71 ダネルの提案
「兄貴たちに出世払いを頼むのはな、何も、こいつがおれと仲がいいって事じゃねえ。ちゃあんと利がある話よ」
長男と次男は、お互いを見合った。意味がわからないようだ。おれもわからん。
「こいつはな、目立つ。そこが肝だ」
「おれは、そんな色男じゃねえぞ」
「誰も顔のことは言ってねえ。おめえの連れさ。赤いサソリに黒い犬。こんな冒険者はいねえ」
「たしかに、相当な変わり者だな」
長男がうなずいた。別に狙ってこうなったわけじゃないぞ。
「だろう。それが俺らの店の装備をしてれば、これはいい宣伝になるぜ」
「へっ。弱えやつがつけててもな、宣伝になるもんか」
それは自分でも思うわ。おれがつけても……ねぇ。
「そうでもねえ。俺は道具屋だから、冒険者だけじゃなく村人も買いに来る。こいつの評判を聞いてみたが悪くねえ。しかも、この前の一件で、魔獣殺しって噂も広まってる」
おいおい、いつの間に?おれはおどろいた。
「そんな噂あんの?」
「ああ、俺が広めといてやった」
あのな……
「だめだ、だめだ。こいつは怪我してばかりだろう。ツケを払わねえまま死ぬかもしれねえ。いや、きっと死ぬ」
決めつけるなよ!
おれは怒ってはいないが、わざとムスッとした顔をしてみた。ダネルが、ちょっとカウンターにもたれて腕を組む。
「真面目な話、何か起きそうな気はしてんだ。今日の朝も城の一部が崩落したって話だ。最近、この国は変わった事が多いぜ」
「この男は信用できるのか?」
無口な次男が、ふい口を開いた。
「さあな」
ダネルが答えた。おいおい。
「これは誰にも言うなよ。この黒い犬がいるだろう、こいつ、人の言葉をしゃべるぜ」
おいおいおい! ダネル!
「ほんとか?」
「ああ、おれが直接聞いた。さらに、このサソリもしゃべったそうだ」
長男と次男が、おれの肩にいるチックに注目する。なるほどわかった。ダネルは頭がいいと思っていたが、思い過ごしだ。こいつバカだ。
長男のダンがハウンドの前にしゃがんだ。
「おい、犬、俺はダン・ネヴィスだ」
ハウンドは興味なさそうに丸まって目を閉じた。
「しゃべると言っても、声じゃねえぜ。心に直接だ」
ダンが立ち上がった。
「面白えな。いいだろう。ツケにしてやる」
「たしかに、興味深い」
「だろう」
なるほど、ダネルがバカなんじゃない。三兄弟そろってバカなんだ。
三兄弟はおれをそっちのけで、会議を始めた。ダネルがこれまでの戦闘を二人に説明している。ああでもない、こうでもないと組み合わせを考えているようだ。
「よし、決まったぜ」
ダネルがおれに向かって言った。ダンは店の奥に消え、ダフは自分の防具屋に帰っていった。
「あとは兄貴たちにまかせる。俺は帰るからな。道具が欲しい時は来い」
そう言って帰っていった。





