい系な感じの人だ。
「白雪先輩には女の子のファンがたくさんいるんですよ」
隣に座っている結依がそんなことを言ってくる。
「そうなのか?」
「はい! 白雪先輩はとてもかっこいいですから! それにかっこいいだけじゃないですし」
「え?」
俺の声は少し顔が赤くなっている白雪なんの声で遮られる。
「ちょっと! 余計な事言わないでもらえる」
「ごめんなさい」
そういっていたずらっぽく笑う結依。二人のやり取りを見るにどうやら仲はかなりいいようだ。
結依に向けられていた視線がこちらに向けられる。
「あなたのことは涼真から聞いている。面白いやつが来たって楽しそうに話していたわ」
「成瀬からですか?」
予想していなかった人物の名前が出てきて思わず聞き返す。そんな俺の疑問に答えたのは白雪さんではなく結依だ。
「白雪先輩は成瀬君の彼女さんなんです」
「え!?」
驚いて白雪さんの方を見る。するとわずかに頬を赤くした白雪さんの姿があった。
結依がかっこいいだけではないと言っていたのが分かった気がする。
「正確には許嫁ですけどね」
しれっと情報を追加する結依。現代の日本ではなかなか聞かない単語だ。
こんな美人の許嫁がいるなんて……成瀬……やるな……
心の中で成瀬に対して感心の念を抱いていると、白雪さんが誤魔化すように咳払いをしてから話を始める。
「まぁ、そういうこと。だからあなたとは一度会ってみたかったのよ」
「成瀬は転校してきて初めて出来た友達です。これからも仲良くできたら、って思っています」
「そう、涼真のことよろしくね」
どこか優しそうな声色。成瀬は幸せ者だったことが伝わってくる。
「次は私の番ですね」
なぜかやる気満々の結依。わざわざ自己紹介なんてしなくても知っているんだが……
「姫野結依です。生徒会副会長をやらせていただいています」
「じゃ、じゃあ僕もあらためて……天海 光です。生徒会書記をやってます。よろしくね」
そういって笑顔を向ける光。男だと判明した今でもその可愛さに見とれてしまいそうな程だ。
「ちょっと、雪君! 光君に見とれていましたね」
「い、いや、そんなことないって!」
「あはは……」
結依に弁明する俺に、困ったように笑う光。
「皆さんとっても仲良しみたいですね」
そんな俺たちを見て嬉しそうにする姫華生徒会長。そして何か思いついたらしい。
「そうだ、こういうのはどうでしょう? 一ノ瀬君には生徒会のお手伝いをお願いするというのは……もちろん一ノ瀬君がよかったらですけど……」
「お手伝いですか?」
「はい。実は人手が足りていないんです。生徒会役員はここにいる人たちを除いてあと二人会計担当がいます。本来ならここにもう一人書記担当がいるのですが、家庭の事情で海外に引っ越してしまいました」
それなら今の生徒会メンバーは書記の枠が空いてしまっているのか……
「これまでは何とかやってこれたのですが、体育祭もあるので人手が欲しいのです。もちろんお礼もします。体育祭が終わるまででいいので手伝ってもらえませんか?」
少し考えるがすぐに答えは決まった。これから体育祭で忙しくなるということは生徒会メンバーである結依も忙しくなるだろう。手伝いをすれば帰るタイミングを合わせやすくなる。それにせっかく知り合えた姫華生徒会長や白雪さんとも親睦を深めることが出来るかもしれない。そして何より光とも仲良くなれるかもしれない。
「わかりました。お手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「はい」
光が嬉しそうな声を上げる。
「やった! よろしくね」
「あぁ、よろしく」
そんなに喜んでくれると手伝いを引き受けた甲斐があった。
「雪君と一緒にお仕事ができるのはうれしいですけど、なんか複雑です」
結依が何か言っていたようだが小さくてうまく聞き取れなかった。
「さっそくで悪いですけど、結依さんと光君のお手伝いをお願いします」
「わかりました」
「仕事の内容は結依さんに聞いてください。結依さん、お願いできますか?」
「はい! 雪君に光君。行きましょうか」
「わかった」
そういって立ち上がる結依と光。俺もあわてて立ち上がり二人について生徒会室を出た。
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