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最終話 : ずっとやられる

 結局大学を半年以上休んでしまった。

 もちろん、単位が足りるわけもない。せっかく浪人しなかったのに、もう一年学生生活が長引いた。

 成悟さんは、槙教授の個人秘書になった。以前と変わらず研究室にいる姿を見ると、ホッとする。


「そういえば、佐喜ねえ……、姉と会いました?」

 最近、大学でのランチは成悟さんと2人でハーブガーデンのベンチで食べることが恒例となっていた。

 今日もお天気のいい中、購買で買ったパンを齧って聞いた。

 返事がないので横を見てみると、なぜか成悟さんが固まってる。

「ん?……ああ、お母様ってことはわかってますよ?」

「あ……、そ、そうか……。いや、多喜が入院中に見かけてはいたんだけど……」

 歯切れが悪いな。私から言ってやる。

「私が嫌がるかと思った?」

「あー……、そうだな。でも、なんかお姉さんだから?そうでもないの?浅見先生の時と反応が違う」

 そういやそうか。

「あのね、佐喜ねえすでに婚約してて、仕事も寿退社して、挙式準備中なの。そんな中だったから長いこと泊まりで私の看病に来ることができたんだけど、その分挙式を延期してもらっちゃって」

「えっ……、そうだったの?」

「更に言うと、佐喜ねえのお相手、小さい頃からの幼なじみで、私ももちろん知ってるんだけど、それはそれは誠実な人で優しくて、佐喜ねえを大事にしてくれてて、佐喜ねえもあずやん……あ、(あずま)さんて言うんだけど、あずやんのこと大事にしてて、2人とも昔からラブラブなの。そんなのをずっと見てたから、佐喜ねえがお母様だってわかっても……、って、あれ?成悟さん?聞いてます?」

 隣に座ってる成悟さんを見れば、クロワッサンを両手で握ったまま下を向いて止まってる。


「成悟さん?」

「なんか、すごい信頼してるよね……。そうだよね……。突然現れて告白するようなやつは、信用得るのは時間かかるよね……」

 ん?

 これは、もしや。

「多喜……、その東さんとやらを少なからず好きだったんじゃないの?」

「うん。小さい頃は好きだった」

 あっさり言ったら、成悟さんはより落ちた。

「小さい頃っだってば!」


 退院してからというもの、成悟さんが妙に自信なさげになってしまった。

 自分のせいでわたしが怪我をした、と思ってるせいなのか、私が全ての記憶を取り戻したせいなのかはわからないけれど。

 でも離れようとはしない。

 そこだけはぶれないんだけどな。

「私こそ信用されてないの?」

「えっ……」

「だって、私、ちゃんと成悟さんに好きって言ったのに……」

「ご、ごめん!違う!多喜のこと信用してないとかじゃなくて、俺の気持ちの整理が付いてないってゆーか……」

「うん、なんとなく分かってる」


 今までずっと「思い出してない私」が普通で、それに対応してきた彼は、「思い出してる私」の接し方に困ってるみたい。

 私の中では特に格段に違ったことってないのにな。

 ローザを思い出してない時に、色々と悩んだのち、吹っ切れたのが、今の状況には良かったのかもしれない。


「結婚式、成悟さんも来て下さい、だって」

 ニッコリ笑って言ったら、急に顔を輝かせた。

「もしかして、多喜のドレスアップ姿見れるの?」

「やめて、期待値爆上げしないで!ローザみたいにはならないからね!?」

「ドレス、買ってあげようか?」

「嫌だ!オヤジみたい!でも残念でしたー。未婚の身内特権で、振袖予約しちゃってるんだもーん」

「振袖!!」

 それはそれで見たい……、とか呟いてるのはスルーしておこう。

 最初は締め付けが脇腹にヤバいかと思ったけど、念のためと試着してみたら、逆にコルセットみたいで安定感あったのよね。



 まるで何事もなかったかのように、笑い合えるのは成悟さんのおかげ。

 守谷さんのことも、昌也さんのことも、捜査とか色々とあることは知ってるし、たまに警察に呼ばれてたりすることは隠さずに言ってくれるけど、内容については全くお互いに触れない。

 そうやって私を守ってくれてることも、私がそれに甘えて自分から積極的にかかわろうとしないことも、お互いに理解してる。

 端から見れば、私は無責任に見えるかもしれない。

 けど、現世での大学に入ってからの怒涛の展開と、思い出したいろんな世界のことと、彼との邂逅の遍歴で、私の心は振りきれてしまったのだ。


 ハッキリ言えば、変に悩まなくなった。


 もちろん、前世からの好意をこじらせすぎて私を刺した守谷さんに、怒りと同情と哀れみはあるし、高坂先輩を意識しすぎてこじらせた昌也さんにも同様に思う気持ちはある。

 でも、申し訳ないことにそれらを蔑ろにしてでも、私は成悟さんと一緒にいたい。

 多分、成悟さんはとっくに()()なんだ。

 だから、前世父親とかそんなの問題視せず迫ってきた。怪我させたと気にやんでても離れようとはしなかった。

 気にしてたのは、立場とか倫理ではなく、私の気持ちだった。

 なんのことはない。私もそちら側に落ちただけ。


 なんて自分勝手で幸せなことなんだろう。




 隣でゆっくり微笑む大好きな彼に言った。

「次に、どんな風に出会えるかわからないから、現世はずっと一緒にいてね」

 本心がそのままするりと口に出た。

 キレイな顔が、一瞬で真っ赤になった。

「……えっ、それって、プロポーズ……?」

 言われて、今度は私の顔が熱くなった。

「へっ……、いや、そういうことじゃなくて!いやいや、結婚したくないってことじゃなくて……。今の気持ちってゆーか……」

 そんな重大なことを簡単に言ったつもりがないことを伝えたくて、あわあわ言ってたら、いつものようにスルリと頬に暖かくて大きい手が触れた。


「多喜」


 その、フニャリとした甘い微笑みにきっと()()()やられる。

「こちらこそ、ずっと一緒にいて。ずっと、愛してる」



―― 終 ――




最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!

これにて多喜と成悟の話は終りです。

途中、更新が滞りがちだったこと、申し訳ありません。現実生活が忙しすぎた……。

度々、誤字脱字報告を頂きありがとうございました。見直しはしてるものの、見逃してるのですね。本当に助かりました。



ヒーローの成悟さんが、書いても書いてもなかなか定まらず、苦労しました。多喜のが楽だったよ。

ラブコメにしたかったのに、どうしてもラブコメにならなかった……。そして、私が書くと何故かいつも警察沙汰になるのはなぜだ?

次は事件がおきても民間でなんとかなる(と思われる)ファンタジーで、伏線とかあまり考えずラブラブしたのを書きたいな……。


さて、2人の話は終わったけど、もう1つのカップルの番外編をもうちょい書く気です。

お暇があればお付き合い下さい。


ありがとうございました。




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