【ヘリ女性落下死亡】東京消防庁の体質について思う。
ヘリコプターによるホイスト救助は真に必要かつ他に代替手段が無い場合のみ選択すべきではなかろうか。絵になるから、そんな理由で行うべきでは決してないと思う。
台風19号による爪痕は日を追うにつれ明らかとなった。自宅近傍を中心が通過した際には、15号に比して風が弱く感じたものの、累積降雨量は15号の比ではなく同居人の実家も床下浸水するに至った。本災害で犠牲となった方々に、まずは深く哀悼の意を表したい。
台風一過、徐々に明らかになる被害の中で、聞きなれないニュースが耳に残った。共同通信によると、福島県いわき市で行われた東京消防庁によるヘリコプター救助に際し、高齢女性が落下して死亡したというものだ。2013年12月に富士山頂で起きた静岡市消防隊ヘリコプターによる落下死亡事案と同じことが、また発生してしまったのだ。
翌日のFNNの報道(xtp8m_gAQYI)によると、東京消防庁の清水洋文次長は「救助活動の手順を誤った」と謝罪した。事案の一部始終(3BByvQeWHCI)は、近傍で撮影されていた。※いずれの動画も有名映像共有サイト内を()内単語で検索することで閲覧可能。
東京消防庁がこの事案の原因について、本気で「救助活動の手順を過誤」だと思っているなら由々しき問題と考える。
今回使用されたEmergcoTechnicalSolutions社製のEvacHarnessという簡易担架は、要救助者の身体を乳児用おくるみのように包み込み、ヘリコプターからの吊り上げに際して要救助者の身体に掛かる負荷を分散・軽減するものであるが、要救助者の落下を防ぐために、スリングを要救助者の股下から通して吊り上げ用のDリングに固定する仕様となっている。イメージとしては、毛布で要救助者を包み、首と腰を支える左右の2本、股下から支える1本の計3本のハーネスを引っ張って要救助者を吊り上げるものである。
今回は、この股下ハーネスをDリングに装着していなかったため、要救助者の自重で身体がずり下がり、機体への収容直前にハーネスから滑落した。
富士山頂での要救助者落下事案の際に使用された資材も同社製の別製品であったが、その際にも落下防止用の股下シートを装着しなかったことが原因とみられており、奇妙な符合がみられる。
FNNのニュース動画を見てもらうと、吊り上げ開始早々に要救助者の足が消防隊員により高く差し上げられていることが判る。通常の吊り下げ救助では、特段の理由がなければ、要救助者の快適性を重視して頭部を上になるよう配慮する。要救助者の足を必要以上に高く保持している理由は、吊り上げ時点で股下ハーネスの未装着に気が付いていたからではなかろうか(筆者推測)。
となれば、事案の原因は「(浸水環境下に起因する)手順の過誤」ではなく、「吊り上げ過程で過誤に気づいたものの吊り上げを継続したこと」となる。
本件について監督官庁である総務省の高市早苗総務大臣は、「 ぎりぎりの状況の中で、懸命に救助活動に携わった結果、事故を起こしてしまった」と述べている。(1UsVgFi-X-8)
富士山の事案に関する遺族訴訟では、「日没が迫り、乱気流が生じる恐れがあったため……」との理由から迅速性を重視して股下シートを装着しなかった判断の合理性が京都地裁において認められた。
本件においても、台風一過の晴天ではあったが、富士山頂に匹敵する強風が吹いていたのかもしれないし、隊員の身に差し迫った危険が存在したのかもしれない。多くのやじ馬が携帯電話で撮影をしていたが、一般人には予見不能な何かしらギリギリの状況が生起しつつあったのだろう。SNS等に見られる多くの擁護意見も同様の論調である。まぁ、誰にでもミスはあるしね。
それでも、筆者には次の疑問が残る。
・ 吊り下げ用のリングに股下ストラップが掛かっていないことに気づいた後に中止しなかったのは何故か?(要救助者を補助する隊員が己の腕力を過信したということなのか? まさか、速度重視で平素から股下ストラップは着けていなかった?)
・ 地上誘導員は吊り上げ過程を見守っていなかったのか?(あの保持姿勢が標準だった?)
・ 操縦手、機上操作員と地上勤務員との間に交信は維持されていなかったのか?
・ 機上ホイストの操作要員が基本手順(最初に少し巻き上げてロープを緊張させた後に一旦停止させ、確保状況を確認した後に巻き上げる)を遵守しなかったのは何故か?
・ 機体は低層住宅街にも関わらず、なぜ上空40mの高度を維持していたのか?
・ そもそも、水深僅か50cm程度の冠水状況でヘリコプターによるホイスト救助を選択したのは何故か?(死亡女性は要介護者で、浸水した自宅を片づけるために行政に”一時預かり”を要請した模様)
総括すると、これらすべての背景には、虚栄心に根ざしたTV撮影への過剰な配慮があったのではなかろうかと思わざるを得ない。
本事案に関する報道はなりを潜め、死亡した女性も台風19号の被災者の一人として計上された。自然の猛威に対し人間が出来ることには限界があるけれど、人の犯す過ちであれば、過ちを繰り返さないよう努めることが人としての道ではなかろうか。
すでに大臣が会見した以上、もはや訂正広報は不可能かもしれないが、せめて組織内では真摯な原因究明を行っていただきたい。「ストレス環境下における手順不履行」の原因を究明し、組織風土を改善しない限り第3の事案は必至と考える。
事実誤認があった場合、謝罪と訂正を行いますので指摘をお願いします。




