101 人員交替
「四人と二匹。最後の戦いに行くかの」
院長の声に一同うなずきかけたが、マクラフ婦人が待ったをかけた。
「アドラダワー院長は、この国を代表する治療師。グレンギース、人選が間違ってるわ」
それを聞いたグレンギースが、眉を寄せた。
「ですが、冒険者の組には回復を担う役が必要です」
「そうね。でも院長はだめ。万が一でもあれば、損失が大きすぎる」
婦人は、おれのほうを向いた。
「わたしでいいわね?」
おれは、すぐにうなずいた。そう言い出しそうな気はしていた。
「マクラフさんが?」
おどろいているのは、ティアだ。
「ああ、彼女はおそらく、元魔法戦士だ」
「ええ!」という声は、ティアではなく、ギルド全体から沸き起こった。
「そんなおどろく? 婦人、隠してたんですか?」
マクラフ婦人は肩をすくめた。
「隠さなくても良いものを」
あきれた口調で言ったのは、同僚のグレンギースだ。続けて、ある疑問を口にした。
「元冒険者なら、なぜ、あんなに冒険者に冷たいのです?」
ギルド職員の目が、いっせいにマクラフ婦人に注がれた。あはは。職場のみんなが思ってたらしい。
マクラフ婦人は、まわりの視線を受け、面倒くさそうに話し始めた。
「新人の冒険者ってね、格好つけたがるのよ。それに無知。彼らは頑張らないほうがいいの」
「頑張らない、ですか?」
グレンギースが納得行かない顔だ。
「受付の職員が、頑張ってね、なんて笑顔でいうと、頑張っちゃうのよ。それは命に直結するわけ。無愛想な女から依頼を受けてれば、辞めやすいでしょ。こんな依頼、もうほっとこう。どうせ、あの無愛想な女から受けた依頼だって」
「そんな理由が……」
グレンギースが絶句してるが、おれは胸が痛かった。最初のフナッシーとの戦闘がまさにそれ。ティアとオヤジさんに格好つけて依頼を受けた。
「わたしは、この島に流れてきて働かせてもらってる身でしょ。この職場、いい人たちばっかりだから、恩があるわけ。冒険者が帰ってこないって、悲しいでしょ。そういう思いをさせたくないなあって。それだけよ」
グレンギースは窓の外を眩しそうに眺めた。ギルド職員もだ。
そうね、中年になると、涙腺が弱いからね。不用意に喰らう「いい話」はやばい。おれも窓の外を眺めよう。
「役者は、揃ったみたいだな」
もう、昨日から聞き飽きた声がした。
「ダネル、何の用だ?」
「おめえじゃねえよ。ガレンガイルとティアさ。おれらネヴィス兄弟が、装備を頼まれている」
なるほど。昨日、おれがパーティー募集をして、グレンギース交渉官がすぐに動いた。ガレンガイル、ティア、アドラダワー院長に連絡をした。ガレンガイルとティアは、それを受けてすぐに装備を頼んだ。そんな流れか。
おれは昨日から、ちょっぴり孤独を感じ、センチメンタルな気分になっていた。それって、まったくの思い過ごしだった。
……恥っずぃ。





