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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第3章 予知夢に集う者たち
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第40話 病を止める

 日向がシャオランの家に寝泊まりした次の日。


「ハオラン! しっかりして、ハオラン!」


「う……ううん……」


 シャオランの、ハオランを呼ぶ声で、近くにいた日向も目が覚めた。何やらただ事ではない様子だ。


「うーん……シャオラン、どうしたんだ……?」


「あ、ヒューガ……起こしてゴメン。けど、ハオランがキノコ病に……!」


「なんだって……!?」


 その一言で、日向も眠気から覚醒する。

 見れば、ハオランの右肩にびっしりと例のキノコが生えていた。



◆     ◆     ◆



 シャオランと彼の両親は、急いでハオランを診療所に連れて行った。

 日向も一緒についていった。


 ハオランは、シャオランと違って、元々体力がない。

 だから、このままだと危ないかもしれない、と医者から宣告された。

 

 ハオランは彼の両親に任せ、日向とシャオランは診療所を後にした。


「くそ……キノコ病の被害は広まる一方だ。このままじゃあ街が全滅するぞ……」


「も、もう駄目だぁ、おしまいだぁ……次はきっとボクの番だぁ……」


「気をしっかり持って、シャオラン。病は気から、だぞ」


「怖がることもできないなんて……世も末だ……」


 シャオランを励ましつつ、日向は思案する。


 これほどの被害をもたらすマモノときたら、まず間違いなく『星の牙』だろう。倉間から『星の牙』の情報を聞いた今の日向なら分かる。


 シャオランの師匠とやらは相当な強さらしいが、少し武道をかじっている人間が、果たして超常の怪物を相手にどこまで戦えるのか。いや、そもそも勝てるのか。

 

(もう、シャオランの師匠を待っている余裕はない。俺が行って、片付ける)


 日向の剣は、『星の牙』に対してよく効くらしい。

 そして日向には”再生の炎”がある。


 果たして日向一人でどれほど『星の牙』に対抗できるかは分からないが、再生能力にモノを言わせれば無理やりにでも勝てるかもしれない。

 

 一人でも戦いに行くと決めた日向は、シャオランに声をかけた。


「シャオラン。俺は武功寺に行って、例のキノコのマモノを退治しようと思う。武功寺にはどうやって行けばいい?」


「え!? 嘘でしょヒューガ!? 危険だよ!」


「けど、これ以上被害を拡大させるワケにはいかないだろ? 俺には一応、戦える力がある。だったら、行かないと」


「うぐぐ、分かったよ、教えるよ……」


 そう言って、シャオランは町の奥に向かって歩いていく。

 その先には高くそびえ立つ山が見える。

 あの上に武功寺があるのだろう。



 しかし、その山の入り口は、軍人のような恰好をした者たちに封鎖されていた。


「なんだアイツら? 昨日まではいなかったよな?」


「分からない……。装備も、普通の中国軍とは違うように見えるよ」



 彼らが現れた可能性で考えられるのは、やはりマモノ関連だろう。おおかた、マモノを倒すために国から派遣された特殊部隊といったところか。

 物々しい雰囲気だ。日向が「マモノ退治に行きたい」と言っても、通してくれそうには見えない。


「彼らにマモノを任せるって手も、あるにはあるか……」


「そうしよう。絶対そうした方がいいよ。うんうん、今日はもう帰ろう」


「いや、『星の牙』の生命力は尋常じゃないらしいんだ。ミサイルを撃ち込んでも死なないやつとかいるらしいし、下手な軍隊じゃ勝てないかも……」


「じゃあ絶対生身でも無理じゃん!」


「そこで俺の剣だよ。アレは『星の牙』によく効くらしいから」


「そ、そんな非現実的な……!」


「マモノの存在自体が、もう非現実的だし、今さらマモノ殺しの剣が出てきても不思議じゃないでしょ。……さて、シャオラン。あの入り口以外に、武功寺に行ける場所はある?」


「諦める気は無いんだね……。一応、あるにはあるけど……」


 そう言ってシャオランは、正面の登山口を大きく迂回する。

 日向もそれについて行く。


 しばらく進み、町を離れ、山の側面あたりまで回り込む。

 すると、目の前に切り立った崖がそびえ立っているのを発見した。


「この崖の上から武功寺に続く道に合流できるよ」


「いやいやいやいやいや……」


 シャオランは軽く言うが、目の前の崖はどう見ても高さ15メートル近くはある。


 因みに、日本では「ビル3階分の高さ」といった例えを聞くが、ビルの1階はおよそ3メートルくらいだとか。つまり目の前の崖はビル5階分。スペ〇ンカー先生なら10回以上は死ぬだろう。


 日向は、試しに崖の一部に手をかけてみる。

 少し身体を引き上げて、そこからズザザザザ、とずり落ちた。


「無理だわ」


「ヒューガって、意外と身体は弱い方なの……?」


「シャオラン、俺は確かに『星の牙』を倒せる力があるって言ったけど、身体能力はゴミなんだ。こんな崖を上りきれる体力は無いんだよ……」


「そ、そっかぁ。じゃあやっぱり諦めて帰ろう?」


「……俺は、諦めたくない」


「ヒューガ……でも……」


「ここで諦めたら、次はシャオランの両親がキノコ病にやられるかもしれないだろ? あるいは、本当にシャオランがやられるかも……」


「う……」


「そんなことにはさせたくない。一刻も早く、キノコ病を止めたい。素手で上るのが無理なら、街から何か道具を探して……」


「……はぁ、分かったよ……。ちょっと待っててね……」


「え?」


 待ってて、と言ったシャオランは、スゥー……と息を吸い始める。

 これは、本堂を運ぶときにも見せた、あの呼吸だ。

 彼の身体の周りに、砂色のオーラが漂い始める。


 息を吸い終えると、シャオランはヒョイヒョイと崖を登り始めた。

 そして、あっという間に頂上まで登りきってしまう。


 その様子を唖然として眺める日向。

 間もなく、上からロープが降ってきた。

 崖の上からシャオランの声が聞こえる。


「ここは武功寺の修業にもよく使われてるんだ。さぁ、そのロープに掴まって!」


 シャオランに言われ、日向はロープにしがみつく。

 すると、グイグイと日向ごとロープが引っ張り上げられ、あっという間に崖の上に到着した。


「す、すごいね、シャオラン……。そんな怪力持ちだったとは……」


「まぁ、いちおう鍛えてるから……。それより、ここから先は獣道だよ。案内が無いと迷うかもしれない。ボクについてきて」


「シャオラン……なんでいきなり、そんなにやる気に?」


「だって、ボクの家族のため、とか言われたら、協力しないワケにはいかないでしょ……。ひいては、ボクがキノコ病にやられない為でもあるし……」


「……ははは、シャオランらしいや」


「う、うるさいなぁ。ほら、早く行くよ」


「分かったよ。あ、その前に……剣よ、来い!」


 日向は念じ、例の剣を手元に呼び寄せる。

 いつものように彼の手のひらで火柱が上がり、それが剣の形になった。


「あぁ良かった。海外でもちゃんと来てくれたよ。……ん? どしたのシャオラン。ひっくり返っちゃって」


「も、もう! び、びっくりしたんだよ! いきなり炎が『ボウッ』って出るんだもん!」


「あ、ああ、なんかゴメン……」


「ま、まぁいいよ。それで、それが『星の牙』を倒すっていう剣なの?」


「ああ、その通り。これが『星の牙』を倒す剣だよ。……さて、準備も整ったし、改めて行こうか!」


「お、おぉー!」



 二人は武功寺を目指して、道なき道を歩き始めた。  

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― 新着の感想 ―
シャオランはシャオランでオーラの防壁とか無意識に使ってそうな予感がするぜ。 にしてもねぇ……とりあえずパルクールができるくらいの身体能力は欲しいところやねぇ。
[良い点] この二人、良いコンビかも。 特に女性人気が高そうです(笑)
[良い点] シャオランくん、カッコイイ……! 日向くん、自分をゴミって言っちゃダメですよ!(笑) ハオランくんも他のみんなも助かりますように……!
2021/07/30 05:35 退会済み
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