5 アナライザー・スコープ
おっと! 魔法と特技。何が使えるのか、把握しておかないと。
さきほど見た自分のパラメータを再度呼び出した。残念ながら、魔法の欄には何も書かれていない。今使える魔法はないようだ。
「特殊スキル」の項目を探す。
特殊スキル:アナライザー・スコープ
うわぁ。これまたやっちまった。
テストプレーヤーとして応募する条件に、「特殊スキルの提案」というのがあった。おれが考えたのがこれ、アナライザー・スコープ。
名前はかっこいいが、敵モンスターのパラメータが見える、というだけの物だ。実際に転生するのなら、もっとチート(最強)なスキルにすれば良かった。
まあ、使ってみるか。他にスタート時から使える魔法もないし。
おれは家を出た。今度は玄関の戸から。
道まで出て、まわりを見る。
隣の空き地に野良犬がいた。と思ったら、見た目はドーベルマン。でも目は真っ赤。その中に蛇のような細い瞳孔が開いている。どう考えてもモンスターだ。
よし、あいつを見てみよう。
スキル発動には、その名前を呼ぶ事と、事前に提案した動作が必要だった。実際にやるとなると、ちょっと恥ずかしい。
両手で輪っかを作り、腕を交差させる。そして叫んだ。
「アナライザー・スコープ!」
視界にパラメータ画面が出てきた。
名前:ノラ
体力:30
魔力:0
攻撃力:20
防御力:10
魔法:なし
特殊スキル:かみつき
名前のノラって、野良犬のノラか。あんちょくー。
うわ、攻撃力が20!
事前に読んだ説明書を思い返す。
ノラの攻撃力が20、おれの防御力は10だ。これは一回噛まれると、体力が10減ることになる。
おれの体力は100だ。つまり、十回噛まれると、おれは死ぬのか。
おまけに、おれの攻撃力は10で、ノラの防御力は10だ。いくら攻撃してもダメージを与えられないことになる。
おお、見ていたノラがこちらに気づいた。ゆっくり近づいてくる。道に入る寸前で止まった。それ以上は来ようとしない。
なるほど、モンスターは人間の住居や道には入ってこない。空き地には入れる、ということか。
ノラが帰っていく。山の方へ入っていった。
くっそー! 特技を即死させる何かにしとけば良かった! そうすれば、家か道の安全地帯から好きなだけ殺せる。いや、それだとチートになるから、なんらかの制限がかかってるかな。
まあ、とにかくこれでわかった。おれの良さは「相手を見てケンカができる」この一点だけだな。
……それって、現実と変わんねーじゃん!