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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1533話 目指すは二人だけの世界

 ヴェルデュ化した北園が伸ばしてきたツタに捕まってしまった日向。

 このままでは彼女によってどこかに連れ去られてしまう。


 その時、このコックピットルームの扉が開いた。

 そして同時に、日向と北園の間に何者かが飛び込んでくる。


 飛び込んできたのは本堂だ。

 右腕から刃を生やし、その刃を縦に振るって、北園のツタを切断した。


「ほ、本堂さん……!」


「あー。邪魔されちゃった」


「このヴェルデュは、北園か……? いったい何が起こっている……!?」


 彼もたった今ここに駆けつけてきて、日向のピンチを察知し、室内の様子を(うかが)うこともせずに突入してくれたのだろう。目の前のヴェルデュ化した北園を見て混乱している様子だ。


 本堂に続いてシャオランとエヴァ、スピカとミオンもこの部屋にやって来た。やはり四人とも北園の姿を見て驚いている。


「き、キタゾノ!? どうしたのその姿!?」


「その桜色の花……この気配……。良乃、まさかあなた……!」


「北園ちゃん……もしかしてヴェルデュに……?」


「これは……どうしたものかしら……」


「他のみんなも来たんだね。見てのとおり、私はヴェルデュになったの。日向くんを助けるためにね。邪魔しないでもらえるかな?」


 そう言って北園が、やって来た四人に右の手のひらを向ける。

 彼女から明確な殺気が感じられた。超能力を行使する気だ。


 その北園の攻撃を阻止するため、本堂が動く。


「くっ、()むを得ん……!」


 もともと日向を拘束していたツタを切断するためこの部屋に突入した本堂は、すでに北園との間合いも詰まっている。彼女の側頭部を狙って左ハイキックを放った。


 だが北園は、構えていた右手を戻し、右腕で本堂の攻撃をガード。

 その場で微動だにせず、超人的な威力を誇る彼の蹴りを受け止めてみせた。


「何だと……!」


「ひどいなぁ本堂さん。女の子の顔を蹴ろうとするなんて」


 そう告げて、北園は空いている左手を本堂に向けて振るう。

 彼女の指先がわずかにかすったものの、本堂は素早く後退して、攻撃を回避した。


 ……と思われたのだが。

 北園の指先がかすった本堂の腹部から出血。

 しかも、それなりの量の出血だ。


「ぬ……! 指先で肉を(えぐ)ったか……!?」


「ふふ、すごいでしょ。今の私なら、本堂さんにもシャオランくんにも腕相撲で勝てるよ」


 そして北園は、飛び退いた本堂が着地するより早く右の手のひらを向けて、”念動力(サイコキネシス)”の衝撃波を発射。本堂はガードしたものの真正面からこれを受けて、コックピットルームの出入り口のドアに叩きつけられてしまう。


「がはっ……!?」


「ほ、ホンドー!?」


「とにかく、良乃を止めなければ! シャオラン、手を貸してください!」


 今度はエヴァが北園に攻撃。

『星の力』を行使し、彼女の周囲の空間を急速冷却。

 空間ごと北園を凍らせ、彼女の動きを止めた。


「う……! でも、効かないよ! ヴェルデュになった私は、冷気にも耐性があるんだから……」


「けど、キタゾノの動きが一瞬でも止まれば、それで十分!」


 そう言ってシャオランが北園の懐に潜り込んだ。

 彼女を失神させるため、拳を構える。


 しかしシャオランが北園に拳を繰り出す前に、彼女がシャオランをひと(ひと)み。すると、バチィッという音と共に、シャオランがその場に崩れ落ちてしまった。


「あぐぅ!? か、身体がしびれて……!」


 北園の目の前で動きを止めてしまったシャオラン。

 そんな彼を、北園は左から右へ右手を振るって薙ぎ払った。

 シャオランは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。


 さらに北園は、エヴァも一瞥(いちべつ)

 すると彼女もシャオランと同様に、いきなりその場に崩れ落ちてしまった。


「あうっ!? 今のは、電撃……!?」


「ごめんねエヴァちゃん。エヴァちゃんもかわいいから、あまり傷つけたくないんだけどね」


 そして、いまシャオランとエヴァが動きを止めてしまったのを見て、身体が凍結したまま倒れているジャックがつぶやいた。


「俺たちの時と同じだ……! 今までキタゾノは自分の手を使って超能力を制御する必要があったのに、アイツは今、二人を見ただけで、アイツらの身体に電撃を流したんだ! キタゾノは相手を視認するだけで超能力が使えるようになってる!」


「そう。今の私は、見た物や場所をピンポイントで狙って超能力を発動できる。その気になれば、みんなの身体の中の血液を直接凍らせたりとか、脳髄だけを狙って電撃で焼いたりとかもできるんだよ。そこまではしない私の優しさに感謝してほしいな」


「へッ……。キタゾノの口からそんなエグい攻撃方法の数々が飛び出てくるなんてな……。これにはきっとヒュウガもドン引きだぜ? あーあ、ヴェルデュになって、逆に嫌われちまいそうだな?」


「……ジャックくん、うるさい」


 ジャックの言葉が頭にきたのか、北園はジャックに右の手のひらを向けた。彼にトドメを刺すつもりだ。


 だが、北園がジャックの方を向いた瞬間、ミオンが動き出した。

 シャオランがやった時よりも素早く、北園との間合いを詰める。


「ナイス引き付けよ、ジャックくん!」


「……知ってたよ。今のが私の気を引くための挑発だってことくらい」


 すぐさま北園はミオンの方を向き直し、彼女を視界に(とら)える。

 そして彼女の脳を電撃で焼くため、超能力を発動。


「ミオンさんは手加減できる相手じゃない。悪いけど、仕留めさせてもらうから」


 ところが、ミオンは(たく)みな重心移動によってダッシュの軌道を瞬間的に変え、北園の視界の外側へ逃れた。ミオンはそのまま速度を落とすことなく、視界の外から北園に肉薄。


「う、うそ!?」


 すぐさま北園は、再度ミオンを視界に入れようとする。

 対するミオンは、北園の懐に潜ると同時に身を(かが)め、またも彼女の視界から逃れた。


「私を()めすぎよ北園ちゃん。私を見るだけで殺すことができる……その程度で私に勝てると思った?」


 そのままミオンは、北園のみぞおちに寸勁を打ち込む。

 強烈な殴打音が響き、北園は悶絶した。


「はっ!!」


「あっ!? う、ぐぅぅ……!」


 その場にうずくまり、北園は顔を上げることもできない。

 そんな彼女の頭部を狙って、ミオンはゆっくりと拳を構えた。


「北園ちゃん……ごめんなさいね。こうなってしまった以上、せめて苦しまずに終わらせてあげる」


 ……ところが。

 そのミオンを、後ろから日向がガッシリと捕まえるようにして止めた。


「待ってくださいミオンさんっ!」


「きゃっ!? ひ、日向くん!? 何してるのかしら!?」


「ダメですミオンさん! 北園さんを殺さないで! まだ……まだ何か北園さんを助ける方法がきっとあるはずですから!」


「そ、そんなこと言われても……!」


 この隙を、北園は見逃さなかった。

 その場から飛び退き、このコックピットルームの奥へ移動。


 皆から距離を取った北園は、両目を見開く。

 すると、日向たちがいる空間で、熱気と冷気が渦巻き始める。


「これは……まさか”氷炎発破(フュージョンバスター)”!?」


「いけない! みんな、身を守って!」


「私たちの……邪魔をしないでっ!!」


 北園が叫ぶと同時に、このコックピットルームが大爆発に包まれた。

 この場にいる全員……日向も容赦なく爆発に巻き込まれてしまった。


 日向の全身が爆撃によって痛み、爆風で目の前が見えない。

 耳鳴りもひどく、キーンという音以外に何も聞こえない。


 だが、そんな耳鳴りの音をかき分けるように、北園の声が鮮明に聞こえた。恐らくは彼女の”精神感応(テレパシー)”の超能力だ。


(日向くん。とりあえずこの場は、あなたを連れてはいけないみたい。でもすぐに迎えに来るからね。……楽しみだね。私たち二人だけの世界は、もうすぐそこに……)


「北園、さん……!」


 やがて日向の視界が回復し、耳鳴りも止んだ。

 その時にはもう、北園はこの場から姿を消していた。

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