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102 見てはならぬ物

「では、カカカ殿」


 ガレンガイルが、ふいに拳を前に出した。


「はい?」

「仲間の誓いを」


 オリーブン城でやったやつか。


「隊長、ここではなく、それは城の住民課ですよ」

「勇者であれば、特技でできるはずだ」


 ええ! そうなん? おどろいたが、そんな文字はパラメータで見てない。


「無理! おれの特殊スキルに、そんな名前ないもん」

「カカカよ、お主は記憶喪失じゃったの。忘れておるだけで、できるのではないか? 現に妖獣を二匹も従えておる」


 言われてみれば、そうかも。自信はなかったが、ガレンガイルに向き合った。


 ガレンガイルは、おれの心臓の上に拳を乗せた。おお、これ格好いいな。おれも真似をして、拳をガレンガイルの胸に置いた。


「戦士ガレンガイルの剣、存分に使われよ。勇者殿」

「ああ、使いまくってやる」


 二人の身体から小さな光の玉が交換された。パラメータを開いてみる。


  名前:ガレンガイル

  職業:戦士

  レベル:26

  体力:310

  魔力:0

  攻撃力:180

  防御力:160


 うわあ、強え。さすが師匠。もはや、素手の師匠と戦っても負けるな。そして、魔法はないか。


 あら?職業って、もう変わってるな。言ったもん勝ちなのかな。いつか、自分で「遊び人です」って言ってみるか。いや、そんな事よりスキルを見てみよう。


  特殊スキル:二連突き 三連突き 見切り 一刀両断 回転斬り 神速の踏み込み


 おお、技のデパートだ。色々見てると日が暮れる。パラメータを閉じた。


 ティアがおれの前に出た。ガレンガイルを見習って拳を突き出す。いや、それ、無理だから。


 おれは手のひらを向けた。ちょっとつまんなそうに、ティアが手を合わせる。


「ここに両者の愛の誓いとして、新たな船出を祝い……」

「おい、ダネル!」


 ダネルが首をすくめて引っ込んだ。この世界でも、似たようなセリフってあるんだな。


 ティアが、真っ直ぐにおれを見つめて来る。おれは天井に視線を外した。やべえ、おじさん、キュンと来た。


「えーと、危なくなったら、すぐ逃げるように」

「ヤダ!」


 おれは大いにむせた。


「ティア?」


 おれはティアに視線を下ろした。まだ真っ直ぐに見つめてくる。


「あたし、今度は足手まといにならない」

「前もなってないよ」


 おれは反論したがティアの視線は動かない。まいったな。


「じゃあ、これだけ守ろう。ガレンガイルは頑丈だ。彼の後ろにいるように」


 ティアはガレンガイルを見た。ガレンガイルがうなずく。それから、マクラフ婦人を見た。婦人もうなずく。


「わかったぁ」

「よし」


 二人の身体から小さな光の玉が交換された。パラメータを開く。


  名前:ティア

  職業:武闘家

  レベル:12

  体力:150

  魔力:0

  攻撃力:70

  防御力:60


 ええー! おれまだレベル11なのに、それ超えてんじゃん!


 どんだけ頑張ったのよ。もうやだ。ティーンネージャーの熱量なんて嫌い。


  特殊スキル:クリティカル・ストライク キコーダ


 スキルが増えてるな。なんだろう「キコーダ」って。


  身長:162

  体重:48

  バスト:77

  ウエスト:58

  ヒップ:82

  親密度:22


 バ! バストが縮んでる! 身体が鍛錬で引き締まったんじゃなかろうか。おれは見なかった事にして、パラメータを閉じた。


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