表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/132

123 僕の彼女

「このカケラを持っていると?」

「もちろん、ここには持ってきてませんが」

「では、後ほど、あなたの家を探しましょう」


 バルマーがまた歩き始めた。


「それも、どうですかね。僕の彼女の家に置いてるんで」


 バルマーの足が、また止まった。


「その彼女とは?」

「マクラフです」


 突然に名を出されて、マクラフ婦人の目が大きくなった。硬直してて良かったのかもしれない。口が動けば怒られたかも。


「ああ、じゃあ、彼女の家を探せばいいかというと、そうでもないです。秘密の箱に入れちゃったんで」


 バルマーの片眉が上がった。


「あなたとマクラフが恋仲。なかなか信じがたい話ですね」

「いやあ、僕の担当なんですよ。知ってます? ロード・ベルで話してるうちにね、仲良くなっちゃって」


 バルマーの前で彼女からのロード・ベルを取った。信憑性は上がるだろう。だが、もっと上げないといけない。


 おれはマクラフ婦人に近づいて、硬直している肩に手をおいた。


「僕、胸の大きい人が好きなんです。知ってました? 彼女92もあるんですよ!」


 ニタニタしながら言ってみた。バルマーに背を向けて彼女を見る。


 おれは真顔で彼女を見た。彼女が見つめ返してくる。大丈夫。おそらく彼女は、この演技をわかっている。


「なるほど、ふたりは恋仲のようですね。マクラフの歳は少し上ですが、未婚です。良いかもしれません」


 マクラフ婦人の目に力が入った。なんだ?


 あっ、ひっかけか!


 バルマーは彼女のこれまでを知っている。くそっ! この話、したくねえな。


「いやあ、どうでしょうね。二度目の旦那さんとして、僕を迎えてくれますかねぇ」

「ほう、死別したのも承知とは。これは本物らしい」


 ハッタリにかかった。でも、マクラフ婦人の目は見れない。見たくない。


「では、勇者カカカよ、その箱を持ってきなさい。それまで、あなたの想い人は預りましょう」


 うおっ! そう来るか。ここまで必死に考えたのに、さらに一捻りが必要だ。


「ああ、箱は動かせないように固定してるんですよ。三人の鍵なら、おれとそこの二人です」


 おれはガレンガイルとティアを指差した。


「三人で取りに行っても、いいですか?」


 バルマーが舌打ちした。いいね。初めて、こいつの感情を動かした。


「では、マクラフ、取ってくるがよい」


 バルマーがステッキを振った。マクラフ婦人が前によろける。硬直が解けたようだ。


 おれの目を一度見て、入り口へと走った。


「家の鍵は、扉の前だよ! 扉の前に置いたからね!」


 うしろ姿に声をかける。わかっただろうか?


「さて、往復で一時間ってとこですかね。どうしましょ? 牢屋とかあります? なんなら入りますけど」


 おれは盾を地面に投げ捨てた。腰に下げた剣も鞘ごと置く。


 格好をつけたフリをして、スボンの両ポケットに手を入れた。


 右に万能石、左に反射石をこっそり持った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ