40: 俺しか知らない話 3
更新遅くなりました。
誤字脱字報告、ありがとうございます!
あれ?
俺はなんで寝ているんだろう?
右手が痛いな。
あ、包帯してる。
やたらズキズキするし、肘から先はなんか全然動かせない。
どこでこんな怪我を?
―――めいよのふしょう
そんな風に誰かに説明した気がする。
名誉の負傷?
自分のためてはなく、誰かのために?
誰?
たき?
ろーざ?
今はどんな世界だったっけ?
「多喜……」
声に出してみたら、ぶわっと思い出した。
ガバッと起き上がり、周りを見渡せばそこらじゅう真っ白の部屋。
ベッドと、小さい棚、カーテン、病院だと思われる。
「は?なんだ、ここ……」
震える手を見れば、右手はガッチリギプスをしていて、左手は細かい切り傷だらけだった。
震える手に、まだ感触が残ってる。
ぬるっとして、生暖かい、多喜の血……。
「……っ!多喜!」
ベッドから下りてドアに向かおうとしたら、ドア手前の椅子にユリウス……忍が座って居眠りしていた。
「忍……、忍!」
「……ん、ん?兄さん?起きたの!?」
「多喜はどこにいる!?」
あまりの勢いに一瞬忍が止まったが、すぐ険しい顔になった。
「多喜ちゃんは……、今、集中治療室に入ってるの……」
忍の目から涙がポロポロ落ちてきた。
「会え……るか?」
「わかんない……。聞いてみないと。兄さんも、右手……」
ギプスのついた右手を見る。
俺が不思議そうな顔をしていたので、気付いたらしい。
「覚えてないの……?」
頷くと、忍の顔が歪んだ。
「守谷さんを……、殴ったの……。彼女、包丁持ってて……、その前の骨折で包帯と添木があったから、まだ良かったけど、素手だったらもっと酷かったって、お医者さんが……」
忍の説明で、あやふやだった記憶がハッキリとしてきた。
あの時、全てを許してくれるキスをくれた多喜が照れてるのが、すごく可愛くて油断してた。
ふわりと緩んだ顔をしたまま、ガクンと沈む彼女に何があったのか、始めわからなかった。
脇腹に深々と刺さる包丁を、視覚では捉えているのに、頭がソレを認識してないまま、反射でその包丁を握るモノを殴った。
こういう時、本当は刺さっているモノを引き抜かずに医者に見せるのが正解らしいのだが、俺が殴ったのに反撃するためか、彼女は多喜の脇腹から包丁を抜いた。
とたん、ものすごい量の血が吹き出して、あたりを真っ赤に染めた。
咄嗟に脱いで傷口に当てたシャツが、みるみる赤くなっていくのがやたらと鮮明に見えた。
「多喜……。多喜に会いたい……」
呆然と呟く俺を横目に、忍がナースーコールを押した。




