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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第1章 空から落ちてきたものは
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第4話 初戦闘 謎の人影と氷の爪牙

 日下部日向の目の前にいるのは、謎の黒い人影。

 顔も真っ黒、身体も真っ黒、服や靴さえも吸い込まれるような真っ黒。

 そして、その右手には剣が握られている。


「な……何だこいつ……?」


 その人影は、持っている剣を振りかぶると、日向に向かって斬りかかってきた。


「う、うわわわっ!?」


 日向は咄嗟に持っていた剣を構えて、人影の攻撃を受け止める。

 金属同士がぶつかり合う音がこだまする。


「こ、このっ! 何するんだ!」


 そう叫びながら、剣を横薙ぎに払う。しかし……。


「お、重い……!」


 実際に振ってみると、剣の重量は相当なものだった。

 ちゃんと構えずに放った斬撃は、完全に速度が死んでしまう。

 人影は後ろに下がって難なくそれを避けた。


「くそ、舐めるな!」


 今度は剣を縦に構えて振りかぶる。

 しっかり構えた一撃、体幹も剣の重量に負けていない。

 正しく威力の乗った、重量感のある斬撃を繰り出した。


 対する人影も、剣を振りかぶり、縦に振り下ろす。

 ガギンと音を上げ、お互いの剣が衝突する。

 そのまま鍔迫り合いに持ち込むが、人影はビクともせず、しかし日向も押し返されない。


「力は互角か……。だったら技で……!」


 日向は後ろに下がる。

 影が剣を振りかぶり追撃してくる。


 日向は人影を迎え撃つべく、剣を構える。

 人影の縦斬りを躱し、空いた胴体を真っ二つにしてやろうという算段だ。


「剣道でいうところの抜き胴ってやつだ。この縦斬りに合わせて横斬りを叩き込む!」


 日向は中学の時、剣道をやっていた。剣の扱いには多少心得がある。


(まぁ、中学2年生の時、途中で辞めたんだけどね……)


 人影が日向の目の前まで迫り、剣を振り上げる。

 日向はそれに合わせて人影の側面に回り込み、剣を横向きに構える。

 この人影の振り下ろしを回避しつつ、胴体をぶった切る……。


 だが、人影は日向と同じ方向に跳び出し、日向と同じく剣を横向きに構えた。

 日向の抜き胴に対して、人影が狙っていたのも抜き胴だった。


「ウッソだろ!?」


 日向ももはや急には止まれない。このままでは相討ちだ。

 

(や、やばい、斬られる……!)


 それを防ぐため、人影に向かって身体ごと衝突するように剣をぶつける日向。人影も剣を構えてそれを防御し、再びお互い距離を取る。咄嗟の判断だったが、何とか日向は無傷で済んだ。


「こ、こいつ……。さっきから俺の動きに合わせてばっかり……」


 ふと、目の前の人影を観察する。

 前かがみになって剣を構える姿はこちらと同じ。

 背格好もこちらとそっくり。

 髪型を含めたシルエットも、自分とよく似ている。


「……まさかこいつ、俺の影なのか?」


 日向がそう思ったその時、近くの茂みが不意にガサガサと音を上げる。

 そして、五匹の白い狼が現れた。


「お、狼? しかも真っ白。何でこんなところに……?」


「ガルルル……!」


 狼は牙を剥きだしにして唸り、こちらを威嚇している。

 明らかな敵意を感じる。


 すると目の前の人影は、いきなり狼の群れに斬りかかった。

 人影が先頭の狼に向けて剣を振り下ろす。

 ギャウン、と悲鳴を上げて一匹の狼が絶命した。


「ギャンッ!?」


「な、何やってるんだ、アイツ……?」


 人影と狼の群れはそのまま、戦いながら茂みの奥に消えていった。


「……ええと、どうしようか、この状況……」


「バウッ! バウッ!」


「うわ、また出た!?」


 人影と狼たちが入っていった茂みが再び音を上げ、二匹の白い狼が目の前に現れた。


 先ほどの群れが戻ってきたのか、それとも別の個体なのか。ともかく、二匹の狼は一声鳴くと、日向に向かって襲い掛かってきた。


「うわっ!? く、来るな!」


 咄嗟に剣を振り回し、一匹の狼を迎撃する。

 剣の刃はうまい具合に狼を捉え、その身体を吹っ飛ばし、狼は動かなくなった。


 しかしその隙を突いて、もう一匹が側面に回り込み、飛びかかる。


「ガウッ!!」

「うわっとぉ!?」


 狼の体当たりを受け、日向は地面に押し倒される。

 日向に飛び乗った狼は、バリバリと胸に爪を立て、首筋に食らいつこうとする。


「い、痛たたた! くそ、やめろ! この!」

「ガルルルルルッ!!」


 爪を立てられた部分が痛むと同時に、ひどく冷える。

 例えるなら、氷のナイフで斬りつけられたかのようだ。


 白狼の牙が日向に迫ってくる。

 その牙を見て、日向は驚愕の表情を浮かべる。

 狼の牙が、まるで氷のように蒼く透き通っているのだ。

 いや、見れば見るほど、それはまさしく「氷の牙」だ。


(な……なんだコイツ……普通の狼じゃない……!?)


 ……だが、今は考えている場合ではない。

 その蒼い牙が、今にも日向の喉笛を食いちぎらんとしているのだから。


 迫る牙を剣で防ぎ、狼を押し返そうとする。

 すると、剣を押し当てられた狼がキャン、と悲鳴を上げ、怯んだ。

 ダメージを与えるほど強い力で押し返したワケではない。

 なぜ狼が怯んだのかは分からないが、とにかくチャンスだった。


 日向は一気に狼を押し退け、立ち上がる。

 再び狼が飛びかかってくる。


「そこだぁ!!」


 反射的に、剣を思いっきり振り抜いた。

 刀身は見事に狼を捉え、その命を断ち切った。

 振り抜いた剣の勢いは止まらず、切っ先がズシンと土にめり込んだ。



「お、終わった……?」


 日向は剣を杖にして、息を整える。

 すると、再び近くの茂みがガサガサと音を立てる。


「こ、今度は何なんだ……?」


 突き立てていた剣を持ち上げ、構える。

 ひょこっと茂みから顔を出したのは、一人の少女だった。


「あ、ここにいたんだね、日下部くん」


「……はい? 北園さん? 何でこんなところに?」


 現れたのは、日向のクラスメイトで、学校で日向に「剣を持ってないか」と質問してきた少女、北園良乃きたぞのよしのだった。



 北園は日向をまじまじと見つめたあと、


「あ……やっぱり、持ってたんだね! その剣!」


 と、叫んだのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] むぅ、まさかあの影の使う技は千日颮鏡(違 それはともかく謎の狼まで。 いったいどんな勢力図があるんですかね(;'∀') いやそれ以前に影はどこ行った(ォィ
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