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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1576話 完全進化

 ロストエデンの頭に六本のねじれた角が生え、さらに背中に左右三枚ずつ、計六枚の翼が生えた。


 その背中の翼を羽ばたかせると、あのロストエデンの巨体が浮かび始める。


「アイツまさか、飛んで逃げるつもりかよ!?」


 日影は思わず声を上げた。

 続いて、近くにいたシャオランも困惑の声を発する。


「つ、翼が生えたって、ロストエデンが進化したってことぉ!? け、けど、今までロストエデンはボクたちに倒されてから進化してた! 戦闘中に進化したことは一度もなかった! それがどうして今になって!? ボクの踏みつけで倒しちゃったってワケじゃないよね!?」


 そのシャオランの疑問に、本堂が答える。

 彼自身、現在進行形でその要因を推測しながら。


「恐らくだが……あのロストエデンが第七形態に進化する時、俺達はロストエデンが進化している途中から攻撃を始めていた」


「あの、緑の泥の状態の時だよね?」


「そうだ。(ゆえ)にロストエデンもゆっくり時間をかけて進化できず、俺達に対して緊急的に戦闘態勢を整えたのではないだろうか」


「そ、それって、つまり……」


「この説に当て()めれば、あの翼が生えたロストエデンこそが、真の第七形態という事になる……」


 そうしている間にも、ロストエデンは飛翔を続けている。

 ついに上半身が完全に浮かび上がり、下半身の尾も根元から先端にかけて徐々に地上を離れ始めている。


「いかん……! 絶対にロストエデンを逃がしてはならない! ここで奴を逃がせば取り返しのつかない事になる! 世界中を飛び回って細胞を散布する厄災になるぞ!」


「分かってる! 節約してる場合じゃねぇな! ”オーバーヒート”使うぜ!」


「アイツがこのまま北に逃げたら、その先にあるのは俺たちの合衆国(ステイツ)だ。行かせねーぜ……!」


 ロストエデンの逃走を阻止するために、日影たちは一斉に挑みかかる。

 日影は”オーバーヒート”を再起動して。

 他の皆はエヴァの”天女の羽衣”の飛行能力で。


 だが、ここでロストエデンの思わぬ迎撃。


 ロストエデンの頭の上に浮いている月桂冠が、突如として高速回転を始める。その回転が速くなるごとに、月桂冠が明るい緑色に輝き始める。


 次の瞬間、その回転する月桂冠から次々とビームが射出された。

 一直線のビームではなく、日影たちを追尾して湾曲するホーミングビームだ。


「うおッ!? 新しい攻撃だと!?」


 日影は”オーバーヒート”の機動力で、この緑のホーミングビームをギリギリ回避するが、日影に回避されたビームはUターンしてきて、再び日影に襲い掛かる。


 他の皆も、それぞれこのビームに追い回されているようだ。


「く……! かなり巨大な光線だ。それに追尾性能も高い。いかん、”天女の羽衣”の機動力では避けきれん……ぐあっ!?」


「ほ、ホンドーが被弾しちゃったぁ!? うわわわ、こっちにも来てるぅ!?」


「どうやら、あの緑の光線、私たちの生命エネルギーに反応して追ってくるみたいね。本当に、この私でもうんざりするくらいしつこいわね……!」


「っとと、あぶねー!? マモノ化してるホンドウはともかく、俺なんかほとんど生身の人間だから、あんなの直撃したら木っ端微塵になっちまうー!」


「ジャック、こっちに来イ! トラクタービームで瓦礫をかき集めて防護壁を作ル!」


 皆、それぞれでどうにかこの緑の追尾光線に対応しているが、これではとてもロストエデンを攻撃するどころではない。


 だが、皆は信じている。

 この局面なら、エヴァがどうにかしてくれるはずだと。

 彼女を信じて、今は回避に専念する。


 そのエヴァも、この事態を黙って見逃すはずがない。

 空へ逃げようとしているロストエデンを、重力操作で地上に引きずり下ろす用意をしていた。


「皆が光線から逃げ回っている現状、私がどうにかするしかありませんね」


「やっちゃってエヴァちゃんー! キミならやれるー!」


「分かっていますスピカ。では、()ちよ……」


 スピカの声援を受けて、エヴァが能力を発動しようとした、その時だった。

 ロストエデンがエヴァの方を見て、一つの左手で指さしてきた。


 それと同時に、エヴァがその場に倒れてしまった。


「か、は……!?」


「え、エヴァちゃんー!? どうしちゃったのー!?」


 慌ててエヴァに駆け寄るスピカ。

 見れば、彼女の顔や両腕、さらにはローブの隙間から見える首元、恐らくはローブの下の全身に至るまで、あの白い花が咲いていたのだ。彼女の身体を包み込むように、数えきれないほどに。


「うわ!? これ、あの生命エネルギーを奪う白い花!? なんでこんなにいきなり、こんなにたくさん!?」


「して……やられました……。ロストエデンは私を狙ってピンポイントで、私に付着していた奴の細胞を急成長させたのです……。恐らくは、あの追尾光線と同じく、完全進化によって手に入れた新しい能力でしょう……」


「い、今すぐその花を引き抜いて、ロストエデンに攻撃してー!」


「そうしたいのですが……腹立たしいくらいに指先に力が入りません……。これでは、この白い花を引きちぎるのも……」


「うええー!? 今のワタシじゃその花は引き抜けないし、他の皆もロストエデンの方に夢中だし……。あ、コレもしかしてやばい状況……?」


「それだけではありません……! 私の力が抜かれた以上、皆を支えていた”天女の羽衣”が……!」


 そのエヴァの言葉通り、ロストエデンに接近している皆を宙に浮かべていた風のヴェールが消滅してしまった。ジャックとコーネリアスが地上へ真っ逆さま。


「おおおお!? 急に飛べなくなったんだがー!?」


「他人の能力で空を飛ぶというのハ、こういうことがあるのが恐ろしイ」


「いけない! シャオランくん、二人を助けるわよ!」


「わ、わかった!」


 シャオランとミオンの二人も風のヴェールを消失してしまったが、二人はもともと風の練気法で空中を跳躍できる。ジャックをシャオランが、コーネリアスをミオンが、それぞれ空中でキャッチした。


 しかし、そうしている間にロストエデンは羽ばたき続け、ついに尾の先端までもが地上を離れ、全身が完全に浮かび上がった。


「おい!? もう完全にロストエデンが逃げちまうぞ! エヴァはなんで何もしねぇんだ!? 何かあったのか!?」


 ロストエデンに接近中の日影が声を上げる。

 振り返ったその先に、皆の姿は無かった。

 皆の風のヴェールが消滅して、地上へ降りてしまったからだ。


「クソッ! こうなったらオレだけでもやらねぇと! 一枚か二枚、あの(はね)を千切ってやれば飛べなくなるか!?」


 日影は”オーバーヒート”を使い、戦闘機のような速度でロストエデンに立ち向かう。


 ロストエデンも、接近してくる日影を攻撃してきた。

 回転する月桂冠から撃ち出される追尾光線。

 さらに左の三つの手、計十五本の指から撃ち出される直線の光線。


 緑の光線の弾幕が、日影めがけて襲い掛かる。

 その全てをどうにか()(くぐ)りながら、日影は『太陽の牙』を構える。


「ナメんじゃねぇ! この程度の弾幕……!」


 ……が、その時。

 日影の右から、いきなり凄まじい質量がぶつけられた。

 何か、巨大な建築物でも叩きつけられたかのような衝撃。


「がはッ……!?」


 日影は斜め下へ吹っ飛ばされ、エヴァの炎によって焼け焦げていたビルにぶち込まれてしまった。


 日影を打ち据えたのは、ロストエデンの尾の先端だった。

 あまりにも長大でロストエデン自身も持て余し気味だった尾だが、先ほどの完全進化によって、細かく動かせるようになったらしい。


 とうとう。

 今度こそ。

 ロストエデンを(はば)む者は、誰もいなくなってしまった。

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