15:私の知らない話3
「そろそろ戻ってくるんじゃないかな?お茶、冷めないうちにどうぞ?」
ゆったりと穏やかに話す所は前と変わってない。かつてあった、威厳や近寄りがたさは取れて、今はとってもステキないわゆるイケオジに見える。
兄さんが多喜ちゃんに全てを話す、というのを聞いて同席させてもらおうとしたら、断られた。
多喜ちゃんが心配で、終わった後でもいいから会えないかと来てみたら、すでに兄さんが送って行った後だった。
で、今、槇教授に引き留められて、研究室の教授の部屋でお茶を頂いてる……。
槇教授がグランディス王だというのは、なんとなくわかってたけど、こうして面と向かって話すのは初めて。
前世でだって、兄さんの上司…ではあったけど、直接言葉を交わしたことなんてそうそうなかった。
「君は……、ジークの弟のユリウス……なんだよねえ?」
目の前に置かれた熱い紅茶をフウフウしてる所をじっと見られた。
「はい。なぜか女性に生まれ変わってしまいましたが、ユリウスの記憶を持っています」
「ふむ。「記憶を持っている」実に正しい表現だね」
この一言で、多分、教授が私と同じことを懸念してることが分かった。
「……兄さんは……、葉山先生は「記憶を持っている」とはちょっと違うと私は思っているのですが、教授はどのように思いますか?」
思いきって聞いてみた。
「彼女に……、ローザにこだわりすぎてるから?」
「あの……、これは身内だったからこそ感じたことかもしれないんですが、実はこの傾向は前世の、ジークハルトの時もあったんです……」
こだわる、というより、もはや囚われてるような執着。
私が覚えてる限り兄さんはローザに対して、今と変わらない執着を見せていた。
過去の記憶を持っている今ならまだわかるけど、前世でもそうだった。
「確かに、彼は関口さんに出会う前から彼女をずっと求めていたね。ローザが転生していない、なんて微塵も考えてなかったようだよ。その割には出会うのを「待っていた」ように見えた」
「待っていた?」
「この現世に転生したとして、全世界のどこに転生するかわからないだろう?そんなに求めてるなら、普通なら探さないかい?効率はともかく、人通りの多い所に行く、とか何かしらのアクションをおこすのが普通じゃないか?でも彼はそんなことはなかった。出会うのが当たり前かのように、その時期を「待っていた」ように見えた」
兄さんは多喜ちゃんと出会うのが当たり前だと思っていたの?
「まあ、それを言えば私達がこうしてここで何人も巡りあってるのも、不思議な話なんだがね」
確かに。
「なんででしょう?引き寄せ合ってるの?」
引き寄せ合ってる……。
何が?
―――魂が?




