表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/132

56 ダネルの説明

 待っていると、来たのは長男ではない。三男のダネルだ。


 武器屋の主人は大島に仕入れに行っているらしく、代わりに三男が来たそうだ。


 大島? 一瞬考えたが、おそらく四国の事だろう。


 ダネルは部屋に入ってきて、おれとティアの顔を見ておどろいた。


「おお、おめえと氷屋の娘が、何してんだ?」

「三人知り合いか?」

「ええまあ」

「なら、話は早いな。この娘がつけている装備は、ダン・ネヴィスの物か?」


 ダネルは、ちらっとティアの鋼の拳を見て、即答した。


「兄貴の店でしょうね。そんな変わり種は」

「なら、これは申請されているか? 密輸ではないのか?」

「まあ、間違いなく、申請してないでしょうね」


 憲兵隊長と目が合った。おいおい、ダネル、賢いお前らしくない。正直すぎるぞ。


「密輸でもないですよ。これは、もろもろの部品から作った創作武器です」

「創作武器?」


 おれと隊長が同時に聞いた。


「ええ。世の中で話は聞くが、手に入らない武器ってのは多いです。そういうのを作っちまうんですよ」


 おいおい、オリジナルかよ。こんな田舎でやる仕事じゃない。


 しかもティアに渡している。夜な夜な、おっさんが乙女のために凶器の手袋を作っていたのか。感動というより、気持ち悪い。


 ガレンガイル隊長は納得したようで、おれたち三人は帰っていいと言われた。帰り際に、少し、釘だけ刺された。


「知らない武器が流通しているというのも、問題はある。お前ら兄弟の店は、時々見回るぞ」


 ダネルは首をすくめた。


「君は、少し付き合う人を考えたほうがいい」


 これは、ダネルではなくティアに向けた言葉だ。


 大きなお世話だ! と言いたいが、反論しづらい。怨霊の一件で、かなり危険に晒してしまったからだ。


 三人揃って憲兵本部を出た。歩きながら、ティアの事をダネルにかいつまんで説明する。


「かっこいいなあ! 武闘家の資質か」

「無責任に言うなよ。ティア、オヤジさんは知ってるのか?」


 ティアは首を振った。


「学校の先生に元武闘家の人がいて、ここ一ヶ月、手ほどきを受けてたんです」


 わお。そういう先生っている。学生にロック聞かせたりな。


 姪っ子を持った気持ちとなった今では、その先生に文句を言いたい。


 でも、これは困ったぞ。いつまでもオヤジに黙っておくわけにいかない。おれから話すしかないか。いやー、それって気が重い。


「あの羊肉パンとエール、旨かったなあ。また食べに行かねえと」


 のんきなダネルの声に思いついた。道連れは、ひとりより、ふたりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ