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第25話 不正疑惑

「こんな点数おかしいだろっ! 不正だ! 不正したに決まっている!!」


 中村の声が教室中に響き渡る。顔を赤くしこちらを睨みつけている。


 クラスの皆んなもいきなり中村が騒ぎ出したことに驚き戸惑っている。

 そんなクラスの雰囲気なんてお構いなしでさらに声を上げる。


「転校したばかりのくせにこんな点数が取れるわけがないっ! カンニングしたんだろ!」


 いきなりのことで一瞬思考が固まったが、急いで中村の言葉を否定する。


「そんなことしていない」


「不正をしていないでこんな点数が取れるわけないだろ!」


 クラスメイトからも戸惑いの声が上がり始める。


「……不正?」

「本当に?」

「一ノ瀬君ってそんなことをするタイプじゃないと思うんだけど……」

「でも、どれも高得点ばかりだぞ?」

「たしかにな」

「それって実力じゃないの?」

「数学と物理で満点とか取れるものなのか?」

「わかんないよ。でも……不正をしたらバレると思うんだけど……」


「うちの学校は名門校と呼ばれる程なんだ! 他の学校よりもレベルの高いんだぞ! それなのに外からやってきた奴がこんな高得点取れるわけがないだろっ!」



「え?……じゃあ、本当に?」

「そんなことわかんないよ」

「でも私、この前他校の友達と勉強のことを話したんだけど、すごく簡単なことをやっててびっくりしたよ」

「やっぱり不正したって事?」

「でも、中村の言っていることだぞ?」

「たしかにそうだけど……」

「中村の言い分もわからなくもないよな」

「まぁな……俺たちだって他の学校に負けているつもりはないからな。プライドだってあるし」


 クラスの雰囲気が悪くなる。中村の一言で疑念が生まれ、一気に広がる。

 その疑念を解消するためか口々に思ったことを口に出している。


 俺の成績を疑う者。中村の発言を疑う者。俺を擁護する意見もあれば、中村に同意を示す者もいる。


 無闇に無実を主張してもきっとダメだろう。中村は間違いなく聞く耳を持たないし、一度生まれた疑念は簡単には消えないだろう。


 中村の姿はまるでタチの悪いクレーマーのように見える。あの人たちに何を言っても無駄なのだ。自分の意見が正しいと思って譲らない。今の中村からは同じような雰囲気を感じる。

 どうやって自分の無実を証明できるか考えていると、結依が勢いよく立ち上がる。


「雪君は不正なんて絶対にしません! 変な言いがかりはやめてくださいっ!」


 突然の結依の行動にクラスのみんなも目を見開き驚いている。


「お、おい。結依」


 とっさに結依を宥めようと声を掛ける。


「もう我慢できません! 大切な幼馴染みが悪く言われて黙っていられるほど大人じゃないんです!」


 その目には怒りが映っている。大きな声を上げたからか、興奮して肩で息をしている。


「幼馴染み?」


「そうです! 私にとって雪君は大切な人なんです! 貴方に雪君の何がわかるっていうんですかっ! 何も知らないくせに勝手なこと言わないでください!」


 俺のために周りの目を気にすることなく庇ってくれる結依の姿を見て心が熱くなる。

 昔は俺の後ろに隠れていて守る存在だと思っていたのに……


「ふん! それなら余計に怪しいだろ」


「どういうことですか?」


「そこの転校生のことは知らないが、お前の家はかなりの金持ちだろ? その金を使って事前に問題を買ったんじゃないか? もしくは点数を上乗せしてもらったりとかな」


「そんなことしません!」


「どうだか」


「お金のことを言うなら、貴方にだって出来ますよね?」


「はっ、そんなことするわけないだろ」


「なんでそう言い切れるんですか?」


「僕は頭が良いんだからそんなことしなくったて平気だからだよ」


 うわぁ……すごい理屈だ。

 結依も呆れて言葉を失っている。

 一瞬生まれた隙に先生が間に入る


「中村君、いい加減にしなさい。貴方の言っていることはめちゃくちゃです。それに学校が不正に加担したと言う発言は見逃せません」


 ちらりと先生に視線を向けたがすぐに視線を戻す。そしてずっと黙っていた俺に挑発するような目を向けながら言う。


「だったら転校生、不正なんてしてないって証明してくれよ」


「証明?」


「そう、証明。そうしたら僕も納得ができる」


「証明って言ったてどうすれば……」


 やっていないことを証明するなんてかなり難しい。というか不可能に近い。悪魔の証明だと言えるかもしれない。


「簡単だよ。不正なしで僕ともう一度勝負をしてくれよ」


「は?」


「もし僕が負けたら不正はなかったってことを認めるよ。まぁ、不正なしで僕に勝てるわけないんだけどね」


「勝手なことばかり言わないでください!」


 たまらず結依が声を上げる。


「僕はただ提案してあげただけだよ」


「そんなことっ――」


「結依」


「雪君?」


 結依を手で静止させる。


「勝負は何をするんだ?」


「雪君!?」


 流石に、これ以上言われっぱなしだというのも納得できない。それに結依に嫌な思いをさせたくない。

 中村はニヤリと嫌な笑みを浮かべる。


「先生に問題を作ってもらってその出来で勝負をするんだよ」


「私はそんな事に協力するつもりはありません」


 凛とした声が上がる。先生の言う通りだ。でも……


「俺からもお願いします」


「……」


 頭を下げる。中村の土俵で戦ってやる。それに、中村の学力よりも俺の方が上だと言うことはすでにわかっている。負けるわけがない。

 それだけではない。結依が庇ってくれたその思いを無駄にはしたくない。

「……はぁ……わかりました。今回だけは協力しましょう」


「ありがとうございます」


「問題は私が作りますので数学になります。文句はないですね」


「はい」


「僕も問題ないです。得意科目で僕が負けるわけない」


「問題は全部で三題出します。二人とも解けないような問題は出しません。放課後のHRの時間を貴方達にあげます。そこで終わらせてください」


「ありがとうございます」


「それと中村君。貴方が負けた時、自分の非を認めてしっかりと謝罪してもらいます。これだけ騒ぎ立てたのですからそれくらいはしてもらいます」


「わかっていますよ。負けた謝罪くらいいくらでもします」


 中村は自分が負けるなんて全く考えていないようだ。その表情には絶対の自信が現れている。

 俺だって自信はある。それに俺のために怒ってくれた結依のためにも絶対に勝つ。

一章完結までもうしばらくお付き合いください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ますます面白くなってきましたね。 カタキ役も登場も登場し 更新が待ち遠しいです。
[一言] なんで不正してないって証明しないといけないんでしょう? 仮に証明しなければならいとすれば不正してると証明するべきそっち側ですよね? これで頭良いと言い出すとか正気ですか?
[良い点] 主人公の善人振りが気分いい [一言] 中村、頭悪い
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