表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/132

2 ゲームスタート


 家に着くと22時45分。


 ゲーム開始は24時。まだ大丈夫。一時間以上ある。二階にある自分の部屋に駆け上がった。


 ヴァーチャルキットの箱を開ける。PCへの接続を始めた。


 一ヶ月前に、説明書は送られてきている。今さら見なくても接続できた。

 

 接続してPCの電源を入れた。


 あとはソフトのインストールだ。このソフトのインストールが思いのほか、時間がかかった。全世界のテストプレーヤーがダウンロードしているからかもしれない。


 イライラしながら待った。時計を見る。


 23時55分! たのむ、早くしてくれ!


 終わった!


 あわててマウントディプレイをかぶる。何も見えない。なんでだ?


 ああ! 前後ろが逆か!


 かぶりなおす。目の前にカウントダウンの文字。おっしゃ!


 カウントダウンは今、48。


 ああ、忘れてた! グローブだ。両手に画面操作をするためのパワーグローブがいる。


 ディスプレイを一度脱いだ。グローブを装着して、もう一度かぶる。


 あと8! あぶねえ!


 3、2、1!


「ボワーン!」


 耳元で銅鑼が叩かれたような音がした。


 ゲームタイトルが地平線の向こうからやってくる。ゲームスタートは、両手のグローブを強く握れば良かったはずだ。


 握った。


「痛ってえ!」


 マウントディスプレイをかぶった頭から、ケツの穴まで、全身に電気が走ったような痛みがあった。


 画面が、だんだん明るくなってくる。おお、ついにフィールド画面が来るか!



 ……明るくなった。


 ん? 明るくなったが、映っているのは、おれの部屋だ。


 右を向いてみる。おれの本棚だ。ちなみに、右下に広辞苑の外箱があるが、中身はエロいブルーレイだ。


 左を見る。おれのベッド。


 まじか壊れたな。マウントディスプレイ搭載のカメラ映像が出ているだけだ。さきほどの漏電みたいなショック、あれで壊れたんだろう。


「カズマサ、早くせんと仕事遅れるよ!」

「お、おう!」


 ふいを突かれて、びっくりした。オカンか。


 そう、おれの名は「小野(おの)和正(かずまさ)」だ。「小田和正」と名前が似ているので、おじさん世代からは絶対ツッコまれる。


 スナックに行けば、ママさんから「東京ラブストーリー歌って!」とせがまれる。知らんし。トレンディ世代じゃないんだから。


 そして期待を裏切って悪いが、ものすごい音痴だ。高校時代は、それでイジメられた事もあるぐらい。


 いやいや、それより、朝? おれは窓の外を見た。ほんとだ明るい。


 壁の時計を見る。7時35分だ。


 これ、ひょっとして、さっきの電気ショックで気を失ってたのか。そんなことあるかな?


 マウントディスプレイを外した。すごい目がぼやける。八時間ぐらいゲームをやった後みたいだ。


 コンタクトを外そう。グローブを脱ぎ、目を大きく開いた。


 あれ? コンタクトがない。裸眼だ。


 目をぐるぐるしてみたが、どこかに入り込んでる様子もない。落ちたかな。おれは顔を上げた。


 あれ? 机に、PCが無い。右の本棚を見た。本棚はある。けど、並んだ本の背表紙には、見たこともない文字が書かれていた。


 これは、おれの部屋じゃない。


 ベッドと机、本棚の配置は似ているが、床なんて石だ。いやいや、それ以上に天井なんて、あれはワラ?茅葺(かやぶ)きの家かよ。


 動こうとしたら、足元に何か当たった。見ると木の兜だ。ヨーロッパの騎士がかぶるような、すっぽり顔まで入るヘルメットのような物。


 持ち上げて中を見ると、ちかちか光ったスクリーンパネルが内側にある。なんだこれ。かぶってスクリーンを見てみた。


 パソコン机に右に本棚。広辞苑もある。ああ、おれの部屋だ。


 なるほど! なんてことはない。さきほどの部屋はゲームの世界か。


 安心してディスプレイを脱いだ。


 ……いや、待って。


 おれ、今、ディスプレイを「脱いだ」よね。なんでこっちがゲームの世界なわけ?


 とりあえず座った。もう一度、木の兜をかぶる。自分の部屋が見えた。


 木の兜を脱ぐ。この部屋。


 向こうがこっちで、こっちが向こう?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] えー面白いです! 向こうがこっちで、 こっちが向こう?? ディスプレイ一枚隔てて、 世界が入れ替わったのか?? [一言]  3、2、1! 「ボワーン!」  耳元で銅鑼が叩かれたような…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ