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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第1章 空から落ちてきたものは
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第2話 終業式

―――その日、夢を見た。


 空から一本の剣が落ちて往く。


 紅い軌跡を描きながら、流星のように。


 落ちた先は、住宅地付近の小さな山の中。


 そこにやって来た、一人の少年。


 少年は、しばらくその剣の様子を窺うと。


 おもむろに剣の柄を握りしめた。



―――嗚呼、思えば、ずいぶんと久しぶりに夢を見た。




◆     ◆     ◆




 日向が家を出発しておよそ四十分後、無事に高校へ到着した。


「ふー……。きっつい。全然慣れないや」


 高校に入学してから何度も行き帰りした道であるが、日向にとっては未だに遠い道のりである。息を切らせず到着できた試しがない。ちなみに、帰りは坂を登らなければならないのでもっとキツくなる。


 駐輪場に自転車を止め、教室へ向かう。

 教室に到着したら、ホームルームが始まるまでただボーっとして時間を過ごす。時おり、周りのクラスメイトの他愛のない会話に耳を傾けながら。


 他の生徒と会話はしない。まず、そんな友人がクラスにはいない。クラス内において、話しかけられたら気さくに答え、それ以外は静かに佇む、さながらタンポポのような立ち位置を日向は築いていた。


 ……と、言うよりも。

 日向自身が、周囲を避けているような様子にも感じられた。



◆     ◆     ◆

 


 終業式も終わり、あっという間に下校時間がやって来た。これからの長期休日に皆が胸をときめかせる中、日向は一人、自分の成績表とにらめっこしながら、暗い顔をしていた。


「やっべぇ……。2か3しかない……」


 もちろん、彼の高校の成績表はスタンダードな五段階評価だ。4さえ一つも無いのは、勉強嫌いな日向と言えど流石に堪えた。


(さて、母さんにどう言い訳しようか。俺の実力に成績表がオーバーフローを起こした結果、逆に数字が低くなったとか…………それは一学期に言ったやつだな)


 そんなことを考えていると、不意にクラスの女子から声を掛けられた。


「ねぇ、日下部くん?」


「はい? えっと、北園……さん?」


 彼女の名前は、北園良乃(きたぞのよしの)

 基本的に明るめな性格だが、その性格の割にはあまり大勢の友達で集まったりしない、どこか少し変わった女子だ。


 身長は同年代の女子の中でも低い部類だろう。小ぢんまりとした外見に、ふわりとした黒のボブヘアーが良く似合う。パッと見た感じ、大人しめでふわふわとした雰囲気の少女、という印象だった。


 ちなみに、なぜかいきなり話しかけられたが、日向と彼女に交友関係は全くない。彼から見てもこれは異常事態である。


 日向は普段から小心者な上に、女子には全く慣れていない。

 未知との遭遇と言っても過言ではない緊張感が日向を襲った。


「えっと、何か用……?」


 かろうじて平静を装い返事をする日向だが、思いっきり声が震えている。しかし北園は構わず話を続ける。


「うん。ちょっと今から、すごく変わった質問をするんだけど、いいかな?」


「すごく変わった質問……? あー、うん。どうぞ。俺に答えられることなら」


「じゃあ遠慮なく。日向くんって、剣とか持ってる?」


「剣? 剣って……あれだよね? 武器の? 英語で言うとソード?」


「うん。そーど」


「いや、持ってないけど……」


 ちなみに日向の家は骨董品店でもなければ武器屋でもない。

 ましてや日向が古物コレクターというワケでもない。

 

 前置きされたとはいえ、本当に変わった質問だった。

 北園がどうして日向にこんな質問をしたのか、彼自身にも見当がつかなかった。


「あー、持ってないんだ。そっかー」


「んー……。竹刀とかならあるけど。中学の時に部活で使ってたやつが」


「ううん、竹刀みたいなのじゃなくて、もっとこう、西洋の両手剣みたいな……」


「オーケー。絶対無い」


「そっかぁ。絶対無いかー。ごめんね、変なこと聞いて」


「いやいや、気にしてないよ」


 そう言って北園は「そっかー、まだ持ってないのかー」などと呟きながら去っていった。



(それにしても西洋の両手剣って……。持ってたら持ってたでどうするつもりだったのだろう?)


 そう思い日向は、しばし頭をひねって考えてみる。


「……うーん、ダメだ、分からん。考えてもしょうがないか」


 頭をひねっていると、窓の外の景色が視界に入った。

 今日は、冬の季節としては珍しく、空は青く晴れ渡っている。

 気がつけば太陽は中天に上り、時計は正午を伝えた。


(さて、学校ももう終わったし、ぼちぼち帰ろうかなぁ)


 気持ちのいい景色を眺めながら、日向は席を立とうとする。


 日向のクラスは学校の四階にある。そのため窓からの景色はとても見晴らしがよく、向こうの山まで良く見える。その山のふもとには彼が住んでいる家もある。中心街から離れた、閑静な住宅地だ。


 そんな窓の景色を眺めていると、異様な光景が目に映った。

 

(ん……? なんだ、あれ……?)


 空から、何か光るものが、真っ直ぐ落ちていく。

 紅い軌跡を描きながら、まるで一条の流星のように。

 あるいは、天から降ってきた一本の矢のように。


(え、何だあれ? 隕石?)

 

 そしてそれは、ちょうど日向の自宅の裏山に、吸い込まれるように落ちた。


『それ』が落ちても、爆発などは起こらない。

 あとはただ、いつもの景色が広がっている。

 クラスの皆は誰も気づいていない。


 今の光景を目にしたのは、偶然か運命か、日向ただ一人だった。


「これは……行ってみるか……」


 そう言って、日向は急いで荷物をまとめると、教室を飛び出した。





 そして、(あわ)てるように教室を出ていく日向を、北園良乃は後ろから眺めていた。


「動いたね……。さて、夢の通りに動いてくれるかな……?」


 そう言って北園は、日向の後ろにこっそりついて行った。

挿絵(By みてみん)

北園さんイメージ図

(キャラクターメーカーにて作成)

(使用メーカー様:ガン見してぅるメーカー)

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― 新着の感想 ―
[一言] 続けて失礼します。 2話の七生さんの感想がですね、なぜここでJOJOが出てくるのかワケワカメだったからこその感想でした(;'∀') 私もどこにJOJO要素があったのか分からん。 副賞とは…
[気になる点] JOJOタッチ、だと(;゜Д゜) [一言] ヨッシーちゃんメチャかわいい(;゜Д゜) こんなかわいい子が地球の命運左右しちゃう系の戦いに参戦しちゃうって胸アツやないですか(;゜Д゜)
[良い点] 再度失礼致します。 北園さん。 可愛い&タイプすぎるのですが! やばいっす~♪
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