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11 水晶の両替

 体感時間なので適当だが、二時間ほどで土庄の港町に着いた。


 いや、これは土庄町ではない。


 現実の土庄町は、フェリーの発着場で小豆島の中心的な町ではある。ただ、くすんで灰色になった古いコンクリートの建物が並ぶ、古びた町だった。


 そんな面影はどこにもない。真っ白な漆喰に塗られた小さな建物が密集していた。


 街の大通りは石畳で造られていて、その上を馬車が走った。ところどころに街路樹や噴水もあり、ギリシャあたりの港町を思わせる。


 瀬戸内海のキャッチコピーは「日本のエーゲ海」と言う。地元民からすると恥ずかしい限りだった。それがどうだ? ほんとにそうなっちゃってる。


 通りを歩く街人も多く、露店も出ていて賑やかだ。


 さて、ギルドに行く前に装備を整えないといけない。そのためには、お金が要る。両替所に向かった。


 両替所は香川銀行小豆島支店のあった場所だ。すぐにわかった。


 建物の大きさは現実と同じだったが、やはり造りが違う。石造りの中世風になっていた。


 中に入ると木のベンチが並び、その前に木の長いカウンターがあった。現実の銀行と同じような雰囲気だ。ただ、窓口の人間が違う。ゲームの中なので、全員が中世ヨーロッパ風の外人。


 見た目が日本人ではないというのは、やっぱり話しかけずらいな。


 窓口の一つが空いていたので行ってみる。栗毛色の髪と目をした青年に、話しかけてみた。


「水晶をお金に変えたいのですが」


 窓口の青年は「どうぞ」と言い、小さな木箱を出した。この中に入れろってことだな。


 おれはリュックから水晶の小さなカケラを出し、木箱に入れた。青年は、その木箱を後ろの職員に渡す。


 まず、宝石商が持つルーペのような物で、水晶を調べた。それが終わると、次の人に渡される。


 次の人は天秤に乗せて重さを測った。それが終わり、やっと三人目が水晶の数を数えた。


 これ、街人の動きがすげーリアル。街人や村人はAIが操作しているはずだ。AI技術って、すげえ進んでいるんだな。


 ただ、リアルすぎて時間がかかる。十五分ほど待たされて、やっと、お金がやってきた。


 水晶は324個あったらしい。銅貨324枚が手に入った。


 銅貨は十円玉程度の大きさで、丸ではなく四角い。それが300枚以上となると、かなりの重さになった。


 サービスでもらった麻の袋に詰め込み、リュックに入れた。背負うと背中がずっしりくる。これは早く使ってしまおう。


 両替所を出て、武器屋を探すことにした。背中は重いが、足取りは軽い。


 おれが「武器屋」に行くとはね。なんとも心が躍る。ハワイでガンショップに行った時に心は踊らなかったが、今は違う。やっぱり「剣」とか「弓」って、男のロマンだよな。


 そんなことを思っていたら、戦士と思われる装備で身を固めた美女とすれ違った。


 おお! まるでジャンヌ・ダルク! 彼女に「フォローミー!」って言われて、思わず付いていったフランス軍の気持ちがよくわかる。


 なるほど。言い直そう。剣ってのは「男女」ともにロマンがある。


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