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第28話 テクニシャンです!

2章スタートです!

 中村との対決が終わり俺たち二人は家に帰ってきた。


 今日は色々あったせいでかなり疲れた。

 特にの中村との対決で解いた最後の問題は、非常に難しかったので脳が疲れてしまった。いや、脳だけじゃない。全身疲労感に襲われている。

 今日は早めに寝よう。

 そんな事を考えていると結依に話しかけられる。


「今日はお疲れ様でした。かなり疲れていますよね?」


「まぁ、割と……」


「でしたら、その疲れを癒すために私がマッサージをします」


 あれ? この展開前もあったような……


 正直有難い。同じ体勢で座っていたせいか腰がかなり痛い。

 さっきから自分で押したり、伸ばしたりしていた。


「とても嬉しいけど、結依もテストあけだから疲れているんじゃないか?」


「たしかにちょっぴり疲れていますけど、大丈夫です。それよりも、雪君の疲れを取ってあげたいんです」


 そう言って微笑みかけてくる。

 天使かな?


 そんな事を言われるとなんだかこそばゆい。疲れているのにも関わらず、俺の事を思って行動してくれる。だからこそ結依にお返しがしたい。


「それなら、俺も結依にマッサージをさせてくれ」


「……いいんですか?」


「あぁ、むしろやらせてくれ」


「じゃあ……お願いします。でも、私が先にやりますね」


「別に俺が先にやってもいいぞ?」


「だ、ダメです!」


 なんだかよくわからないが勢いよく否定されてしまった……


「あっ……いや、その……」


 もじもじとしながら指先をいじっている。


「雪君のマッサージは気持ち良すぎて、終わった後足腰立たなくなってしまうんです……」


「そうなのか?」


「はい……実は前回の時は、必死に誤魔化していたんですよ」


 全然知らなかった。


「雪君は、自分のテクニックがすごい事をを自覚した方がいいです。テクニシャンです!」


 テクニシャンって……


「なので私が先にやりますね」


「了解」


 俺たちは制服から着替えてからリビングに集まる。


「あっ、運ぶものがあるので手伝って貰えませんか?」


「いいぞ」


「こっちです」


 一度も入った事がない部屋に案内される。

 結依が扉を開く。中を覗くと色々なものが置いてある。物置のようだ。


「これです! 重くて私一人では運べないので……」


 結構大きいく思ったより重たい。


「こんな日のためにマッサージマットレスを買っておいたんです!」


 自慢げに胸を張っている。

 たしかにマッサージをするときに使えると思うけど、それだけのために買ったのか……

 これがブルジョワか……


 貧乏生活で必要なのは節約だ。本当に必要か考えて考えて考えて考えて――買わない。

 だいたいこのパターンだ。

 まぁ、俺が節約しても父さんと母さんが余計なもの買うんだけど……

 お願いだから『金運が上がってお金持ちになれる壺』を買うのだけは勘弁して欲しかった。どうせ二日後には木っ端微塵に割れるんだし……


 昔のことを思い出して心の涙を流していると、結依の声で現実に戻される。


「早速運んじゃいましょう!」


「わかった」


 二人で協力してリビングまで運び、適当な場所に広げてみる。

 なかなかいい感じだ。


「どうぞ、横になってください」


 マッサージマットレスの上にうつ伏せになる。

 結構寝心地がよく、新品特有の匂いがする。


「行きますね」


 結依の手が添えられ、ゆっくりと力が込められる。

 腰の部分から始まり、肩まで入念にマッサージされる。

 押されるたびに気持ちよくて変な声が出そうになってしまう。


「んっ……どうですか?」


「すごく気持ち良い」


「それは良かったです! ……っしょ」


 結依の体温を感じながらマッサージを受け続け、体がだいぶ軽くなったところで起き上がる。

 さっきまで痛かった腰が嘘のように楽になった。


「ありがとう、すごく気持ちよかった」


「どういたしまして」


「次は俺の番だな」


「よろしくお願いします」


 俺と入れ替わるように結依が横たわる。


 まずは腰からだな。


 手のひらで腰を押す。自然と腰を掴むような形になる。

 細っ! びっくりするくらい細くて逆に不安になる。


 壊してしまわないようにゆっくりと力を入れていく。


「んっ! 気持ち、いいです……」


 悶えるような声を上げる。

 前回マッサージをした時は緊張してしまってうまく出来なかったが、今回はイメージトレーニングもしたし、心の準備も完璧だ。

 前回のように慌てたりしない!


 結依の反応を見ながら力を調節する。

 テスト勉強で座りっぱなしだったからだ腰がかなり凝っているようだ。

 手のひらで押したり、指先でぐりぐりとほぐすように押す。


「っん……あぅ……」


 力を込めるたびに熱っぽい吐息が漏れる。


 やっぱり心の準備は大切だな。落ち着いてマッサージができる。


 腰や背中、肩、臀部を隈無くマッサージしていく。

 時々結依の体が跳ねる。


 決して結依の体を触りたいから時間をかけてやっているわけでは無い。純粋に気持ちよくなってもらいたいのと感謝の気持ちだけだ。



「はぁ……はぁ……っん……はぁ……」


 しばらくの間マッサージを続けていると結依の息遣いが荒くなっていた。

 首筋にほんのり汗をかいている。

 そろそろ終わりにした方がいいかもしれない。


 最後に腰から首に向けて背骨に沿って一気に力を込める


 ――ブチっ


「え?」


「あ」


 何かが千切れるような嫌な音がなる。

 反射的に謝る。


「わ、悪いっ、今……」


「だ……大丈夫ですよ」


 息切れをしているので少し喋りにくそうだ。

 起き上がろうとしているが、うまく力が入らないのかぷるぷるしている。

 足腰に力が入らなくなるというのは本当みたいだ。


 手を貸して結依を座らせる。すると、袖から腕を服の中に入れるともぞもぞと動く。そして淡いピンク色をした布を取り出す。

 俺は慌てて視線を逸らす。


「ブラのホックが壊れてしまったみたいです」


「ご、ごめん……」


「気にしないでください。下着は消耗品ですから」


 そう言って微笑みかける。手に持つブラジャーのホックの部分が変に曲がっている。


「それに、このブラはサイズが小さくなっていたのでいずれ買い換える予定のものだったんです」


「そうなのか?」


「はい、私の胸はまだ成長しているんですよ」


 いや、聞き返したのは胸が大きくなっているかじゃないんだけど……


 というか、今でも十分過ぎるほど存在感があるのにも関わらずまだ発展途上なのか……


「だから気にしなくて大丈夫です」


「いや、でも……女性の下着ってかなり高価なものなんじゃないのか?」


「まぁ……物によりますけど……」


「えっと……ちなみにそれはどのくらいなんだ?」


「たしか、――万円くらいです」


「!?!?」


 マジかよ!? 俺のパンツなんでコンビニで買ったやつだから六百円だぞ! しかも三年くらい前に買ってずっと履き続けているやつだし……

 文字通り桁が違う。桁だけならゼロが二つも付くのだ。


 あまりの違いに唖然としていると、結依が慌てたように話す。


「ちゃんとお手頃な値段のものもありますよ! これはたまたま高いやつなんです! だって……」


「だって?」


「もし雪君に見られるならちゃんと可愛い方がいいですから……」


「えっ……あ、はい」


 結依の恥ずかしそうに俯く姿が可愛すぎて、言葉がうまく出てこなかった。

 沈黙が流れる。


 気まずくなり、誤魔化すように無理やり話を戻す。


「でも、壊したのは事実だし……」


「わかりました。なら、こうしましょう。今度のお休み、荷物持ちとして買い物に付き合ってください」


「結依がそれでいいなら」


「決まりです。これでこの話は終わりにしましょう。雪君ももう気にしないでくださいね」


「わかった」


「今度のお休み楽しみにしていますね」


 そう言って立ち上がる。


「それじゃ、お風呂に入ってから夕食にしましょう。先にお風呂をいただいてもいいですか?」


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 そして風呂場の方に向かっていった。


 わざとでは無いとはいえ、あんな高額なものを壊してしまったのだからしっかりと埋め合わせはしないといけない。

 今度の休み、荷物持ちとしての役割を全うしなくては。

2回目のマッサージ回でした。


2章も応援よろしくお願いします!

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