第30話 衝撃の事実
今年初の投稿です!
「それじゃあ、君が話題の転校生なんだね」
「話題ってほどじゃないと思うけど……」
「そんなことないよ。この前の試験で学年一位、しかもほぼ満点に近い点数だったんだから話題になってるよ。少なくとも、僕は気になってたし!」
若干興奮した様子で光が話しかけてくる。
さっき椅子から落ちそうになっていたところを助けたことで知り合い、一気に仲良くなったのだ。
「そうなのか?」
「うん! あんなすごい点数取ったことないから憧れちゃうよ」
そう言ってにこりと微笑む。その無邪気な笑顔に思わずドキッとしてしまう。
気恥ずかしさを誤魔化すように話題を変える。
「あんな人気のないところまで貼るんだな」
俺は運んでいる段ボールに視線を落としながら言う。中には今度の体育祭の連絡事項が書かれた紙やポスターが入っている。
中には結構な量が入っているのでかなり重い。
光のような華奢な体躯では運ぶのは大変だろうと思い、代わりに生徒会室まで運ぶことにしたのだ。こう言った重いものを持つなら男手が必要だろう。光だけでは大変だと思う。
「まぁね。いくら人気が少ないからと言って無視はできないよ。生徒会としての仕事はしっかりやらないと」
そう得意げに胸を張る。
光は生徒会のメンバーで、学校中にある掲示板の全てにこの紙を貼る仕事を任されていたらしい。
一番人気がなく、隅っこだったあの場所が最後だったようだ。
「流石に一日で終わらなくて三日もかかっちゃったけど、なんとか貼り終えることが出来て良かったよ」
この学校はやたらと広いため、良い部分もあるが色々と大変なこともある。
学校中に貼り紙やポスターを貼り終えるだけでも一苦労だ。
光のように華奢だと余計に大変だろう。
ちなみに掃除はそこまで大変ではない。
以前の学校では生徒が各教室を掃除していたが、この桜聖学園は清掃員を雇っているため掃除をする必要がない。この大きな学校を生徒だけで掃除し終えるのは難しいだろう。
それに、お金持ちの学校なのだから清掃員を雇うことなんて大した問題ではない。
俺も昔は清掃員のバイトしていたことを思い出した。なかなか大変な仕事だった。汚いし、臭い場所なんて最悪だ。
清掃はかなりの重労働だということを実感した。ただ、それと同時に全てを綺麗にし終えた後の達成感も大きかった。清々しい気持ちになるし、感謝されると嬉しかった。
それに、そこで学んだ清掃技術も役に立っている。
そう考えるとなかなか良いバイトだった。
そんなことを考えていると光が口を開く。
「そういえば、雪哉君はどうしてあんな誰もいない廊下にいたの?」
「あぁ、それは入る部活を決めるために色々と見学に行っていたんだ」
「へぇ、そうなんだ。何か良い部活は見つかったの?」
「いや、まだなんだ」
「それならさ、生徒会も見学してみたらどうかな?」
「生徒会?」
「そう。まだ見学してないよね?」
「たしかにしてないけど……」
その考えはなかったな。生徒会……良いかもしれない。これまで生徒会役員になったことはないけど、少しだけ興味はある。
入るかどうかは別として、良い機会だし見学くらいはしてみても良いだろう。
それに生徒会室にいくのだからちょうどいい。
「邪魔じゃなかったら、見学させてもらうよ」
「うん! 僕からもお願いしてみるよ。多分だけど、生徒会長さんなら断らないと思うし」
たしか、生徒会長って桜聖の聖女って呼ばれている人の一人だった気が……
そうこうしているうちに生徒会室に到着した。俺の両手は塞がっているので光がドアを開けてくれる。
「さぁ、どうぞ」
「ありがとう」
生徒会室に入ると作業をしていた結依と目が合う
「あれ? 雪君……?」
目を見開き驚いた表情をしている。
俺の後に続いて光も入ってきた。
「それ、ここに置いて貰えるかな?」
「わかった」
指示通り持ってきた段ボールを置く。置く時に手が滑りドンっと音を立ててしまった。中身は無事だから問題ないだろう。
一旦作業をやめて結依がこちらに近づいてくる。
「どうして雪君が生徒会室に?」
「たまたま光に会って、重そうだったからここまで代わりに運んで来たんだ」
「うん、雪哉君は僕を助けてくれたんだ」
「そうだったんですね」
「助かったよ。ありがとう!」
「これくらいならいつでも手伝うさ」
結依がニコニコしながらこちらを見てくる。
「随分と仲良くなったみたいですね。もうお互い名前で呼んでいるみたいですし」
「お、おう」
「さっき知り合ったばかりなのにもうこんなに仲良くなって羨ましいです」
なんだか結依の笑顔がいつもと違う気がする。怖いというのとはちょっと違う。何か含みがある感じ?
「えへへ、そうかな」
俺が結依の笑顔に疑問を持っている横で、光は結依の言葉に頬を赤くしている。
そのいじらしい姿にこちらもなんだか恥ずかしくなってきてしまう。こちらまで顔が熱くなる。
「やっぱり男の子同士だとすぐに仲良くなるんですかね?」
……は?
「……は?」
信じられない言葉に思わず声をだす。さっきまでの気恥ずかしさは一瞬にして無くなった。
まじまじと結依の顔を見るがふざけている様子は一切ない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! お、男?」
「やっぱり気付いてなかったんですね……」
いやいやいや! 男!? 光が?
光の顔を改めてみるがどう見たって男には見えない。完全な美少女だ。
「はぁ……光君の制服をよく見てください。男子の制服を着ているじゃないですか」
そう言われればそうだ。たしかに男子の制服を着ている。服に全く意識が向いていなかった。
もしかしたら、目の前で椅子から生徒が落ちるのを見て思いの外動揺していたのかもしれない。
自分でも気づかなかったことが信じられない。
「えっ? 本当に男なのか?」
「うん……そうだよ。それに一人称はちゃんと『僕』なんだけど……」
一人称が僕だからと言って男だとは限らない。おまけに目の前で、見た目が美少女の子が自分のことを『僕』と言ったらそういう個性なのだと思うのが普通だと思う。
男だと言われてもいまだに信じられない。どう見たって美少女だ。神様は光に与える性別を間違えたのかと言いたくなるレベルだ。
あまりの衝撃的なカミングアウトに驚き、確かめるためにまじまじと光を見つめる。
「僕が男だってこと信じていないでしょ?」
「えっ……と」
若干責めるような口調。図星だったので上手く言葉が出てこない。
「これなら信じられるでしょ。ほら!」
「っ!?」
そう言って俺の手を掴むとそのまま自分の胸へと押し当てた。
遅くなってしまい申し訳ありません。
不定期更新が続くと思いますが、応援よろしくお願いします!




