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10:レモンティー

だいぶ間があいてしまいました。


 遊園地なんて小学生ぶりくらい。

 私が激しい乗り物はダメだって言ったのに、成悟さんは私を引っ張って次々アトラクションを制覇した。

「ごめん、ごめん、はしゃぎすぎちゃった。ちょっと休もうか」

「私の顔が青白くなってることに気づいてるくせに、引っ張りまわすなんてヒドイ」

 園内のベンチにぐったり座ってジロリと睨んでやった。

「だってさ、怖がって俺にしがみついてくるの、可愛くて」

 Sですか!?

 ムッとした顔してやったのに、それを見てより笑みを深めるなんて、どういうこと!?

 飲み物を買ってくるからここで待ってて、と言われて大人しくベンチに座って休憩していた。


 ―――素直に言えば、楽しかった。

 二人きりで出掛けたのは初めてなのに、変に気を使うこともなく、すごく自然でいられた。

 元カレとの初デートでは、お互いに気を使いすぎて空回りして、緊張してたのもあるけど、楽しかったか?というと微妙だった覚えがある。

 成悟さんだとそれがない。


 思えば成悟さんに対してはいつもそうだった。

 最初の出会いはさすがにビックリしたけど、伸びてくる手が自然すぎて「避ける」とか頭より体が思ってないし、触られても嫌じゃなかった。会話が止まっても変な沈黙とかない。

 まるで、幼なじみや家族のように、自分が自然体でいられるのは楽だったし、ものすごく心地よかった。


「はい。お待たせ」

 目の前にプラスチックカップに入った琥珀色の液体を差し出された。

 成悟さんが買ってきてくれたのは、無糖のレモンティー。

「…………なんで?」

「ん?」

 成悟さんは私の隣に座り、コーヒーのブラックをふーふーしてる。

 私、成悟さんの前で無糖のレモンティーを飲んだことない。でも、実は私の好きな飲み物はこれだ。

 今までも友人や彼氏に紅茶を頼んだりしても、砂糖が入ってたり、ミルクが入ってたり、まあ、それも飲むけど、何も言ってないのにこれが出てきたのは初めてで驚いた。


「無糖のレモンティー、好きでしょ?」


 ニッコリ笑う成悟さんが、急に怖くなった。

「なんで?なんで、私がこれ好きだって知ってるの?」

 真顔で、真剣に聞いたのに、成悟さんはふふふと笑ってこう言った。

「さて、なんででしょう?それは多喜ちゃんが思い出して?」


 思い出す?

 私、なんか忘れてることあった?

「教えては……くれないの?」

 飲み終わったカップをじっと見つめた後、成悟さんはこっちを向いて聞いた。

「今日、1日一緒にいて、どうだった?」

 どう……って……。

「た、楽しかった……よ?」

 キレイな顔の真剣な眼差しから逃げられない感じがする。

「成悟さんとは、なんか、一緒にいても違和感ないっていうか。自然体でいられて、いい意味で楽だった。おかげで純粋に楽しめたよ。ありがとう」

 私が言うと、その表情がふわりと柔らかく微笑んだ。

 キレイで格好よくて優しい……、この人が私に好意を寄せて来てることが不思議でならない。


 でも、私に言わないことがあることも知ってる。

「俺のこと、少しはわかった?」

「……わからない」

「ええ?まだダメ?」

 苦笑いさえ絵になる。

「わからないから、知りたい。もっと成悟さんのこと、教えて?」

 とたんに成悟さんの顔が赤くなった。

「ちょ……、待って。なんかすごい威力でキた」

 赤くなった顔を片手で押さえて明後日の方向を向いてる。口元が何かを決心したようにぎゅっと結ばれるのをじっと見ていた。

「多喜ちゃん……、俺と付き合ってくれる?」

 こちらを向いた顔は、赤さは残ってるものの真剣な表情で、あの日を真摯にやり直してることがわかった。

「……はい。私で……よければ……」

 今度は私も逃げずに答えた。


 ふわりと暖かい温もりに包まれる。

 両腕の中、1番彼に近いスペースに閉じ込められた。

 どうして、この人に触れられるのはこんなに自然でこんなに心地いいのだろう?

 意外と厚い胸板に頭をスリスリする。

 見上げて顔を見たら、ものすごく極上の笑顔があった。

「多喜ちゃん、ありがとう。すごく嬉しい!絶対、大切にする!」

 こんなストレートな、普通なら恥ずかしい言葉を、なんのてらいもなく言ってのける成悟さんが好きだ。

 まだわからないこともいっぱいだけど、そのことだけは、私も素直に思えた。


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