25: 門
誤字脱字報告、ありがとうございます!
読みやすいよう、がんばります。
「こんな所からも大学に入れるんですねぇ……」
彼女―――守谷さんは、門の向こうであたりをキョロキョロしながら、ふんわり笑った。
私と忍ちゃんは、突然現れた彼女にどうしていいか分からず、止まってしまった。
「開けてくれません?」
この門は施錠はされていないけど、こちら側からしか開けられない。当たり前のように入って来ようとする彼女の言葉に躊躇した。
確かに大学は一般人も入れる。食堂だって、利用してる人もいる。
だけど、彼女がこちらに来たがる理由が成悟さんだと思うと、素直に開けたくない気持ちが沸いてきた。
「待たせて、ごめん」
そこに走ってきたと思われる、息を切らした成悟さんが現れた。こちらに近づいて、ハッと彼女の存在に気づいた。
「成悟さん!」
語尾にハートが付いてるんじゃないか、というくらいの甘えた声。
それに対して成悟さんは、いつもの仏頂面になった。
「あの……、ここを開けてもらえません?話づらいわ」
確かにこの私達が閉め出してるみたいな状況はちょっとよろしくないかな、と思い門を開けて私達が出ればいいじゃん?と思ったとき
「私、関口さんに嫌われてしまったのかしら……」
と、守谷さんがいかにも悲しげに呟いた。
え?
「成悟さん、また家まで送って下さい。お母様もまた遊びに来てね、とおっしゃってました」
戸惑った瞬間に、色々突っ込みたいことを言ってのけた。
私と忍ちゃんと2人で成悟さんに注目すると、成悟さんは私達の手を無言で掴んで、大学内部に続く道に向かってずんずん歩き出した。
「成悟さん!待って」
守谷さんが呼んでも、一言も返事をしないままだった。
「「また」ってことは、何度か彼女を家まで送ってたの?兄さん?」
しばらく進んで、中央通り付近まで来た。人通りも多くなってきたので、既に2人の手は離されてる。
ユリウス……忍ちゃんが冷たい声で、私が聞きたかったことを聞いてくれた。
「……怖くない?」
急に立ち止まって成悟さんが言った。
「今日、多喜にそのことを話そうと思って待ち合わせしたんだけど。俺、待ち合わせ場所誰にも言ってない」
空気がピシリと固まった。
「今日の昼に多喜と約束したから、決まったのは4~5時間前くらいだ。なんで、あそこに現れた?」
あの時は無意識に、通りがかりに私達を見つけたから近づいた、と思ってたけど違うの?
「兄さん、まさか―――」
忍ちゃんが言うより素早く、成悟さんは近くのベンチに持っていたカバンの中身をぶちまけた。
財布や手帳、ペンケース、本やレポートが入ってるファイルの紙類、ハンカチ、ティッシュ、キーホルダー、大学のICタグ、タブレットやコード類……。
「……。特には……?」
拍子抜けしたように呟く成悟さんに、忍ちゃんが何かに気づいたようにハッとした。
「兄さん、スマホ貸して!」
成悟さんは、スーツの胸ポケットに入れていたスマホを取り出して忍ちゃんに渡す。
「ちょっと!ロックかけてないって、ありえない!」
文句を言いながら、素早いタップで操作して、目的のモノを見つけたらしい。画面を覗き込んで「?」となった。
「なにこれ?入れた覚えない」
一見、何のアプリかわからないデザインのアイコンに、成悟さんもキョトンとしてる。
「子供用の位置情報アプリ」
忍ちゃんが言うと、成悟さんが「あー……」と、何やら覚えがあるようだった。
「前に一回、スマホ貸した。スマホを持ってないっていうし、家に電話したいからって……」
「いや、絶対スマホ持ってるでしょ。それで動きが駄々漏れしてたんだよ!!っていうか、セキュリティ甘過ぎ!ロックかけて、今すぐに!」
忍ちゃんが珍しく声を荒げてる。
「な、なんで最初荷物を確認したの?」
分かってない私が聞くと、2人は同時に答えた。
「「盗聴器でもあるかと思って」」
*****
結局、忍ちゃんも一緒にご飯を食べることになった。
私は全然かまわないんだけど、心なしか成悟さんはちょっと拗ねてるみたいに見える。
大学を出る時も、先に私と忍ちゃんが正門から出て、周りを確認してから成悟さんも出た。
更には誰から借りたのか、スーツを着替えて黒いTシャツにジーンズ、キャップまで被って学生のような格好になってた。
「これ、すごい。周りが誰も俺って気付かなかった!」
と、嬉々として喜んでるけど、本人は分かってない。
さっきから街中を歩いてるけど、振り向いてくる女性が多々いることを。
キャップを被ると頭が更に小さく見えて、頭身バランスがいいのが強調されてる。スラリと伸びた足のラインと引き締まったお尻がピッタリしたジーンズでよく分かる。
キャップを深く被って顔を隠してるのに、注目されるって、どんだけ?と、私と忍ちゃんは半目で見ていた。
レストランは成悟さんが予約してくれた、カジュアルイタリアンのお店で、わざわざ個室だった。
1人増えてもきもち良く対応してくれた店長は、恰幅のいい女性だった。
定番のカプレーゼや沢山の種類のパスタはもちろん、イタリアの家庭料理だという揚げピザや、茄子のスカルポーネ、魚介の胡椒蒸し、など充実のメニューで味もとってもおいしくて、すごくお気に入りのお店になった。
デザートに、バニラアイスにいちごトッピング更にそこにバルサミコ酢がかかっている、食べるまでは味の予想がつかないものが出てきた。
でも1口食べてみると、この3つのハーモニーが絶妙で、忍ちゃんと2人で顔を見合せて笑いあった。
成悟さんを見ると、コーヒーを飲みながら私達を見て微笑んでる。
「なに?兄さん」
忍ちゃんはもうすっかり成悟さんのことを『兄さん』と呼ぶのが普通になってる。
「いや、相変わらず妬いてしまうくらい仲良しだな、と思って」
「なにそれ」
「ローザは婚約者のダリウスより、お前に懐いてて、よくダリウスが羨ましそうにしてた」
小さい頃の思い出話のように話す成悟さんに、違和感がなかった。
「私、ローザじゃない……よ?守谷さんがローザなんでしょう?」
しばし黙った成悟さんが
「保留にしたわけを話そうか」
と、言った。
すいません。スマホアプリについてはファンタジーで。そんなに簡単にできるかー!というツッコミはご容赦下さいませ。




