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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1561話 強欲の化身

 北園が謎の緑の触手に捕まり、ショッピングモールの中へ引きずり込まれてしまった。


 北園を追いかけるため、日向は立ち上がる。

 先ほどまで身体にまったく力が入らなかったが、”再生の炎”が日向の全身を熱すると、彼の身体に力が戻ってきた。


 立ち上がり、北園を追いかけようとした直前、日向は周囲を見回し、あることに気づく。


「緑化現象で生えてた植物やツタが全部()れてる……」


 周囲一帯の植物や、その上の生命体、さらには土地そのもの、それら全ての生命エネルギーを根こそぎ奪う能力を持つ敵など、このリオデジャネイロの街において日向は()()しか思いつかない。


「まさか……くそっ、このタイミングでか!」


 改めて日向は走り出し、北園を追ってショッピングモールの中へ。


 暗く、静まり返った夜のショッピングモールは、内装も店舗も含めて、あらゆる箇所が荒らされていた。ヴェルデュやレッドラムによるものか、それとも人間の暴徒によるものか、それは分からない。


 ただ、ショッピングモール内も緑化現象による植物やツタが生えているのだが、これらも全て、先ほど日向が見た植物群のように枯れ果てていた。


 走り続けた日向は、やがて広い空間に到着。

 この一階から最上階まで吹き抜けになっている、モール内のメインホールのような場所。


 そこに、日向が予想していた人物がいた。

 ただ、その姿カタチは、予想とは大きくかけ離れていた。


 彼の下半身は、もはや完全な異形だった。かつては二本しか生えていなかった人としての脚は、今では巨大なタコ足のように変貌し、それがざっと見ても十数本は生えている。巨大な脚だけでなく、細い触手状の脚も生えているようだ。


 彼の背面も、後頭部から腰にかけて数えきれないほどの触手が生えている。頭から生えている触手より背中から生えている触手の方が目立ち、まるで無数のコードに身体を(つな)がれているような印象も受ける。


 そのあまりにも大量の緑の触手は、彼の足元で積み重なり、ちょっとした山のようになっていた。(うごめ)く触手の山の頂上に人間体の上半身だけ出している姿は、まるでギリシャ神話に語られる怪物スキュラを彷彿(ほうふつ)とさせる。


 先述のとおり、触手状の下半身に対して、彼の上半身は人間のもの。ただし肌は薄緑色に変色しており、その肌もほとんど見えないくらいに全身がツタに巻かれている。以前、日向に斬り落とされた左手もまた、日本に枝分かれした触手状に変形していた。


 日向を見てニヤリと(わら)う巨大な人外。

 その人相に、日向はよく見覚えがあった。


「やっぱりお前か……エドゥ!」


「はははハ! また会ったなぁクサカベェ!」


 この怪物はかつてエドゥアルド・ファミリーのリーダーで、今はヴェルデュとなって日向たちと敵対していたエドゥだった。


 エドゥは触手の山の上から日向を見下ろしながら、得意げに自分の姿を披露する。


「見ろよこの姿をよォ! 手当たり次第にヴェルデュどもからエネルギーを吸収してたら、こんなことになっちまったぜェ! これならもう俺は誰にも負けねェ! もうこれ以上お前らにもデカい顔はさせねぇし、ロストエデンだってぶっ殺せル!」


 そして、日向から見てエドゥの右側には、彼の触手に捕らえられてる北園の姿があった。


「う……うぅ……はなして……!」


「北園さん! エドゥ、北園さんを放せ!」


「うっせぇなァ!」


 エドゥの足元の触手から、一本の触手が猛烈な勢いで伸びてきた。

 その触手が日向の腹部を殴打し、彼を吹っ飛ばしてしまった。


「うぐっ!?」


「日向くんっ!? エドゥくん、日向くんにひどいことしないで!」


 そう言って北園は、エドゥを睨みつけた。

 目視による超能力で、彼の血液を凍らせるつもりだ。


 しかし、北園の超能力は発動しなかった。

 北園を捕まえている触手が、彼女からエネルギーを抜き取っていく。

 超能力を発動するためのエネルギーまで持っていかれ、北園の攻撃は不発に終わってしまう。


「あう……!?」


「まだあんなヤツに構ってるのかよ、キタゾノよォ? そろそろ俺のモンになってくれヨ? 俺はもうヒュウガよりずっと(つえ)ェ。クソッたれのヴェルデュ同士、仲良くしようぜェ?」


「ふーんだ! ヴェルデュにならないと日向くんに勝てない弱虫!」


 その北園の一言に、エドゥはカチンときた様子だった。

 しかしすぐに大きく一回息を吐き、落ち着きを取り戻す。


「危ねぇ危ねェ。お前じゃなかったらひねり潰してたところだったゼ。くく、お前はいい女だからなァ。もう俺のことを分かってくれなくても構わないから、何が何でも俺のモンにしなきゃ気が済まねェ」


 そう言うとエドゥは、自身の下半身である触手の山に北園を突っ込み始めた。触手の山からも触手が伸びてきて、北園を引きずり込もうとする。


「しばらく大人しくしてもらうゼ。あのお邪魔虫を始末して、あとでゆっくり俺のモンにしてやるからなァ?」


「や、やだ! やだっ! 日向くん助けて! いやぁぁ!」


「北園さ……ぐぁ!?」


 北園を助けるために立ち上がろうとした日向だったが、再びエドゥの触手に()ぎ払われてしまった。その間に北園は完全に触手の山に取り込まれてしまい、その姿が見えなくなった。もう声も聞こえない。


「エドゥ……お前ぇぇっ!!」


 その身が燃え上がりそうなほどの怒りを(あら)わにする日向。

 一方、そんな日向の怒りを受けても、エドゥは余裕の笑みを見せている。


「ははハ! 安心しろっテ! キタゾノはちゃんと生きてるヨ! 殺すワケねぇだろォ? 今もこの触手の中で可愛らしく暴れてるゼ」


 恐らく北園は、今もエドゥにエネルギーを吸い取られ続けているのだろう。だから何の超能力も発揮できず、身体に力を入れることもできず、彼の触手から逃れられないのだ。


 北園を助けるためには、今度こそエドゥを倒さなければならない。

 日向はこの悪縁を終わらせるため、『太陽の牙』をその手に構えた。


「ここで決着を付けてやるぞ、エドゥ!」


「ああ、こっちの台詞ダ。お前のエネルギーも全部吸い取って、面影もねぇくらいのミイラにしてやるからよォ!!」


 そう宣言し、エドゥの触手が十本、一気に日向に襲い掛かってきた。

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