80 プレゼントの山
子供たちに意外なほど喜んでもらえた。そうなると、こちらもサービス精神がむくむくと出てくる。
「よし、みんな、珍しい物、見たい?」
子供たちがうなずいた。
ハウンドと遊んだ一団を連れて、おれはリュックを置いている樹の下に戻った。
みんなで輪になって座る。
「校長先生には言うなよ、出すなって言われてるからな」
おれはリュックからチックを出すと、みんなの輪の中央に置いた。
「おれの仲間、チックだ」
子供たちが目を丸くして黙った。
しまった。いきなり危険な昆虫を見せるような物か。リュックに戻そうと思った時、子供たちから感嘆の声が上がった。
「うっわー!」
「かっこいい!」
「おじさん、この子も戦うの?」
「ああ、戦う。魔法も使える」
「魔法も!」
この世界で魔法が使えるというのは、ひとつのステータスらしい。みんなの目が興味津々から尊敬の眼差しに変わった。
チックは小さな子供に囲まれ、ハサミを振り上げた。おそらく言葉にするなら「なんだコノヤロー」だ。
おれは手のひらに乗せ、にやっと笑って子供らに言った。
「さわりたい人ー!」
みんなが手を挙げる。まじかよ、この世界の子供って、たくましい!
この日から、チックはクラスのアイドルになった。授業の合間に「見せて! 見せて!」とせがまれる。
チックが野菜を食べる事を知ると、家から野菜を持ってきてくれる農家の子もいた。
ハウンドも人気だ。意外だったのが、シッポを引っ張るような粗雑な子はいない。
頭を撫でたい時は、必ずハウンドの正面にまず座る。相手が許してくれそうだと確認してから撫でる。
思えば、生まれた時から妖獣がいる世界で育った子らだ。生き物への理解や畏怖は、おれが思うよりずっと強いのかもしれない。
ハウンド自身のお気に入りは、カリラだ。ちょくちょくレバーソーセージを持ってきてくれる。聞けばソーセージ屋の娘だった。好物になびきやがって。休み時間には、おれを離れてカリラと外へ遊びに行く。
おれもカリラもクラスに溶け込んだが、ひとつ疑問がある。二匹にはプレゼントの山があるのに、おれには何もない。なぜだ!
四章まで読んでいただき、まことにありがとうございます。話が地味なのか、あまり広まらない勇者カカカ(苦笑)面白い、いや、まあまあだな、と思いましたら何とぞ評価ボタンをポチくだされ~。





