第10話 結依の暴走
結依が馬乗りになると視線をこちらに向けている。その表情はとろけたようだ。
「雪君……私、もう我慢できません……」
熱っぽい吐息が漏れる。おもむろに俺の寝巻きのボタンに手を伸ばすと、一つずつはずし始める。
「お、おい!?」
「どうしたんですか?」
キョトンと首を傾げながらもボタンを外していく。ボタン式の寝巻きにしたのって脱がしやすいからじゃないよな!?
「な、何考えているんだ!?」
ボタンは全て外されてしまった。
状況が飲み込めず混乱している一方で結依は何か納得したような表情になる。
「そうですよね……雪君だけ脱ぐのは不公平ですもんね。すぐに脱ぎますね」
そう言って自分の服に手をかけると一気に脱ぐ。
「なっ!?」
結依の裸体が露わになる。勢いよく脱いだせいで、その大きく実った胸がぷるんと揺れる。
綺麗な形をした大きな胸。
思考が止まり、目の前の光景に視線が釘付けになる。圧倒的な存在感を放っている。
「どうですか?」
言葉がでず、口をパクパクしてしまう。
妖艶に笑い瞳が光る。今度はズボンに手を伸ばし始める。
体は動かないので慌てて声を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……」
「もう我慢の限界です。昨日だってギリギリで理性を保ったんですよ? 雪君が愛おしすぎたのが悪いんです」
「いや……あれは……」
「昨日は一人で済ませました」
「はい!?」
済ませたってなんですかね!?
いやいや、動揺している場合じゃない。
「頼む! 俺の話を聞いてくれ」
「……わかりました」
手を止めこちらをじっと見つめる。
出来るだけ結依の裸体に視線が行かないように、目を合わせる。
「お互い恋人同士じゃない状態でこう言った事はよくないと思うんだ」
「それなら簡単です。恋人になりましょう!」
「ま、待ってくれっ。俺は結依に世話になってばかりだ。借金だって代わりに払って貰ったばかりで、とても大きな借りがある」
「私も雪君には助けてもらったので、そんな事気にしなくてもいいんです」
いつ助けたんだ?
浮かんだ疑問をすぐさま消し去る。今は結依の説得に全力を尽くす。
「俺が納得できないんだ。今は対等な関係とは言えない。俺はちゃんと対等で結依の隣に立てるような人間になりたいんだ」
「雪君……」
ほんのり顔が赤くなり、うっとりとした表情になる。
「だから、その時が来たら俺から言わせてくれっ!」
ほとんど告白のようなことを口走っているが、そのことを気にしている余裕は俺にはない。目の前が肌色なのだ!
顔を赤くし、とろんとした瞳でこちらを見つめてくる。
少し呼吸が荒い気がするが、動きは止まった。
よしっ!
「私、とっても嬉しいです!」
「わかってくれたか?」
「はい!」
どうやら伝わったようで一安心だ。体は動かないけど、全身から力が抜けたような気がする。
「それじゃあ、俺の上からどいてくれないか?」
「え? いやです」
「……はい?」
再び結依が動き出す。
「待て待て待て!」
「もう、どうしたんですか?」
「どうしたじゃない!? 俺の気持ちが伝わったんじゃなかったのか!?」
「ちゃんと伝わりましたよ。きゅんきゅんしましたし、お腹の下の方が熱くなりました」
下の方って……
「なら、なんでズボンを脱がそうとするんだ!?」
「それとこれとは話が別ですよ」
別じゃないだろ!?
「私たちはまだ恋人同士ではありませんけど、将来的には恋人となり結婚するんです。遅いか早いかの違いですよ」
そうか……遅いか早いかの違いなだけなのか……いやいや、騙されちゃダメだ。
「お、おいっ!」
「もう! 静かにしてください」
その言葉と同時に、結依の唇で口を塞がれた。
柔らかい感触と甘い匂いが広がる。
「っ!?」
長いキスから解放された俺は完全に勢いを奪われてしまった。
「大丈夫です。私も初めてですけど、お勉強は完璧です」
体が動かないし、思考も動揺で塗りつぶされてしまった。
目の前で妖艶な笑みを浮かべた結依。
下から見る結依の裸体は暴力的な魅力を放っている。
「雪君!」
あ! お、おい!
あっあ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
この日、俺は大人の階段を無理やり登らされてしまった……
結依を止めることは出来ませんでしたね…
面白いと思っていただけましたら、ブクマ、評価、感想よろしくお願いします!
評価はこのページの下側にある【★★★★★】をタップすればできますので是非!!
作者のモチベーションに繋がります!




