8 氷屋
氷屋は、五十前後のオヤジがやっていた。
頭はハゲていて、ずんぐりむっくり。ハリウッド俳優で言ったら、誰だっけな、バッドマンでペンギン男をやってたヤツだ。
「こんちわ」
これ言葉が通じるんだろうか?
「いらっしゃい。氷かね?」
おお、見た目は外人なのに、しゃべりは日本語だ。おれはうなずいて値段を聞いた。
氷菓子が1G、豆入りだと2G。
豆入りの方を頼んだ。朝から何も食べてない。お腹ぺこぺこ。
この時、水晶で払えるか聞いてみたが、ダメだった。両替所で替えてくれとの事。
両替所の場所は聞いてすぐに解った。香川銀行があった場所だ。
水晶一個が、いくらになるのかも聞いてみた。氷屋のオヤジは、けげんそうな顔をしたが1Gだと教えてくれた。
「そのへんに座って、待っててくんな。すぐできるから」
オヤジはそう言ってアゴをしゃくった
小さな店で、四つしかテーブルがない。その内のひとつに座った。
天井を見上げる。木の柱に、上にワラを敷いただけの小屋。ほんと、海の家だ。子供のころは、この海水浴場でよくカキ氷食べたな。
「はい、おまたせ」
海を眺めていたおれは、若い女性の声におどろいた。一五、六あたりだろうか。茶色いクセのあるショートヘアに、青い瞳。
おお、中世っぽい見た目! ゲームなんだから、こうでなきゃ!
しかし三十を超えたオッサンが、あまり見つめると変態だ。目線をそらす。
若い娘は、氷菓子をテーブルに置いた。そのあとカウンターの中に入った。オヤジと何か話をしている。あのオヤジの娘か! 似てねえ!
豆入りの氷菓子は、思ったとおりカキ氷だ。削った氷の上に甘く煮た豆と砂糖水がかかっている。けっこう旨い。
これ、どんな効果があるんだろう。視界の右下「?」ボタンを押してみた。
名前:豆入り氷菓子
価格:2G
効果:体力+5
なるほど、きちんと回復の効果はあるらしい。
ちなみに、今の体力を見てみた。フナッシーとの戦闘、いや、戦闘と呼べるものではないか。作業によって腕はパンパン。疲労もマックスだ。体力は、けっこう減ってるはず。
体力:96
あらら。これだけ疲れても、四つしか減ってない。人間の生命力ってすげえな。
ふと思った。おれの特技は人間に対しても使えるんだろうか。
小さくポーズ。そして、小声で言ってみる。
「アナライザー・スコープ」
名前:ティア
体力:80
魔力:0
攻撃力:20
防御力:10
レベル:1
おお、この子はおれより攻撃力が高いのか。若さって武器だね。次ページがあるのに気づいた。
身長:162
体重:48
バスト:78
ウエスト:60
ヒップ:86
親密度:1
胸、小っさ! いやそれより「親密度」って何だ? 恋愛ゲームとかのあれ? もしくは仲間か?
どちらにしても、ゲーム内の村人や通行人は、ただの脇役じゃあないんだな。