表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第3章 予知夢に集う者たち
42/1700

第41話 中国の山は危険がいっぱい?

 武功寺を目指す日向とシャオラン。

 その行く手を阻むように、小さいキノコのマモノが飛び出してきた。

 その数、三体。


「ぎやああああああ!? ば、化け物だああああああ!?」


 シャオランが怯えきった声を上げる。

 そんなシャオランに、日向は尋ねた。


「一応聞くけど、元々こんなのはこの山にはいなかったんだよね?」


「いるわけないよ! というか、地球のどこにも存在しないと思うよ!」


 返事をするシャオラン。

 しかし、現に目の前のマモノはそこに存在している。

 二人への敵意を剥き出しにして、だ。


 そのキノコのマモノは、こちらの膝ほどの背丈で、腕や顔は無い。

 オーソドックスな赤い傘のキノコに足が生えたような風貌だ。

 ちょこちょこいそいそと歩き回り、妙な愛嬌がある。


「とりあえず、キノコのマモノだから『マニッシュ』と名付けよう」


「マニッシュ?」


「マッシュルームを良い感じにもじって、マモノっぽい名前にしてみた。いちいち『キノコのマモノ』なんて呼ぶの、面倒だからね」


「そんな可愛らしい名前じゃ、危険度が伝わらないよ! もっとこう、『アルティメットデンジャラスマジックマッシュルーム』みたいな、いかにもヤバそうな名前にしないと……」


「却下で」


「なんで!?」


「長すぎる」


 さて、雑談もここまでである。

 三匹のマニッシュは、今にも二人に飛びかからんとしている。

 戦う前に、日向はシャオランに声をかける。


「シャオランは下がっててくれ! マモノは危険だ。俺が相手をする!」


「はい喜んで!」


「うーん、下がってって言ったのは俺だけど、何だろうこのやるせなさ」


 そんな日向の思いを余所に、戦闘は開始された。


 一体のマニッシュが、日向に近づいてくる。

 そして、赤い傘を彼に向けて、飛びかかってきた。


「予想通りっ!」


 言いながら、飛んできたマニッシュ目掛けて剣を振り下ろす。

 マニッシュはあっけなく真っ二つになった。


(思った通りの攻撃パターンだ。キノコのモンスターの攻撃は頭突きだと、昔から相場が決まってるんだ。攻撃パターンが読めれば、俺でも多少はやり合える!)


 日向は、続く二体目、三体目も同じようにやっつけた。

 剣を下ろし、息を整える。


「凄いよヒューガ! さすがマモノ退治の専門家!」


「い、いや、これくらい、俺じゃなくても誰だって……」


 日向は真正面から褒めちぎられて、思わず戸惑ってしまう。


 しかし、そんな和やかな雰囲気も一瞬で消し飛ぶ。

 近くの茂みが、ガサゴソと揺れた。

 

「何だ? まだマニッシュが残っていたのか?」


 再び剣を持ち上げ、構える日向。

 茂みから出てきたのは、一匹の虎だった。

 見たところ、これといって異常な部分は無い。

 つまりマモノではない。普通の、野生の虎だ。



「なんだ、普通の虎かぁ」





「……普通の虎」



「……普通の虎?」



「…………普通の虎ぁ!?

 ちょ、おま、絶対マニッシュよりやばい奴じゃんかぁぁ!?」


 事態の危険性を察知し、後ずさる日向。

 この虎はマモノではないが、日向は勝てる気がまったくしなかった。


「ガルルルルル……」


 虎は日向を見るなり、牙を剥き、唸り声を上げる。

 あれはメインディッシュを見つけた時の顔だ。


「ひ、ヒューガ……」


 シャオランが心配そうな顔で日向を見ている。

 膝はガクガクと震え、涙目になっている。

 

(何とか、シャオランだけは守らないと……)


 そう思案し、剣を構える日向。

 だが、日向もまた虎に対して怯え、及び腰になってしまっている。

 無理もない。相手は猛獣の代名詞のような存在なのだから。

 

「ガァァァァァッ!!」

「うおおおおおおお!?」


 虎が日向に飛びかかってくる。

 足がすくみ、日向はその場から動けなかった。

 結果、日向は虎に押し倒され、身体を押さえつけられる。


「ガァッ!!」

「ひぇ!?」


 日向の顔目掛けて迫ってきた牙を、思いっきり顔を逸らすことで何とか避ける。そのまま何とか虎の身体の下から脱出しようとするも、あまりの重さにビクともしない。

 

「だったら、これはどうだ!」


 日向は右手に持っていた剣を、虎に押し付けた。


「ガァァ!?」


 虎が短い悲鳴を上げる。

 日向の剣は、彼以外の者が触れば熱を発する。

 押さえつけられたままでは剣は満足に振り回せないが、こうやって反撃することもできる。


(このままコイツを退かしてやる……!)


 しかしその反撃は、虎を少し怯ませるだけで終わった。

 虎は、剣を持つ日向の右腕を、左前足で押さえつける。


「あっ!?」


 ささやかな反撃すら封じられ、もはや日向に成す術無し。

 

(ああ、終わった……死んだ……)


 日向は、もう何度目かになる死を覚悟した。




 一方、シャオランは。


(あ、ああ、どうしよう、ヒューガが食べられちゃう……! も、もう怖がってる場合じゃない! ぼ、ボクが何とかしないと! 覚悟完了、よし行くぞ……!)


 シャオランが、スゥー……と息を吸い込んだ。

 そして……。


「ひ、ヒューガを放せぇぇぇ!!」


 あろうことか、シャオランが虎に向かって走り出した。

 手には何も持っていない。素手だ。

 素手で虎に立ち向かおうとしている。


「し、シャオラン! 駄目だ、危ない!」


 丸腰で虎と戦おうなど、無茶だ。

 日向は必死に叫んで、シャオランを止める。

 だがシャオランは日向の静止に耳も貸さず、虎に接近し……。


「ふッ!!」


 ズシンと、左脚を踏み込んだ。


 シャオランが踏みつけたのは、アスファルトの道路でも、板張りの床でもない。何の変哲もない、山の中の腐葉土だ。思い切り踏みつけても、その衝撃は柔らかい土に吸収され、周囲に反響することはない。

 ……にも関わらず、シャオランの近くで虎に抑え込まれていた日向は、身体の芯まで響くような振動を感じた。それほど強烈な踏み込みだった。


「……はぁッ!!」


 そのまま右足を踏み込み、掌底を突き出すシャオラン。

 それが虎の脇腹に突き刺さった瞬間、虎の身体が浮いた。

 いや、浮いたというか、吹っ飛んだ。虎が。


 吹っ飛ばされた虎は、その先の木に激突。

 ドサリと地面に落下した。

 そして、ギロリとシャオランを睨みつける。


「あ、あわわわわわわわ……! ぼ、ボクなんか食べてもおいしくないぞー! ほ、ホントだぞー! だから帰ってくださいお願いします許してぇぇぇ!」


「グ……グルルル……」


 シャオランの拳は、相当効いたのだろう。

 虎は、(ひざ)をガクガクと震わせ、足を引きずりながら逃げていった。


「……ああああああ怖かったああああああ」


 シャオランもまた、膝を震わせながらその場に座り込んでしまった。

 そして、傍に倒れていた日向に声をかけた。


「……あ、ヒューガ、大丈夫だった……?」


「あ、はい。大丈夫でございます?」


「な、なんで疑問形で敬語なの……?」



 日向は、傷が焼かれる痛みも忘れるほど、唖然としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>『アルティメットデンジャラスマジックマッシュルーム』みたいな、いかにもヤバそうな名前にしないと トードストールからとってトーストというのは(ォィ でもってなんでトラが!? まさかキノコに脳みそでも…
[良い点] シャオランの踏み込みからの掌底! これ、まさか、拳○のやつですか⁉️
[良い点] ついにシャオランくんの強さが判明しましたねっ! 見た目が可愛らしいだけにインパクトが半端ないっ! これは人気が出るのも当たり前ですわー*\(^o^)/* それにしても日向くんが虎に襲われる…
2021/07/31 23:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ