第1573話 飛翔
ロストエデンとの戦闘に、レイカを倒したエヴァたち三人が参戦。
日影を突破してロストエデンが北へ向かおうとしていたが、エヴァが”星の咆哮”を浴びせて押し戻してくれた。強烈なダメージを受けたロストエデンは、少し身体を震わせながら身を起こしている最中である。
その間、日影たちはいったん一か所に合流。日影と、日影とはぐれていたスピカと、ロストエデンを攻撃していた本堂たち三人が、エヴァたちがいるビルの下に集合。
「日影くんー! よかったー無事だったねー! いきなり吹っ飛ばされちゃったからビックリしたよー!」
「悪ぃな、心配かけた」
「お前も来たか日影。先程の蒼い光線は、エヴァの”星の咆哮”だな?」
「ロストエデンを押し戻してくれたのはありがたいけど、あの吹っ飛んだロストエデンにボクたちも巻き込まれるところだったよぉ!?」
「すごい威力の光線だったわね~。あれはロストエデンにも良いダメージが入ったんじゃないかしら?」
するとここで、ビルの屋上のエヴァたち三人も、エヴァの重力操作でゆっくりとビルの上から降りてきた。まずはエヴァに日影が声をかける。
「エヴァ! やっぱりお前だったか! ありがとな、おかげで助かったぜ。ロストエデンを逃がさずに済んだ」
「お安い御用です……と言いたいところですが、やはり”星の咆哮”は大量の『星の力』を消費します。あまり連発はできません。もう一回くらいは同じことができると思いますが、三回目は厳しいかと」
「分かってる、もう逃がさねぇさ。ところで、お前らがここに来たってことは、レイカはどうにかできたのか?」
「はい。決着を付けてきました」
「……そうか。お疲れさんだったな」
エヴァの言葉を受けて、日影は目の前のエヴァと、その後ろにいるジャックとコーネリアスも見ながら、そう声をかけた。彼の言葉を受けてジャックとコーネリアスも黙ってうなずく。
先ほどジャックに声をかけた日影だが、思わず彼の姿を二度見した。両腕が義手だったはずのジャックだが、今は左腕が生身の腕となっている。そして、レイカの武装である高周波ブレード『鏡花』を彼が所持していた。
「おいジャック、その左腕はどうした? それに、その刀は……」
「ああ。レイカとやり合ってる中で、左の義手がイカレちまってな。動かなくなった義手なんざ、ただジャマなだけだからな。生身の腕に戻してもらった。んで、この刀は形見だな」
「形見、か。そうか……」
形見という単語を聞いて、また彼らの間にしんみりとした空気が流れる。
そんな空気を払拭するかのように、日影がニヤリを微笑みながら再び口を開いた。
「……んで、その腕でちゃんと戦えるのかお前? お前の強さは義手ありきだったからなぁー。一般人はどこかに避難しといた方がいいと思うぜ?」
「へっ、抜かせ。むしろ片方だけでも腕が元に戻って、ハイパーがつくほどに調子良いくらいだぜ。そういうオマエこそ、どうせ後先考えず”オーバーヒート”吹かしまくってたんだろ? そろそろガス欠で戦線離脱なんじゃねーか?」
「…………。」(気まずそうに目を逸らす)
「おいなんだその反応。もしかして図星か。図星なのか」
すると、その日影たちのやり取りを聞いて、エヴァが口を開く。
「ここからは、私が皆さんに”天女の羽衣”を付与します。これで皆さんは飛行能力を獲得できます。ロストエデンの周囲を飛び回って攪乱しつつ攻撃するのです」
「おぉ、すげーなソレ。それなら俺も、もうちょい仕事ができそうだ」
「俺も先程までロストエデンの尾を攻撃する事しか出来なかったが、お陰でもう少し有効に戦えそうだな」
「日影。あなたにもこの能力を付与すれば、”オーバーヒート”を使わずに機動力を確保できるので、エネルギーの節約ができるのではないでしょうか」
「ああ、マジで助かる。”オーバーヒート”はエネルギー馬鹿食いするからな。しばらく火力は落ちちまうが、最近は『太陽の牙』のエネルギー回復力も上がってる。しばらく世話になるぜエヴァ」
「承知しました。では皆さん、私の周りに集まってください。”天女の羽衣”!」
エヴァが杖を振るうと、この場にいる全員を風のヴェールが包み込んだ。彼らの足元の小石などが吹き飛ぶが、ヴェール内にいる彼らは特に風などを感じない。
皆が、その場からゆっくりと浮かび上がるイメージを頭の中で思い浮かべる。
すると、風のヴェールが皆の身体を持ち上げて、その場で浮遊させた。
今度は皆、ロストエデンに向かって飛び立つイメージを描く。
それに風のヴェールも連動し、ジェット気流を噴出。
八人は一斉に、ロストエデン目指してまっすぐ飛んでいった。
エヴァに転がされていたロストエデンもすでに体勢を立て直している。六人を正面に見据え、左右合計六本の腕を広げ、合計三十本の指先から緑のビームを一斉発射してきた。
正面から三十発のビームが襲い掛かってきたが、日影たち八人はそれぞれ上下左右に動き、ロストエデンのビームを掻い潜りながら前進。ロストエデンとの間合いを詰める。
最初にビームの嵐を抜けたのは、ジャックだった。
レイカから受け継いだ『鏡花』を右の義手で振りかぶり、ロストエデンの顔面に迫る。
「一番槍、もらったぜ! 刀だけどなー!」
だが、そのジャックに慌てて声をかけたのは日影。
「待てジャック! ロストエデンはあの巨体のクセして、かなり動きは軽いぞ! 油断すんな!」
「分かってるっつーの! 俺はプロだからな! そういう最悪の可能性も想定してるのさ!」
ジャックがそう答えている最中に、ロストエデンは大きく上体を反らして、その反らした上体を戻すようにジャックめがけて頭突きを放った。先ほど日影を吹っ飛ばした時と同じように。
これに対して、ジャックは急降下。
ロストエデンの顎下……首のあたりに潜り込み、改めて『鏡花』をその喉仏に突き刺した。
「ここならヘッドバッドも届かねーよな? さぁ、『星殺し』解体ショーのスタートだぜ!」