表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/46

1:絶対間違いです

新しいお話をスタートしました!

今回はがっつりラブコメを目指します♪

「あのっ!以前からお慕いしていました。どうか私と付き合って下さい!」


 桜の花びらがハラハラ散る、大学の入学式終了後、古くて大きな講堂を出た所で後ろから腕を捕まれ、そう言われた。


 怖い怖い怖い怖い怖いー!!

 振り返るより先に恐怖が走る。

 だって、私は地方出身。地元からこの都会の大学に来たのは私だけのはず。

 なのにこの人は「以前から」と言った。

 ありえない。

 ストーカー?いやいやそれは自意識過剰。しかもこっちに越してきてまだ半月だ。

 この場合の可能性が高いのは、アレだ。


「あの、人違いで……」


 振り返って、そう言いかけてその人の顔を見たら、止まってしまった。

 そこにはものすごく整った顔をしたグレーのスーツの男性がいた。

 柔らかそうな明るめの茶色の髪がふわふわしてる。でもその下の眉毛は男らしくちょっと太めで、切れ長の瞳は不安そうに揺れてる。背も高く、人の顔を見るのにこんなに首を傾けたことない。まあ、私が女性の平均身長より低いっていうのもあるけど。

 そして、顔の造形の次に目に入ったのは、首からぶら下げている、オレンジの紐のIDカードホルダー。それはこの大学の教員を示すものだ。


 講堂からゾロゾロ出てくる他の新入生達にめちゃくちゃ見られてる。

「葉山先生!」

 新入生をかき分けながら近づいてきたのは、白衣を着て、メガネをかけて髪を無造作に1つ結びにしたリケジョっぽい女性。

 オレンジの紐でこの人も教師だとわかる。


 イケメン教師がそちらに気を取られてる瞬間に、腕を振り払って走った。

「あっ……!待って……」

 声がしたもののシカトして、まだゾロゾロ出てくる新入生の波に紛れた。


 *****


「ねぇ、ねぇ、貴方って入学式の時に葉山先生に告られてた子だよねぇ?」

「ひぃっ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」


 いつもなら、講義が終わったら速攻教室を出て、大学の中でも人気のない、寂れたハーブガーデンの奥のベンチに行くのが、今日に限ってドア付近の席を取りそこね、スタートダッシュが遅れたら捕まった。


「? なんで謝る?あ、そっか。もうすでにこの手の質問は嫌っちゅーほどされてるのか。こっちこそ、ごめん」

 謝ったら謝られた。

 声をかけてきた人を改めてよく見てみると、大きなくりっとした瞳をキラキラさせた、もんのすごい美少女だった。色白で唇はぷるっと肉厚。肩下までのゆるくパーマをかけている髪で縁取られた顔は、お人形みたいにかわいらしかった。

「この授業、同じなのに話したのは初めてだね。私、新庄 忍(しんじょう しのぶ)

 顔はお人形さんみたいだけど、名前は男性みたい、と失礼なことを思った。

「あ……、関口 多喜(せきぐち たき)です……」

「ね?お昼一緒に食べない?お弁当?いつもすぐいなくなっちゃって、お昼どうしてんの?って、思ってたんだよ」

 顔のわりに砕けたしゃべり方で、ちょっと警戒心が薄れた。



 そう。彼女が言うように、入学式の後から私はちょっとした有名人になってしまったのだ。

 あんな公の場で、しかも教師からの公開告白もありえないのに加え、あの葉山先生とやらが、実は大学でも1、2を争うイケメン独身教師で、女生徒はもちろん女性教員にもモテモテの、この大学の王子様だったらしい……。


「で?事実確認やら、その後どうなったかとかで、入学式からこっちずっと質問責めにあってたんだ……」

「うう、そうなんです……」

「確かにねぇ。あんな盛大な告白見ちゃったら、物語じゃないけど続きが気になるよ。って、私も聞いちゃったけれども!元々葉山先生のファンなら尚更……だよね……」

 あまり人が多い所は困る、と私が言ったので二人して大学の外のコンビニで買ったお昼を持って、さらに歩いてちょっと遠めの公園まで来た。さすがにここまで来ると大学生っぽい人はおらず、昼時は子供達もいない。

 たまにお年寄りが散歩してるくらいで、ベンチに座って二人で買ってきたおにぎりを食べた。


「っていうか、絶対人違いなんです!だって、私、葉山先生に会ったのはあれが初めてだし、ずっと田舎暮らしで都会(こっち)に来たのも入学式の半月前だったんですよ!?」

「うんうん。多喜ちゃん、私達同じ歳だし、敬語じゃなくていーよ?私のことも「忍」って呼んで?」

 シャケのおにぎりをモグモグさせながら、美少女にそんなことを言われたら、もう従うしかない。

「し……、忍ちゃん……?」

「多喜ちゃん!」

 二人で名前を呼びあって、ウフフと笑いあった。

 そうして忍ちゃんは、大学での初めての友達になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ