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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第8章 先を生きる者 その生にならう者
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第233話 虫マンション探索

 引き続き、虫の巣と化した廃マンションを探索する日影たち三人。


 マンションは個室、通路内に至るまで、異常な量の植物に覆われ、一面中が緑で彩られているが、どうやらこの植物自体は普通のシダ植物、あるいはツタ植物のようだ。


「本当にでっけー植物の中にいるみたいだな。どうしてこうなった?」


『マンション内にいる虫のマモノたちの仕業なんだろうけど、詳細は不明だね。自分たちが住みやすい環境づくりでもしていたのかな?』


『……あるいは、マモノって、人間から生活圏を取り戻して自然に還すことを目的としているみたいだから、このマンションを自然で覆ったのもその一環なのかも……』


『……ふむ、なるほど。良い意見だ、日向くん』


「どうやら、噂に違わぬ鋭い眼力を持っているらしい」


「やっぱり日向くんはすごいんだよ!」


『ほ、誉められすぎてむずがゆい……!』


「へっ、有難く受け取っとけよ。待ち望んでいた、他者からの称賛だぜ?」


 歓談に花を咲かせつつも、三人は道中の警戒を怠らない。実際、途中途中で虫のマモノたちの襲撃を受けている。個室のドアをぶち破り、ダンガンオオカブトやホワイトリッパーなどが不意打ちを仕掛けてくるのだ。


 だが、そのことごとくを日影と本堂が返り討ちにする。

 日影は研ぎ澄まされた直感で、本堂は類稀たぐいまれなる反射神経で、それぞれ虫たちの不意打ちを阻止していく。


「やるじゃねぇか本堂。こうなったら、どっちが多くマモノを仕留めるか競争するか?」


「いや、やめておこう。それがマモノに足をすくわれる要因になりかねん」


「ちぇっ、真面目な奴だぜ。

 …………いや、前言撤回だ。ふざけてる方が多いよなお前」


「心外だ」


 途中、先ほどは手こずらされたブラッドシザーも襲い掛かってきた。相変わらず衛星カメラの眼から逃れ、マップから反応を消しているが、それでも完全ではない。やはり時々、反応が復活することがある。それを日向が見逃さず、ブラッドシザーが潜む場所を三人に伝える。


『俺は戦闘に参加しないぶん、マップの反応に集中できる。絶対に見逃さないぞ』


「なるほど、こういう時、オペレーターというのは頼りになるな」


「戦いに集中すると、どうしてもマップから目を放しがちになっちゃうもんねー」


 いざブラッドシザーと戦闘になっても、前回のように手こずることはなかった。相手の戦法、耐久力が正確に測れた今ならば、油断なく仕留めることができる。


「さっきはちょいと面食らっちまったけど、もう楽勝だな!」


『死亡フラグいただきました』


「言うなよ。言ったら本当にフラグになっちまうだろーが」


「フラグ……旗……? 一体どういう意味なのだろうか?」


『……本堂さんって、勉強は本当にできるのに、ネット用語とかサブカルチャーに関しては致命的に欠落してますよね……。普通、そうなります? いくら勉強第一の秀才と言えど、今どきの若者でしょう? パソコンとかあまり使わない人間なんです?』


「なにせこの体質になってから、しばらくは電気製品には触れなかったからな。スマホやパソコンからも随分と離れていた。おかげでネット用語等に関しては随分と疎くなってな」


『い、意外に複雑な事情が……!』


 その後も、マモノが潜む個室に突入しては、中のマモノを始末していく。ちょうど今も、六体ほどのマモノの反応がある個室の前で、三人が突入準備を整えているところだ。


『今までと同じ流れでいくぞ。ドアを開けると同時に北園さんが大爆炎をぶちかまし、日影と本堂さんが一気に突入、そして制圧』


「りょーかい! じゃあ、発火能力パイロキネシスの準備するね!」


『うん、おねが……あ、ちょっと待った!? 部屋の中の反応が動いた!』


 日向の言葉を受け、三人も視界端のマップを注視する。


 マモノを示す六つの赤いマーカーが、こちらのドアの近くへと集まってくる。六つのマーカーは、そのままドア付近にある洗面所へと集結した。


 瞬間、三人が集まるドアの近く、すぐ傍の壁がカカカッと切り刻まれ、壁をぶち破ってホワイトリッパーたちが突撃してきた。


「わ、わぁ!?」


 北園が反射的に、出現したホワイトリッパーたちに火球を投げつける。

 三人の至近距離で、爆炎が巻き起こった。


「うおっと!?」

「むっ……!?」


 高熱が顔に吹きつけてきて、思わず日影と本堂は顔を覆う。


 火球はホワイトリッパーたちを焼き尽くしたが、先頭の一匹だけが炎から逃れ、熱風の勢いに乗って北園に飛びかかってきた。鎌を振り上げ、北園に斬りかかる。


 ……が、その鎌が北園を切り裂くことはなかった。


「させるかよッ!」


 日影が素早く北園の前に立ち、逆にホワイトリッパーを殴り飛ばす。そしてホワイトリッパーが体勢を崩したところを、『太陽の牙』で斬り潰した。


「いっちょ上がりだ!」


「あ、ありがと! ……また助けられちゃったね」


「触覚一本触れさせねぇって言ったろ?」


『仲良いね君たち』


「おっといけねぇ。日向がヤキモチ焼いてら」


『や、焼いてねーし! ほら、無駄口叩かず前見て進む!』


 慌てふためく日向。

 その声を聞いた日影と北園は、顔を見合わせクスクスと笑った。

 その一方で、狭山が何やら不思議そうに唸っている。


『うーむ、今のは一体……?』


「どしたの、狭山さん? 今のホワイトリッパーに何か気になるところが?」


『うん。先ほど、ヤツらはコンクリートの壁を切り刻んで君たちに奇襲を仕掛けてきたが、今までのデータでは、ホワイトリッパーの鎌はそれほどの切れ味を持ち合わせてはいないはずなんだ』


「つまり、さっきの子たちが特別強かったってこと?」


『ブラッドシザーも妙に強くなってるし、もしかしたら、マモノたち全体の力が上昇しているのかもしれない。星の巫女が、貸し与える星の力を増やしたとかかな』


『……そういえば、この間の中心街襲撃で星の巫女と会った時、宣戦布告みたいなの喰らったんだよなぁ……。マモノが強くなったのって、それが関係しているとか? いよいよ本腰入れてきたとかかな……?』


「なんだ、つまりマモノが強くなったの、日向のせいか。迷惑な奴だぜ」


『なんでじゃ。冤罪だろ』


 残りのマモノたちを掃討すべく、マンションの通路を歩く三人。


 するとそこへ、トンボのようなマモノが現れた。

 三人はまだ見たことがない、新手のマモノだ。


 そのトンボは、マモノにしては比較的小柄だが、トンボにしてはあまりに大きい。小型犬よりもうひとまわり大きいくらいだろうか。羽が止まって見えるのは、それほどの速さで羽ばたいているからだ。


『コイツは……たしか……』


「へっ、貧弱そうなヤツだぜ。叩き落してやる!」


『あっ、おい、日影!?』


 日向の声も聞かず、日影はトンボ型のマモノに斬りかかる。

 しかしトンボは、日影の剣をヒラリと避けてしまった。


「ちっ、まだまだ!」


 続けて、日影が連続でトンボのマモノに斬りかかる。

 だが、これも当たらない。全く当たらない。

 トンボは日影の周囲を縦横無尽に飛び回り、ヒラリヒラリと攻撃を避ける。


「く、クソ、なんつーすばしっこさだ!? 全然当たらねぇ!」


「だが、さすがに電撃は避けられんだろう」


 そう言うと、今度は本堂がトンボのマモノに向かって”指電”を放った。電撃は真っ直ぐトンボのマモノに飛んで行き……。



「……バカな、避けられた!? 電撃より速いだと!?」


 本堂の電撃は、当たらなかった。

 トンボのマモノは、残像が生まれるほどのスピードで、電撃を避けてしまった。これには本堂も、珍しく声を上げて驚かされる。


「ブゥゥゥゥン……」


 トンボのマモノは本堂の前で滞空しつつ、さらに激しく羽ばたき始める。そしてそのまま、打ち払うように羽を一薙ぎ。すると、真空の刃が本堂に向かって飛んできた。


「くっ!?」

「うおっ!?」

「きゃっ!?」


 慌てて真空の刃を避ける本堂。

 後ろにいた日影も、北園を逃がしながら刃を避ける。

 薄緑の真空の刃は、三人の脇を通過して、その先の壁に直撃する。

 コンクリートの壁に、深々と切れ込みが入った。


「と、とんでもねぇ切れ味だな……いや、それより、今の攻撃は……!」


 今の攻撃は、星の力による異能だった。

 つまり目の前のこのトンボは……。



『マモノ対策室にデータがある! ソイツの名前は『シルフィードラゴニカ』! トンボから進化した、”暴風トルネード”の星の牙だ!』

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