表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/132

129 歪んだ空間

 洞窟を出ると、そこは死体の山だった。


 作られたアンデッドは、その製造者が死ねば死人に戻るのか。


 死体をまたいで歩く。採掘場のゲートまで、やっと逃げれた。


 なんだ? 地面が揺れている。


「山が」


 誰かが言った。おれは振り返る。


 砕石で半分切られたような山が揺れていた。


 揺れは大きくなり、土砂崩れのような音がして山が沈んだ。



「どうにもならん」


 アドラダワー院長がつぶやいた。


 治療院の一階。治療台の上には、土気色をした氷屋のオヤジが乗っている。


「でも、傷はなさそうですよ!」


 おれは思わず大声を上げた。オヤジさんの身体からは血も流れてなければ、傷もなかった。


 アドラダワーはオヤジさんの身体に手をかざしている。


「使われた魔法の痕跡は残っておる。これは、魂を引き剥がす呪文じゃ。その途中で止まっておる」


「じゃあ、その魂を戻せば!」


 アドラダワーは首を振った。ティアが隣で泣いている。


 ガレンガイルとマクラフ婦人、ダネルはじっと黙って立っていた。


「ネクロマンサーなら、できるかもしれん。じゃが、わしではできん」


 バルマーは瓦礫の下に埋もれた。または、おれの炎で焼け死んだか。操っていたアンデッドが事切れていたのを考えても、生きてはいないだろう。


「奇妙な例えじゃがな、この身体と魂は時が止まったような状態じゃ。回復魔法も薬草も、なにも効かん」


 時が止まった? 似たような物をおれは知っていた。


「院長、おれの預けたもの、いいですか?」


 院長に持ってきてもらったのは秘密の箱だ。その箱を開け、木の兜を出す。みんなが、けげんそうな顔をしている。


「信じられないかもしれないけど、これは、よその世界を見るための道具です。そして、その世界の時は止まってます」


「カカカ殿、よその世界とは?」


 ガレンガイルに説明するのはあとだ。アドラダワー院長の前に持ち上げる。院長はそれに手をかざした。目を閉じて何か探っているようだ。


「空間が歪んでおる。それ以外は、わしにもわからん力じゃ」


「これを利用できませんか?」


 院長は目を開け、顔をしかめた。


「これが、お主の言うように時が止まった物として、それをぶつけても同じじゃ。同じように時は止まったまま」


「いえ、そいつをこれにぶつけるんです」


 おれは箱の中からブーツを出した。


「変異石か!」


 アドラダワー院長が、今までになく考え込んだ。


 そして、しばらくして静かに言った。


「できるかもしれん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ