表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/132

30 いけ好かない神官

 三件の死霊退治は特に問題なく、こなせた。


 意外だったのが、チックの魔法は思ったより外れる。三体の死霊を退治するのに、五個の魔力石を消費していた。


 これはチックが魔力をたった「1」しか持ってないから。レベルが上がれば解決する問題だとは思う。それにおれの魔法も、そのうち使えるようになるだろう。


 三件目の依頼を終えてギルドに行くと、交渉官から次の依頼が来た。しかも報酬は上がり600Gになっていた。


 いつも通り、交渉官からは依頼書だけ受け取り、マクラフ婦人の窓口に行く。


 男がひとり、先にいたので後ろに並んで待った。


 その男は、後ろからでも職業がわかった。神官か僧侶だ。丸めた頭に、ひきづりそうな長いローブ。そのローブには大仰しい金の刺繍が入っていた。片手には、太い本を抱えている。


 待っていたが、けっこう長い。こっそり距離を詰めて、盗み聞きしてみる。


「ギルドが責任を取らぬのなら、誰が責任を取るのだ?」

「わたしに言われても」


 なんだか、揉めているようだ。


 しばらく盗み聞きして、内容がわかった。依頼人が報酬を払う前に死んでしまったようだ。


 いや、おかしいな。ギルドに依頼する時は、前金のはずだ。


 男が、いらついた口調で言った


「依頼人は、たしかに言ったのだ。追加報酬を払うと」


 なんだよ、口約束かよ。


「あのう」


 声をかけてみた。男がギロッと振り返る。頭は丸めているが、太い眉毛に鋭い目。


「急いでるんで、後にしてもらえませんか? それに、窓口に言っても意味ないと思うんすけど」

「誰に上から物を言っておる」


 男はそう言うと人差し指をくるっと振って、何かを唱えた。


 身体が固まった。


 まじか! いきなりマヒ呪文かけるか?


「ぐぬぬぬ」


 口周りに気合を入れる。口が開いた。


「いきなり、何すんだハゲ!」

「解けたのか?」


 男がおどろいている。こっちは四体連続で死霊と戦ってんだ。マヒには少々慣れた。


 胸ポケットから、チックが肩に上がってきた。ハゲがぎょっとする。チックが体を揺らし始めた。


「チ、チック、撃つなよ」


 この男に攻撃するのはいいが、お前の一撃は100Gなんだ。そう思ったが、男は別の意味に聞こえたようだ。攻撃されると思ったのか、逃げていった。


「ぐぬぬぬ」


 口と手首から下はマヒが取れたが、ここからが中々取れない。


 マクラフ婦人が何かささやいた。すると、マヒが取れた。これは、状態回復呪文!


「ありがとう」


 おれは礼を言ったが、婦人はいつもと変わらない。書類を出せと、片手を広げた。


 おれは依頼書を出した。婦人がハンコをつく前に一度止まり、おれのほうを見る。何かあるのかと思ったが、何も言わず結局ハンコをついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ