第32話 激闘、ロックワーム
「うおおおおおおおお!!」
叫びながら、再びロックワームの胴体に接近し、剣を振るう。
一回、二回、三回、四回、五回、六回、七回、八回。
斬って斬って斬りまくる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
たまらず、ロックワームは日向に向かって尻尾を振るった。
「ぐっ!?」
日向は攻撃に夢中になるあまり、薙ぎ払われた巨大な尻尾をまともに受けてしまう。大型乗用車が衝突してきたかのような衝撃で大きく吹っ飛ばされ、そのままボールのように地面を転がり、倒れた。
「超能力の嬢ちゃん! 電気の兄ちゃん! 日向が斬りつけた場所を狙え! あそこはもう甲殻に守られていない! 十分に攻撃が通用するはずだ!」
「り、りょーかいです!」
「承知した」
倉間の声に、北園と本堂が返事をする。
そして、ロックワームに向かって走り出す。
「……いくら生き返るからって、とうとう声すらかけてもらえなくなった」
言いながら日向は立ち上がり、落とした剣を拾い上げる。
傷は既に”再生の炎”によって焼き払われていた。
そして、三人の後を追ってロックワーム目掛けて走り出す。
「ガアアアアアアアッ!!」
手負いとなったロックワームは、さらに激しく暴れ出す。
そのロックワームに銃弾を放ち、倉間が注意を引く。
ロックワームの意識が逸れたところに、北園と本堂が、傷ついたロックワームの身体目掛けて電撃を浴びせる。身体から流れ出た血を伝って、電撃がロックワームの体内を焼く。
「グアアアアアアアアッ!?」
悲鳴を上げるロックワーム。
そこへ日向が叫びながら突撃する。
そして、ロックワームの身体に深々と剣を突き刺した。
「うおおおおおおおおっ!!」
「ガアアアアアアアアアアアッ!?」
一段と大きな悲鳴を上げ、身を翻し、ロックワームは地面に潜った。
「あ、逃げた!?」
途端、辺りが静寂に包まれる。
ロックワームはまだいるのか、それともどこかに逃げたのか。
推し量る手立てを、四人は持っていない。
(どこだ。ヤツはどこに行った?)
周囲を警戒する四人。そこに……。
「皆さん! 大丈夫ですか!?」
誰かの声が聞こえる。
見ると、神社の入り口から警官が数人近づいてきている。
恐らく、このマモノの出現を受け、誰かが警察に通報したのだろう。
その時。
「ゴアアアアアアアアアアッ!!」
「わ、うわああああああっ!?」
突如、警官たちの足元からロックワームが飛び出してきた。
警官たちは成す術無く宙に打ち上げられる。
そしてロックワームは再び地中に潜った。
「た、大変!」
警官たちを治療しようと、北園が走り寄っていく。
その時、地面が盛り上がりながら北園に接近してきた。
「や、ヤバい! 北園さん、避けろーっ!!」
「え? え!?」
気づいた時には、北園は宙に打ち上げられていた。
何の抵抗もできず、どしゃりと地面に叩きつけられる。
「う、うう……」
「北園! 大丈夫か!?」
「本堂さん、動いちゃダメだ!」
北園を助け起こそうとした本堂を、日向が反射的に呼び止めた。
「む。……何か、ワケがあるのか?」
日向の、マモノに対する推察力は侮れない。
そう思い、本堂はすぐに足を止め、日向に尋ねる。
「今、思いついたんです。……地面を潜る怪物。そういう奴らは多くの場合、『音』を頼りにこちらの動きを探ってくるんです。地面の上で動く音を……!」
「音か……なるほどな」
日向の推測は、恐らく正しかったのだろう。皆が物音を立てないよう、ジッとしていると、ロックワームの襲撃が止まった。とりあえず、最悪の状況は免れたと言っていい。
しかしいつまでもこうしているわけにはいかない。あまり動かずにいたら、ロックワームも当てずっぽうで、北園たちがいる場所を攻撃し始めるかもしれない。
(ここはやはり、死んでも死なない俺が注意を引かないと!)
日向は地面に剣をガンガンと叩きつけながら声を張り上げる。
先ほどから、ロックワームは日向たちの足元から強襲してくる。だから、足元から出来てたところに剣を思いっきり突き刺してやろうという算段だった。
「おらー蟲野郎! ここにおいしいエサがいるぞー! 生きの良いエサだぞー!」
日向が叫ぶ。
すると……。
「ガアアアアアアアアッ!!」
ロックワームが、日向目掛けて地中から飛びかかってきた。
大口を開けて迫ってくるロックワームに、日向は思わず固まってしまう。
(……あら? 正面から来るの……? 真下じゃなくて……? 真下から来たところに剣を突き刺すつもりだったんだけど……んー、どうしようかなー)
飛びかかってくるロックワームを見ながら、途方に暮れる日向。
ロックワームの予想外の動きに、固まってしまう。
ロックワームの牙が迫る。もう目と鼻の先だ。
「……ええい! 死なばもろともぉ!!」
ロックワーム目掛けて、日向は真っ直ぐ剣を突き出す。
ロックワームの大顎が、岩のように巨大な牙が、日向に覆いかぶさる。
果たして突き出された剣は、ロックワームの上顎を貫いた。
「ガアアアアアアアアアアアッ!? ガアアッ、ガアアアアアアアッ!?」
「ぐあっ!?」
ロックワームは、もんどり打って倒れ、地面を転げまわる。
上顎には、日向の剣が突き刺さったままだ。
暴れるたびに、ビタンビタンと、長い体が周囲に叩きつけられる。
日向はロックワームとの正面衝突を受けて吹っ飛ばされ、地面に倒れていた。
”再生の炎”が身体を焼き、動けそうにない。
「だったら、トドメは俺に任せろ!」
叫び、倉間がロックワームの口元に近づく。
そして一瞬の隙を突き、ロックワームの上顎に突き刺さった剣を手に取り、そのままロックワームの口内を抉った。
「ガアアアアア…………アア……ア…」
ビクンと一回、身体を震わせ、ロックワームは動かなくなった。
「……熱っちぃ!?」
そして剣が発する熱に気づき、倉間は大慌てで剣から手を離した。
途端、静寂が場を支配した。
戦いの音を立てる者は、もういない。
「か、勝った……?」
日向は動かなくなったロックワームを見ながら、誰に向けるでもなく呟いた。
「どうやら、そのようだな」
その呟きに答えるように、本堂が歩み寄りながら口を開く。
「勝った……勝ったぁ!!」
北園が飛び跳ねながら、勝利の喜びを全身で表現する。
「……どうなってるんだ? ロックワームが、こんなにあっさりと……」
そんな中、倉間はロックワームの亡骸を見ながら呟いた。ロックワームを相手に、生身の人間四人で勝ててしまったのが信じられない、といった様子だ。
ミストリッパーの時は、アレの生命力が他の『星の牙』と比べて多少低かったからだと予想した。しかし、このロックワームの生命力について、倉間はよく知っているはずだった。
戦車の主砲32発、ミサイル13発、機銃の集中砲火3000発以上。それが、以前倒されたロックワームに使われた兵装の内訳である。他の『星の牙』と比較しても、驚異的な生命力をロックワームは誇っている、はずだった。
これに勝るほどの火力を彼らが見せた様子は無かった。
しかし目の前のロックワームは、間違いなく死んでいる。
『星の牙』を問答無用で死に至らしめる何かが、彼らの中にある。
「まあ、考えるまでもなく、コイツの仕業だろうな……」
倉間は、ロックワームの上顎に突き刺さった日向の剣を見つめ、呟いた。




