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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1581話 逆転のチャンス

 ロストエデンの再生が止まった。


 無限とも思える再生力で日向たちの心を折りかけていたロストエデンの回復能力が、突如として停止した。


 日向だけでなく他の皆も、それに気づいたようだ。


「あれ……? ロストエデン、傷が回復しなくなった?」


「どういう事だ? 大地のエネルギーを吸い尽くしたのか? いや、そのような様子には見えないが……」


「また何かしでかすつもりじゃねぇだろうな? これ以上は腹いっぱいだぞ……」


 これほど強力な能力を停止したのだ。必ず何らかの理由があるはずだ。停止せざるを得ない状況に(おちい)ったのか、それとも。


 本堂が、ロストエデンの様子がおかしいことに気づく。

 ロストエデンの全身から力が抜けているのか、その巨躯を支える両腕が震えている。


「俺達が、ロストエデンの白い花にエネルギーを抜かれている時と同じような様子だ。ロストエデンに何かが起こっている? 何かがロストエデンに干渉しているのか?」


 本堂はエヴァの”天女の羽衣”の効果で空に飛び上がり、ロストエデンの背中の上を見下ろした。


 すると、本堂が何かを発見したらしい。

 大きく目を見開いた後、下にいる日向に声をかけてきた。


「……いや(まった)く、驚かされた。()()()()()()()()だ? ……日向!」


「はい!?」


()()()()、恐らくお前が生み出したものだろう? 一体、どんな仕込みを(ほどこ)した?」


「え? いやあの、何を言ってるのかさっぱり……」


「ロストエデンの背中の上を見てみろ」


 本堂に言われて、日向も風のヴェールを操作し、空を飛ぶ。

 そして本堂に言われた通り、ロストエデンの背中を見た。


 白い(はね)が生えた緑の背中の中央に、何かがあった。

 緑色の、触手の塊のような何かが。

 多数の触手の先端を、ロストエデンの背中に突き刺している。


 その触手の塊は、よく見ると人間の姿をしている。

 頭からロングヘアーのように無数の触手が生えた人間だ。


「まさか……ははっ、おい嘘だろ……!」


 思わず笑みをこぼしながら、日向はつぶやいた。

 ロストエデンの背中の上にいたのは、エドゥだったのだ。


「どうだデカブツがよォ! お前がこの地のエネルギーを吸収して回復するってんなら、そのエネルギー、俺が全部いただいてやるぜェ!」


 エドゥは自身の触手をロストエデンに突き刺し、ロストエデンから生命エネルギーを吸収しているようだ。

 彼の吸収能力もまた、大地を通して超広範囲から根こそぎエネルギーを奪うことができる強力なもの。ともすれば何千、何万という対象から一気にエネルギーを吸収できるその能力を、今はロストエデンだけにターゲットを集中させている。


 その威力たるや絶大で、ロストエデンがいくらエネルギーを大地から吸収しても、吸収した側から背中のエドゥに持っていかれてしまう。ゆえに再生能力に回すエネルギーが不足し、ダメージの回復が止まったのだ。


 これならいける。

 エドゥがロストエデンのエネルギーを奪っている今なら、ロストエデンにトドメを刺せる。


「エドゥ! なんでここにいるんだよ!」


 言葉とは裏腹に、日向は非常に嬉しそうにエドゥにそう問いかけた。

 エドゥもまたニヤリと笑みを浮かべながら言葉を返す。


「いつも言ってるだろうガ! 生きていれば、必ず逆転のチャンスは来るってなァ! そのチャンスをいただきに来ただけダ! お前らが必死こいて弱らせたこのバケモンにトドメ刺して、美味しいところ持ってってやろうって思ってナ!」


「ああそうかよ! いくらでも持っていくといいさ!」


 しかし、ロストエデンも黙ってやられてはいない。

 爆発する緑の蕾を背中に咲かせ、爆破。

 同じく背中の上にいるエドゥを巻き込んだ。


「ぐおおおッ!?」


 強烈な爆発に巻き込まれ、エドゥの触手や左腕が千切れ飛ぶ。

 だが、現在進行形でロストエデンから吸収しているエネルギーを使い、また新しい触手と左腕を生成する。


 吸収攻撃を続けながら、エドゥが日向に声をかけてきた。


「おイ! さっさとコイツにトドメ刺セ! お前も知ってのとおり、この能力は連続して使えるものじゃねェ! 時間がかかれば、いずれ俺も引き剝がされるゾ!」


「分かってる、ああ分かってるさ! 皆、行くぞ! これで今度こそ最後だ!」


 日向の号令を受けて、皆がロストエデンへの総攻撃を再開。

 北園が火球と電磁球を乱射し、本堂がロストエデンの手首に”風雷斬”。

 シャオランは顔面を八極拳で攻撃し、ミオンは胸部に”如来神掌”。


 サポートに回っていたジャックやコーネリアスも攻撃に参加。

 ジャックは『鏡花』で斬りつけ、コーネリアスはトラクタービームで大量の瓦礫をぶつける。


「もうここまで来たら祭りみたいなモンだろ! 俺たちも参加させてもらうぜ!」


「羽目ヲ外しすぎるなよジャック。こういう時こそ油断大敵ダ」


 ロストエデンも反撃してくる。

 宙を舞う細胞にエネルギーを送り込み、緑の爆発を巻き起こす。

 なけなしの生命エネルギーを、全て攻撃に回すつもりだ。


 宙に浮かぶ月桂冠も攻撃の用意をしている。

 回転しながら明るい緑色に輝き、ホーミングビームの発射体勢。


 その月桂冠に、空から五発ほどの雷が降り注いだ。

 エヴァの雷の権能”ゼウスの雷霆(らいてい)”だ。

 強烈な衝撃を受けて、月桂冠が大きく傾く。


「これ以上、好きにはさせませんよ……!」


 そして、地上から日影が”オーバーヒート”で飛び上がり、空の月桂冠に激突。そのまま月桂冠の側面に『太陽の牙』を突き刺し、月桂冠に沿う形で大きく一周。


()(さば)いてやるぜッ!」


 結果、月桂冠は上と下で綺麗に真っ二つにされ、崩れ落ちた。

 これで、ロストエデンの細胞の大量散布も止まった。


 ロストエデンは大地から指を引き抜き、六本の腕を振り回す。

 尾を大きく薙ぎ払い、かろうじて残っていた建物群を完全に一掃。

 もうダメージの回復を完全に諦め、攻撃に集中するつもりだ。


 ロストエデンの動きが激しくなり、背中にしがみついているエドゥも振り落とされないように必死だ。ロストエデンの身体を構成するツタを握りしめ、触手をさらに深く突き刺す。


「く……ぐフ……! へへ、まだまだ食えるゼ……!」


 ロストエデンから生命エネルギーを吸収し続け、傷も残らず再生させているエドゥだが、その表情は苦しそうだ。


 それは、言ってしまえば過食によるもの。

 エネルギーは、許容量を越して()りすぎれば、ただの毒となる。

 無尽蔵とも思えるロストエデンのエネルギーを、無尽蔵に吸収し続けているエドゥは、例えるなら、いつまでも空気を入れられ続けて破裂寸前の風船のようなものだ。


 エドゥの周囲に緑の(つぼみ)が咲き、爆発。

 爆発に巻き込まれて負傷するエドゥだが、すぐにダメージを再生。

 吸収しすぎたエネルギーを消費できるため、こういった攻撃はむしろ有難(ありがた)みすら感じる。


「皮肉なモンだよなァ。お前はこの大地に寄生して、俺たちにテメェの細胞を植え付け、ヴェルデュに変異させタ。だが今は、そのお前が生み出したヴェルデュに寄生されて、滅びの時を迎えようとしてやがる。だが、哀れとは思わねェ。自業自得ってヤツだゼ!」


 だがロストエデンは、今度は親指を一本立てて、虫を始末するようにエドゥの背中を押し潰してきた。


「がはぁぁッ!?」


 ベキボキ、と背骨がへし折れる嫌な音が鳴り響く。

 口から血反吐をぶちまけ、全身の力が抜けそうになる。


「クッソがァ……! ソイツぁちょっとキツイなァ……!」


 それでもエドゥは歯を食いしばり、ロストエデンに張り付き続けた。


「やっと……やっとテメェと()り合えてるんダ。やっとこの街を守れてるんダ。そう簡単に……引き剥がされてたまるかよぉォ!!」


 そのエドゥの叫びを、叫び声ごと押し潰すように、ロストエデンが親指にさらなる力を込めようとした。


 ……が、その横から日向が飛んできて、ロストエデンの指を切り飛ばした。


「”点火(イグニッション)”っ!!」

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