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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1528話 地の緑人、空の緑人

 近くのビルを破壊して、ロストエデンが姿を現した。


 四つん這いの体勢でありながらも周囲のビルの五階ほどの高さに達している、巨大な怪物へと進化している。

 左右の肩から生えている白い花弁は、まるで大きなマントのようにロストエデンの背中全体を覆い隠し、(すそ)が地面についてしまっているほどのサイズだ。


「ちぃッ! 出やがった、ロストエデンだ!」


「落ち着け日影! レオネ祭司長さえ倒せば、ロストエデンは倒せるはずなんだ! 彼女がロストエデンの本体、心臓なんだから! ロストエデンはガン無視してレオネ祭司長に集中しよう!」


 日向が日影にそう声をかけたが、ここでエヴァが緊迫した声を上げる。


「レオネが姿を消しました! 彼女の気配もここから一キロほど遠くへ移動しています!」


「”瞬間移動(テレポート)”の能力か! しまった、逃げられた!」


 今すぐレオネ祭司長を追いかけたいところだが、目の前のロストエデンもまた日向たちを逃がすつもりはないらしい。すでに攻撃態勢をとっている。


 ロストエデンは手足を動かし、日向たちめがけて這い寄ってきた。四つん這いの体勢ではあるが、巨大であるため一歩一歩が大きく、その手足の回転数も赤ん坊の倍以上。結果として動きが遅いなどということはなく、むしろ自家用車並みの速度で日向たちに迫ってくる。


 これほどの巨体となると、近寄ってくるだけでも非常に危険だ。

 日向たちは潰されないよう、急いでロストエデンから距離を取る。


「どうせ倒しても強くなって復活するんだ。どうにか無視したいところではあるけど……」


「レオネの移動先は、ちょうどロストエデンを挟んだ向こう側です。最短距離でレオネを追いかけたいなら、目の前のロストエデンとかち合ってしまいますね」


「そんなことだろうと思った! 仕方ない。倒すまではせずとも、いくらかダメージを与えて動きを(にぶ)らせておくくらいはした方がいいな。ここでこいつを無理やり無視したとしても、また後ろから追いかけてくるだろうし」


 日向たちは、いったんロストエデンと交戦することに決めた。

 まずは日影が”オーバーヒート”を使い、炎を巻き起こしながらロストエデンの左手に猛接近。


「邪魔だッ! ぶった斬ってやるッ!」


 音速の飛行速度を乗せて、バーナーのような鋭い炎を噴き出す『太陽の牙』で、日影はロストエデンの左手首を思いっきり切り裂いた。


 その炎の火力と音速の勢いもあって、斬撃の威力は尋常ならざるもの。ロストエデンの手首は、『太陽の牙』の刀身以上の深さでバッサリと斬られた。


 歩行に使っていた手首を焼き斬られ、ロストエデンの動きが止まる。

 その隙にシャオランがロストエデンの真下へもぐりこみ、”空の気質”の領域を展開。


 シャオランの”空の気質”が、ロストエデンの頭部を(とら)えた。

 その瞬間、シャオランはその場で突き上げるような掌底(しょうてい)を繰り出す。


「やぁぁッ!!」


 空の練気法”無間”による遠距離打撃。

 凄絶な殴打音が鳴り響き、巨大なロストエデンの上半身がわずかに浮いた。


 さらにそこへ、エヴァが重力操作の能力を使用。


「堕ちよ……”アバドンの奈落”!!」


 その詠唱と共に、ロストエデンがいる場所にピンポイントで強力な重力場が発生。ロストエデンは(ひたい)から顔面を地面に強打。しかし手足は踏ん張り、四つん這いの体勢を維持している。


「グラウンド・ゼロさえ傾けた私の重力、こんなものではありません。このまま出力を上げて、ぺしゃんこにして差し上げます」


 そう宣言するエヴァだったが、彼女の周囲に緑色に発光する(つぼみ)が咲いた。先ほどレオネ祭司長も使用していた、どこにでも咲く(つぼみ)の爆弾だ。


「これは、いったん退かなければ……」


 すぐさまその場から大きくジャンプして飛び退くエヴァ。

 (つぼみ)は大爆発を起こし、先ほどまでエヴァがいた場所を木っ端みじんに破壊した。


 エヴァが飛び退いた先にはスピカがおり、声をかけてきた。


「エヴァちゃん、大丈夫だったー!?」


「問題ありません。かすり傷一つすら負っていません」


「よかったー。それにしても、ロストエデンもレオネ祭司長と同じ能力を使うんだね。まぁ、あの人がロストエデンの本体なら、つまりあの人がロストエデンそのものなワケだし、何も不思議じゃないか!」


「そうなりますね。さぁ、もう一度、私たちの手番(ターン)です」


 そう言ってエヴァは再びロストエデンに攻撃を仕掛けに行こうとする。


 だがその時、彼女たちの右上空から緑色のエネルギー弾が飛んできて、エヴァの行く手を塞ぐように着弾。エネルギー弾は着弾と同時に緑色のスパークをまき散らして爆発した。


「くっ!? 今のは……!?」


「エヴァちゃん! あそこ!」


 スピカが右上空を指さす。

 そこにいたのは、三体ほどの緑色の人型の異形。


 その人型は、星のような形の頭をしており、その顔に鼻や口はない。手足は魚のヒレでも付いているかのように幅広い。身体のあちこちから細いツタが飛び出て、触手のように(うごめ)いている。そして、何の能力を使っているかは分からないが、宙に浮いていた。


 ともすれば、地球を侵略しに来たエイリアンかと思うような外見。

 恐らくこの異形たちは、四度目の進化を遂げた人型ヴェルデュ。

 元をたどれば、この街に住む人間だったであろう者たちの成れの果てだ。


「人型のヴェルデュですか。また新しい姿に進化したようですね……」


「腕四つで()い回ってた時より人間っぽくはなってるけど、なんかもう、行くところまで行っちゃったって感じの見た目だねー……」


 二人が新たな姿の人型ヴェルデュを観察しているうちに、また新手の人型ヴェルデュが空を飛んで集まってきた。周囲のビルの向こうから、次から次へと集まってきて、すでにその数は二十体近くになっている。


「すごい集まってきたー!?」


「あの数で集中砲火をされたら、ロストエデンと戦うどころではありませんね。ロストエデンは他の皆さんに任せて、私は彼らの相手をしましょう。”セトの暴風”!」


 エヴァが人型ヴェルデュの群れに杖を向けて、その杖の先端から竜巻を射出。巻き込んだ標的をミキサーのように粉砕する破壊の嵐だ。


 しかし人型ヴェルデュたちは散開し、エヴァの竜巻を回避。そのままエヴァを取り囲み、四方八方からエネルギー弾を射出してきた。


「ウゥゥン」


「ビィィ」


 回避不可能とも思える弾幕が全方位から一斉に襲い掛かってきたが、エヴァもまた反応速度、動体視力は人類の限界に達するレベルで鍛えられている。身軽な動きで次々とエネルギー弾を回避し、見事に無傷でやり過ごした。


 エネルギー弾を回避すると、エヴァは杖の石突を剣のように振るう。

 その石突から真空の刃が射出され、横一列に並んでいた四体の人型ヴェルデュの首をはね飛ばした。


 仲間がやられた人型ヴェルデュたちは、そのやられた仲間の穴を埋めるようにフォーメーションを組み直す。そうしてエヴァを包囲しているうちに、また新たに飛来してきた人型ヴェルデュたちが、ロストエデンの相手をしている仲間たちを襲撃し始めた。


「四つ腕の時より凶暴性は無くなったようですが、そのぶん頭を使うようになりましたね」


「だねー……。人類がこの地球の覇者になったのは、力じゃなくて頭を使うようになったのがきっかけだ。ともすれば、このヴェルデュたちの進化は、ワタシたちが思っている以上に厄介なものになったかもねー……!」


 スピカの言葉にうなずきつつ、エヴァは人型ヴェルデュたちとの交戦を再開した。

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