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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
1612/1700

第1578話 ロストエデン討滅戦

 日向と北園が合流し、再集合した十人。

 今度こそロストエデンを打ち倒すため、立ち向かう。


 ロストエデンもすでに、日向に斬られた(はね)を新しく生成し終えていた。『太陽の牙』の炎で焼かれた(はね)を捨てて、新しい(はね)を背中に生やしたのである。


 六枚の白い(はね)を展開し。

 六本の腕を広げ。

 六本の角が生えた頭部をもたげて。

 ロストエデンは、日向たちを見据えている。

 獲物を狙う蛇のように、ジッと、静かに、そして不気味に。


 まずはロストエデンが仕掛けてきた。

 六つの腕をそれぞれ交差し、その交差させた腕を戻すように、合計三十本の指先から撃ち出した緑のレーザーで地上を薙ぎ払う。


 一方、日向たちの陣営では、力を取り戻したエヴァが能力を行使。


「舞い上がれ……”天女の羽衣”!」


 エヴァの詠唱と共に風のヴェールが日向たちを包み込み、飛行能力を獲得。これによって日向たちは地上を離れ、ロストエデンのレーザーを回避した。


 薙ぎ払われたロストエデンのレーザーは、地上に焼け(あと)を深く刻み込んだ後、一拍置いて大爆発を巻き起こした。数えきれないほどの建物が崩壊し、地上で咲き誇っていた白い花々が舞い上がる。


 さらにロストエデンの攻撃。

 飛行して接近してくる日向たちに対して、月桂冠からの追尾光線を次々と発射。


 これを見て、北園が前に出た。

 自身の両手、さらには自身の周囲に火球を生成し、ロストエデンの追尾光線にぶつけるように発射する。


「えーいっ!」


 北園とロストエデン、両者の攻撃はそれぞれ衝突し、相殺された。

 ロストエデンの追尾光線が全て消え去り、道が開ける。


 その開けた道を我先(われさき)にと”オーバーヒート”で通過したのは日影。ひたすらまっすぐ、赤く燃える流星のように、ロストエデンの胸板に激突した。


「景気づけだ、喰らっとけ! ”落陽鉄槌(ソルブレイカー)”ッ!!」


 ロストエデンの胸板で大爆発が巻き起こり、緑の巨体がわずかに後退。


 しかしロストエデンはすぐに体勢を立て直し、攻撃直後の日影に右の拳で殴りかかってきた。その動きは、高層ビル以上の背丈とは思えないほどに機敏。


 しかし日影は再び”オーバーヒート”を使用し、ロストエデンから距離を取って拳を回避。

 ロストエデンは左手のレーザーで追撃してきたが、日影はこれも器用にくぐり抜けて回避した。


 日影に気を取られている間に、他の皆がロストエデンを包囲。四方八方から攻撃を仕掛ける。


 北園が火球や電磁球を次々と生成してロストエデンにぶつける。そのエネルギー弾の一発一発がミサイル級の火力を有している。ヴェルデュとなった彼女はもはや、並の戦艦でも敵わないような攻撃力を個人で発揮できるほどになっていた。


 本堂は背中に翼を生やして、エヴァの”天女の羽衣”による浮力をさらに効率的に利用。猛禽類のような鋭い空中機動力でロストエデンの周囲を飛び回り、両腕の電刃で緑の巨体を斬りつける。


 ロストエデンの反撃。

 背中の六枚(ばね)を大きく羽ばたかせ、北園の周囲に細胞を散布。

 その散布した細胞のエネルギーを暴走させ、彼女を緑の大爆発に巻き込ませた。


 爆発に巻き込まれたが、北園は無事だった。

 球状のバリアーを展開し、身を守っていたのだ。


 だが、その爆風を煙幕にして、ロストエデンが三本の腕を伸ばしてきた。その巨大な手で、北園をバリアーごと捕まえようとする。


「わっ、やば……!?」


「キタゾノ! 助けるよ!」


 シャオランの声がした。

 それと同時に蒼白い気質が、北園と、北園を捕まえようとしていたロストエデンの手を包み込む。


 これはシャオランの空の練気法”天界”だ。

 彼を中心に広がった”空の気質”の中であれば、相手がどこにいようが彼の拳の衝撃が伝わる。


 シャオランは北園の後ろで拳を振るう。

 すると、北園を挟んで向こう側から迫っていたロストエデンの三つの手が、シャオランの拳の威力によって止められた。


 その間に北園は、ロストエデンの手から距離を取った。

 逃げながら、彼女はシャオランに礼を言う。


「シャオランくん、ありがとう!」


「どういたしま……」


 ……と、シャオランが返答している間に、彼に止められたロストエデンの三つの手、その全ての指先がシャオランに向いた。そして彼を狙って、計十五本の指から緑のレーザーが放たれた。


 あわや巻き込まれそうになったシャオランだったが、風の練気法”飛脚”で空気を蹴り、すぐさまその場から離れることでレーザーを回避した。


「あぶなぁぁ!? ゆ、油断も隙も無いなぁもぉぉ!」


「さすが最後の『星殺し』……すごい強さだね……!」


(ただ)の白い花だったのが懐かしいな。此方(こちら)も、ここまで(つちか)ってきた全ての力、技術、能力、その集大成を見せつけてやるべきだろう」


 本堂の言葉にうなずき、北園とシャオランは攻撃を再開する。


 一方、地上ではエヴァが”ラグナロクの大火”を発動。

 街ごとロストエデンを巻き込み、燃やす。


「ロストエデンにエネルギーを供給する白い花が、また数を増やしてきました。ここで数を減らしておきます……!」


 エヴァが放った業火によって、街が炎の海に飲み込まれる。

 街を覆っていた白い花が焼け焦げ、火が付いた花びらが舞い上がる。


 そんなエヴァの補佐を務めるのは、引き続きスピカ。

 彼女がエヴァの第二の目となることで、ロストエデンからの攻撃への対応力をさらに高める作戦だ。


 ロストエデンがエヴァの方に視線を向けた。

 さらに左手を動かし、エヴァを指さす用意。


「エヴァちゃん! またさっきのが来るよー! あの白い花をピンポイントで咲かせるやつー!」


「分かりました……!」


 能力を発動する際にいくらか集中しなければならないエヴァにとって、その集中の隙を埋めてくれるスピカの存在はとてもありがたかった。彼女からの声を受けて、エヴァはすぐに近くの建物の陰に身を隠す。


 エヴァが身を隠すと、ロストエデンの能力は発動しなかった。

 彼女の身体は先ほどのように、白い花に包まれていない。


「思ったとおり! 強力な能力は、だいたい(いく)らか制限があるもの。対象をピンポイントで狙わないといけないから、相手をしっかり視認しないと上手く能力を発動できないんだ」


 エヴァの代わりに建物の陰から顔を覗かせ、ロストエデンの様子を見ながらスピカがつぶやく。


 するとロストエデンは、レーザーや追尾光線で北園たちの相手をしつつ、尾の先端を振り上げた。


「エヴァちゃん! 尻尾が来る!」


「了解しました……!」


 ロストエデンが大地に尻尾を叩きつけ、衝撃波が発生。

 衝撃波は進路所の建物を崩落させながらエヴァに迫る。


 エヴァは足元の地面を隆起させ、マンションほどの巨大な壁を生成。

 さらにその壁に『星の力』を流し込み、オリハルコン化させた。


 大きな土煙を(ともな)う衝撃波が、エヴァの防壁に叩きつけられる。

 オリハルコンの蒼い壁は、この災害のような一撃を見事に受け止めた。


 ロストエデンの注意がエヴァに向いていたその間に、ミオンがロストエデンのわき腹に肉薄。濃い”風の気質”を纏った手のひらを、そのわき腹に突き入れた。


「”如来神掌”!!」


 ロストエデンの内部に直接、天に穴を開けるような衝撃が打ち込まれた。これにはロストエデンもたまらず身体が(かたむ)き、(ひる)んだ。


 (ひる)みはしたが、ロストエデンの攻撃の手は止まらない。

 細胞爆発でミオンを追い払い、月桂冠からの追尾光線で追撃。


 ミオンは飛び退いて細胞爆発を回避し、蹴りで放つ真空刃で追尾光線を迎撃。

 その間に彼女は一つ、考え事をしていた。


「一見すると私たち一人ひとりを警戒しているように見えるロストエデンだけど、実際のところは何かに気を取られていて、私たちに集中できていないみたいね。だからこれだけ簡単に接近できて、好きに攻撃を打ち込める。本来なら、アレはもっと隙が無い怪物だわ。その『気を取られている要因』は……恐らく日向くんでしょうね」


 恐らくはミオンの言うとおり。

 日向もロストエデンに攻撃を仕掛けようとしているようだが、そのたびにレーザーや追尾光線による妨害を受けて、なかなか仕掛けることができていないようだ。


「つまり、今のロストエデンにとっても、日向くんの火力は脅威ということ。どうにか彼を援護してあげれば……」


 ……と、その時。

 ロストエデンが、ミオンを指さした。


「あ、しまった……!」


 たったこれだけの動作で発動する凶撃。

 ミオンの身体中に、生命力を奪う白い花が咲く。


「くっ……!」


 風の練気法”舞空”で空中にいたミオンは、技を使用する気力すら奪われてしまい、そのまま街へと落ちていった。

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