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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1593話 怒り叫べ、星の咆哮

 レオネ祭司長の最大の大技を打ち破る。

 その役割を、エヴァが引き受けることになった。


 レオネ祭司長の”終焉果実・失楽園(ロスト・アーリア )”に打ち勝つための方法を、エヴァは考える。日向と日影を白い花で封じ込め、同時に北園の”雷光一条(サンダーステラ)”も防いでいるからか、レオネ祭司長はなかなか『星の力』の充填を完了できずにいる。つまり、いくらかエヴァが思考する余裕があるということだ。


 レオネ祭司長は「凝縮」と「解放」というプロセスを利用して、エヴァとの出力差をひっくり返すほどの破壊力を生み出している。エヴァもいくらか『星の力』を圧縮させることは可能だが、彼女から見ても、レオネ祭司長の『星の力』の扱い方は異常と言えるほどに精錬されている。


 レオネ祭司長とまったく同じ芸当はできない。

 エヴァは彼女なりの方法で、レオネ祭司長に打ち勝たなければならない。


 いっそ真っ向勝負を諦めて、全ての『星の力』を爆発させるように発散させ、防壁として利用することで攻撃を(しの)ぐことも考えた。

 レオネ祭司長の”終焉果実・失楽園(ロスト・アーリア )”の本質は「爆発」。つまり、最も威力が強烈なのは、爆発が発生した最初の一瞬だけ。そこさえやり過ごすことができれば。


 しかし、エヴァがそのように『星の力』を発散させたら、周囲にいる仲間たちも巻き込むことになってしまう。それでは意味がない。レオネ祭司長が発生させる『星の力』の爆発を突破し、仲間たちに衝撃波が届かないようにしなければならない。


「誠に不本意で、異議を申し立てたいことこの上ないのですが、私はあまり頭が良くはありません。マモノ災害の時も、ゼムリアやヘヴンをはじめとしたマモノたちにいつも助けられました。もっと賢い人間であれば、この身に宿る『星の力』を上手く加工して、レオネまで届くように形を変えることもできたのでしょうが……」


 そんなエヴァにできること。

 それは今も昔も変わらない。

 つまり、己の身体を張ることだ。


 まず、エヴァは己の身体の内側に『星の力』を充填。レオネ祭司長がやってみせたのを見よう見まねで、彼女もまた可能な限り『星の力』を圧縮する。


「工夫と呼べるかも怪しい力技ですが、私にできそうなことと言えば『発射方法』を変えること。今までは『星の力』の勢いに任せて”星の咆哮(スーパーロア)”を照射していましたが、レオネから得た『凝縮』のヒント、そして私自身の『膂力(りょりょく)』も加えて、発射の瞬間に全てを懸ける……!」


 エヴァの全身から蒼いオーラが勢いよく()れ始める。

 彼女の右の青目からも同じく、蒼炎のように。

 着込んでいるローブの(すそ)や、彼女自身の銀髪がはためく。


 右手に持っていた杖を捨てて、両手で構えを取るエヴァ。

 自分自身を砲台にして、圧縮した『星の力』という弾丸を放つ。


 エヴァが狙うべきチャンスは、わずか一瞬。

 ずばり、レオネの力が『解放』され、その衝撃波がエヴァたちのもとまで届く、その瞬間だ。


 これから放つエヴァの”星の咆哮(スーパーロア)”も、レオネ祭司長と同じく『凝縮』と『解放』を使って威力を上げている。その関係上、最も高い威力が出せるのは、技を出した瞬間だ。この最高威力の瞬間を、レオネ祭司長の衝撃波にぶつけることができれば、突破できるはずだ。


 つまり、エヴァの技の発射が早すぎれば、技の威力が減衰してエヴァが押し負ける。逆に遅すぎたら発射する前にエヴァたちが消し飛ばされる。向こうの『解放』の瞬間を、見逃してはならない。


「全神経を集中させる……。私の細胞一つひとつまでも総動員して、彼女の攻撃の気配を感じ取る……!」


 そして。

 レオネ祭司長が『星の力』を凝縮完了。

 天空から、エヴァに向けて、その蒼色の光球を投げ落としてきた。


「星よ、(ゆる)したまえ……。”終焉果実・失楽園(ロスト・アーリア )”」


 空から蒼い球が落ちてくる。

 少しずつ速度を上げながら、蒼色の軌跡を描いて。

 その光景は流れ星のように美しかったが、隕石衝突寸前のような恐ろしさも(あわ)せ持っていた。


 その蒼球が『解放』される瞬間を、ジッと待ち構えるエヴァ。

 周囲から飛んできた白い花びらが、彼女のわき腹や脚を切り裂いた。


「う、ぐっ……!」


 それでもエヴァは集中力を切らさない。

 落ちてくる蒼球から視線を外さず、自分の最大火力の発射の瞬間を見定める。


 蒼球に、スパークが(はし)った。


「……今!」


 エヴァもまた、あの蒼球に宿ったエネルギーが膨張するのを感じた。

 それに合わせて、彼女の全身で圧縮していた『星の力』を、前に突き出していた両手のひらへ移動させ、『解放』する。


「星よ、(かな)でたまえ……”怒り叫べ(スーパーロア)()星の咆哮(ママラガン)”!!」


 雷が落ちたかのような、短いながらも強烈な爆音が響き渡った。


 それと同時に、エヴァの両手から、その小さな両手から発せられたとは思えない超巨大な蒼い衝撃波が発せられた。


 レオネ祭司長の蒼球もまた、(はじ)けた。

 蒼白い閃光が、一瞬にして大地を包む。


 エヴァの攻撃は、彼女が狙ったとおりのタイミングで放つことができた。あとは、彼女が(ほどこ)した彼女なりの工夫が、レオネ祭司長に届くことを祈るのみ。


 エヴァの一点集中型の衝撃波と、レオネ祭司長の周囲一帯を吹き飛ばす球状の衝撃波が激突。


 その結果。

 エヴァの衝撃波が、レオネ祭司長の衝撃波を貫いた。

 そしてそのまま、衝撃波の向こう側にいるレオネ祭司長に到達する。


「何っ……!?」


 これにはレオネ祭司長も驚愕で目を見開いた。

 逃げる間もなく、彼女の全身に想像を絶する破壊力が叩きつけられた。


 一瞬にしてレオネ祭司長の全身の骨格が砕け散る。しかしこれでも、レオネ祭司長自身の衝撃波が盾となり、威力が削がれている状態なのだ。直撃していたら、彼女は跡形もなく粉々になっていただろう。


 大きく吹き飛ばされ、地面に落下するレオネ祭司長。

 だが、落下の瞬間に体勢を整え、着地した。

 まだ身体は完全に再生していないようだが、戦意は喪失していないようだ。


「まだです……私はまだ終わっていない……!」


 その一方で、エヴァも口から血を吐き、その場に倒れてしまう。


「うぐっ、げほっ……!」


 無理もない。あれほどの規模のエネルギーを、彼女自身の肉体まで使って射出すれば、その反動も凶悪なものになる。少し前まで”轟雷砲”でいつも腕を骨折していた本堂と同じ原理だ。


 白い花畑の中に倒れてしまったエヴァ。

 立ち上がれないが、両腕で上体を起こし、皆に声をかける。


「さぁ、レオネの大技はどうにかしましたよ……。後は、任せます……!」


「信じてたぞエヴァ! やればできる子!」


「よっしゃ、後は任せとけ!」


 レオネ祭司長の視線が外れて、日向と日影も身体に咲いていた白い花を”再生の炎”で焼き尽くした。『太陽の牙』を手に持ち、立ち上がる。


 しかし、レオネ祭司長は”星通力(マナドライヴ)”を行使。

 雲一つない空に電流が(ほとばし)り、日向たちめがけて雷の嵐が降り注いできた。


「近寄らせは、しません……!」


「うわわ!? まだこんな攻撃が出せるのか!?」


「狙いは良くねぇようだが、数を撃って当てるつもりだ!」


 落ちる雷で、大地が爆ぜ飛ぶ。

 その衝撃で舞い散った白い花弁が、刃となって日向たちに襲い掛かる。


 北園がドーム状のバリアーを展開し、皆を守る。

 だが、彼女から離れていた日向、日影、エヴァはバリアーの中に入っていない。


 そして、倒れているエヴァの頭上でも電流が発生。

 無防備な彼女めがけて、雷が落ちてきた。


 しかし、その雷はエヴァに命中しなかった。

 駆けつけてきた本堂が盾となり、エヴァを守ったからだ。


「そう来ると思って、援護に来て正解だった。大事無いか、エヴァ」


「仁……。助かりました」


 さらに、ミオンが天に向かって”如来神掌”を放つ。

 利き手の右手は凍結されて砕かれたので、逆の左手で。

 それでも、日向たちの上空で渦巻いていた電流が、一撃で吹き飛ばされた。


「さぁ、攻撃を中断させてあげたわよ! 今のうちにレオネちゃんを!」


「分かりました!」


「よっしゃ!」


 ミオンの言葉を受けて、日向と日影が動いた。

 今度こそ、本当に、ロストエデンを……レオネ祭司長を終わらせるために。

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