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82 酒場の外

 それほど良くない頭から、何か知恵を絞ろうと必死で考えた。


 すると、おれの数少ないコネの中から、関係がありそうな者を思いついた。


「校長、馬車を借りれませんか?」


 学校なら、馬車の一台ぐらいあるんじゃないか? そう思って聞いてみたら、本当にあった。


 職員のひとりに運転してもらい、西の港街に急ぐ。


 街に着くと、おれは飲み屋街に走った。酒場に入る。


 会いたかった男は、酒場のカウンターで部下と酒を飲み交わしていた。


「憲兵隊長、折り入って話がある」


 隊長を連れて外に出た。


「切羽詰まっているな。何だ」

「初等学校の子供が四人、いなくなった」

「そうか、迷子か」

「ではない。結界を使い、学校から連れ去った可能性がある」

「誘拐なのか!」

「ここ最近の、行方不明者の情報は何かないか?」


隊長はおれを見つめた。


「カカカ、それは憲兵内の情報だ。外の人間には話せん」

「その中のひとりは、おれの知り合いだ。どうにかならんか?」

「悪いが、それはどうにもならん」

「わかった。では、憲兵隊はそういう情報は持っているのか? それとも、これはギルドの仕事なのか?」

「憲兵の仕事だ。その身内がギルドにも依頼をしているだけだ。ギルドよりも我々のほうが情報は多い」


 ということは、行方不明はもっと多いのか。


「わかった」

「わかった、とは何だ?」


 おれは踵を返した。憲兵隊長に肩を掴まれる。


「待て、カカカ、何がわかったというのだ」

「憲兵本部に行く。情報を盗む」

「おい、本人の前でそれを言うか」

「聞かなかった事にすればいい」

「そうはいかん。止めねばなるまい」

「止めれば、斬る」


 隊長の動きが止まった。


「剣を教えている俺を切れるのか? まだ、そこまでの腕はないぞ」

「ああ、負けるだろう。だから、お前は、教え子を斬ったと後悔して生きればいい」

「法外な事を言う」

「ガレンガイル、知り合いの子の生きるか死ぬかの話をしている。止めるなら、そのつもりで来い」


 隊長は珍しく頭をかきむしった。


「最初に会った時もそうだった。脱獄して帰ってきた。お前は時に無茶をする」

「いや、あれは知らないだけだった。今回は違う。ここに来るまでにおれは考えた。その子の生き死には、おれの生き死にと同じだ。そう結論が出た」


 馬車の中で、人生でありえないほど動揺している自分に気づいた。結婚もしていないし、親の気持ちもわからない。だがもし、あの子に何かあれば、おれは一生、悔やむだろう。


 まして今の自分の職業は「勇者」だ。ここで助けられなければ、おれは終わる。強烈にそれはわかった。


 隊長は考え込んでいる。そして意を決したように頭を上げた。


「ついてこい」


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