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第12話 送別会

 気づけばこの学校で過ごす最後の日になっていた。いつもならそれなりに長く感じる一週間があっという間だった。

期限が決まっている一週間はこんなにも短いものだったのか……


 偶然だが、この学校での最後の授業は担任でもある鈴木先生の物理の授業だ。

 いつも通り始まり、そして終わった。

 違う県や国に行くわけでもないのにかなり寂しさを感じる。


 そして放課後、クラスのみんなが俺の送別会を開いてくれた。

 未夜が中心となって準備をしてくれたらしい。


「雪哉君、これはみんなからの感謝の気持ちです。受け取ってもえるかな?」


「嬉しい、ありがとう」


 未夜から贈り物を受け取る。一つ目は寄せ書きだ。


「みんなからのメッセージが書かれているから後で読んでね」


 軽く見ると、『勉強を教えてくれてありがとう』や『格好いい髪型にしてくれてありがとう』『転校先でも頑張れよ』と言った感謝の言葉から激励の言葉までさまざまなメッセージが書かれている。

 クラスのみんなだけではなく、先生達もメッセージを書いてくれているようだ。

 やばい……泣きそう。


「残りも見てよ」


 綺麗に包装された箱が二つ出てくる。


「開けてもいいか?」


「うん!」


 細長い方の箱を開ける。中から出てきたのはボールペンだ


「何をあげたら喜んでもらえるか、みんなで色々考えたんだよ。雪君あまり文房具とか持っていないし、それに邪魔にならないかなって」


「大切にするよ」


 もう一つの箱を開ける。


「財布ならいつも持っていられるし、使うたびにみんなの事思い出してくれると嬉しいな」


 皆んなからのプレゼントで目頭が熱くなる。


「皆んな、ありがとう。大切にするよ」


「私たちこそ雪哉君にはお世話になったから、その感謝の気持ちだよ」


「そうだぞ! 勉強教えてくれてありがとうな!」


「髪を切ってくれて助かったぞ!」


「転校先に行っても頑張ってね!」


 皆んなが口々に優しい言葉を投げかけてくれる。

 たった一年しか一緒にいることが出来なかったが、本当にいい奴らばかりで楽しい一年を過ごすことができた。


「みんな、本当ありがとう」


 そのあとは、皆んなと会下校時刻ギリギリまで話をしていた。

 くだらない話から、思い出話など様々だ。

 俺はクラスメイト達に恵まれていたのだと改めて実感することができた。


 お別れを言い帰ろうとしたところで、後ろから声をかけられる。


「雪哉君!」


 未夜がこちらに近寄ってくる。


「どうした?」


「最後にちゃんとお別れを言いたくて……」


「そっか……」


「雪哉君がいなくなるのはすごく寂しいよ」


「俺もだ」


「それと、たくさん助けてもらったからお礼も言いたくて」


「俺だって助けてもらったからお互い様だ」


「それでも……ありがとう」


「こちらこそ」


 話は終わったようだが、何故だか動こうとしない。もじもじしている。


「あのね、これ!」


 綺麗に包装されたものを渡される。


「開けてみてもいいか?」


「うん……」


 そっと開けると中から一枚のハンカチが出てくる。


「感謝の気持ちだから、またね!」


 そう言ってそのまま走り去ってしまう。

 お礼を言いそびれてしまった……


 でも、これで一生のお別れというわけでもない。会おうと思えば会える距離にいる。おまけにみんなの連絡先もゲットしている。

 そう思うと少しだけ寂しさが薄れた。


「未夜には、今度会った時にちゃんとお礼を言わないとダメだな……」


 校舎に心の中で別れの挨拶をすると、帰り道を歩き出した。



 ◆◆◆◆


 家に帰って来ると、今日の出来事を結依に話す。

 あまりにも嬉しかったので、思わず喜びを共有したくなってしまったのだ。

 俺の話を楽しそうに聞いてくれている。


「皆さんとても素敵な人たちなんですね」


「あぁ、俺は恵まれているよ」


 そして貰ったプレゼントを見てもらいたくてテーブルの上に広げる。


「素敵な物ばかりですね。この財布も雪君の趣味にぴったりですよね?」


「そうなんだよ」


 びっくりするくらい俺の好みに合っている。


「このハンカチが、未夜さんからの贈り物ですか?」


「あぁ、そうだ」


 そういえば貰った寄せ書きをまだ読んでいなかった。手に取り一つ一つ読んでいく。


「未夜さんですか……私のライバルになりそうです」


「ん? なんか言ったか?」


「いえ、なんでもないですよ」


 何か言っていたようだが、皆んなからのメッセージを読んでいたせいで聞き取れなかった。


「すぐに夕食の準備をしますから、皆さんのメッセージを読みながら待っていてくださいね」


「わかった」


 お言葉に甘えてゆっくりと読ませてもらう。

 読んでいて心が温かくなったが、ふと転校先のことが頭をよぎる。


 勝手な偏見だが、お金持ちの学校ってギクシャクしているイメージがある。いじめとかありそうだ。

 いじめは、お金持ちの学校に限った話ではないと思うが、なんとなくそんなイメージがあるのだ。クラスメイトも似たようなことを言っていた。

 おまけに俺は金持ちでもなんでもない。もしかしたら目をつけられることもあるかもしれない。


 頭を振って悪いイメージを消し去る。きっと転校することで少しだけネガティブな気持ちになっているのだろう。

 まずは、明日の編入試験に合格することを考えなくてはいけない。

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― 新着の感想 ―
[一言] いい人たちですね
[良い点] 更新ペース早くて嬉しい。転校してからが本番だし楽しみ [気になる点] 一人一人の身体的特徴がもう少し欲しいかも
[良い点] なんで、クラスメイト名前知ってるんですかね汗 資本主義だなぁぁぁw
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