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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1526話 予防薬完成

 本堂がヴェルデュ化予防薬のベースとなる薬を完成させてくれたようだ。

 後は仕上げにエヴァの”生命”の権能で、この薬でロストエデンの細胞の働きを抑えられるよう、効能を付与してくれれば完成する。


 本堂が調合した、七本の試験管に入った薬を見て、エヴァも満足そうにうなずく。


「これなら問題なさそうです。それではお待ちを。ヴェルデュ化予防薬完成のため、最後の仕上げを始めます」


 そう言ってエヴァは、本堂が調合した薬に手をかざす。

 彼女の手から発せられた蒼い光が、七本の試験管をぼんやりと照らした。


「……これで完成です」


 エヴァがそう告げた。

 薬の見た目に変化はほとんどないが、美しい蒼の光に照らされた後だからだろうか、どことなく先ほどより神聖な雰囲気が感じられた。


 この薬は、予防薬であると同時に治療薬の役目も持っている。すでに彼らの体内に侵入しているロストエデンの細胞がいたら、予防と同時にそれを殺菌してくれる優れものだ。


 さっそく予防薬が皆に配られる。

 これを使うのは北園、本堂、シャオラン、エヴァ、ジャック、コーネリアス、ミオンの七人だ。

 日向と日影は、ロストエデンの細胞も自動的に焼却する”再生の炎”があるので予防薬は必要ない。


「これ……飲み薬タイプ?」


 シャオランが、本堂とエヴァにそう尋ねる。

 その質問に、エヴァがうなずいて答えた。


「そうです。グイっといってください。グイっと」


「わ、わかった。グイっとだね?」


 エヴァに促され、シャオランは予防薬をグイっといった。

 ごくりと飲み込んだ瞬間、シャオランは悲鳴を上げた。


「げー! マズい! これめっちゃくちゃマズいんだけどぉ!?」


「なるほど、マズいのですね」


「貴重な情報を有難(ありがと)う、シャオラン」


「毒見役にしないでくれる!? ホンドーはもうちょっと良い感じの味に作れなかったのぉ!?」


「良薬は口に苦しと言う。マズくなるのは仕方のない事なのだ」


 ……と、その時。

 再び、この飛空艇が大きく揺れた。

 空を飛べるようになったムカデ型ヴェルデュが体当たりをしているのだ。


 ここで歓談をしている場合ではない。

 すぐにこの予防薬を飲み干し、飛空艇周囲のヴェルデュを掃討後、ロストエデンの本体と思われるレオネ祭司長を倒さなければならない。


 急いで予防薬を自身の口に流し込む、他の仲間たち。


「ふむ。本当に不味(まず)いな。狭山さんのドリンクよりマシだが」


「これより不味いって、どんな猛毒を作ったのですか狭山は」


「え~そうかしら? 普通にイケると思うわよ私は~」


「アーリアの民ってのは悪食が多いのかよ?」


「実際、猛毒そのものナ原初の海の水ヲ飲んで生きてきたらしいしナ」


 これで準備完了。

 飛空艇の操縦は引き続き北園に任せ、日向たちは甲板へ向かう。


 しかし、ここでジャックとコーネリアスが足を止めた。


「ヒュウガ。俺とコーディはここに残って、飛空艇を操縦するキタゾノを守っておこうと思うぜ」


「そうか、また生存者がヴェルデュ化して、この飛空艇の中で暴れる可能性もあるからな……。分かった、頼む。北園さんだけじゃなくて、他の生存者たちも、どうか」


「分かってる。さっき、あんな話をしたばっかりだしな。オマエが守りたいモン、代わりにキッチリ守ってやるからよ」


「それじゃあ、ARMOUREDの二人が抜けたぶん、レオネ祭司長を探す人手が減っちゃうから、ワタシが日向くんたちについて行くよー」


 急遽(きゅうきょ)、ジャックとコーネリアスが飛空艇に残ることになり、日向、日影、本堂、シャオラン、エヴァ、ミオン、スピカの七人が甲板へ向かうことに。


 コックピットから出る直前に、北園が日向に声をかけてきた。


「日向くん!」


「ん、どうしたの北園さん?」


「えっと……また、後でね」


「うん。今回の戦いも必ず勝って、また生きて会おう」


 何やら北園は他にも伝えたいことがありそうな様子だったが、けっきょく他に話はなく、お互いに挨拶を交わすだけに終わった。それでも日向は北園に声をかけられたことで、改めてやる気がみなぎった様子で、コックピットを後にした。


 甲板へとやって来た日向たち七人。

 少し前まで降っていたはずの雨は止み、いつの間にか夕焼けの曇り空だ。


 すでに北園が操縦する飛空艇と、空を飛ぶムカデ型ヴェルデュが戦闘を繰り広げている。ちょうど、飛空艇が発射したエネルギー弾のミサイルが、一体のムカデ型ヴェルデュを撃ち落としたところだった。


 甲板に出た日向たちも、さっそく戦闘を開始。

 本堂とエヴァが真空刃を射出し、シャオランとミオンが風の練気法”衝波”を使い、ハチのヴェルデュや蟲のヴェルデュを撃ち落としていく。


 残っていたもう一体のムカデ型ヴェルデュが、甲板の七人めがけて突っ込んできた。


「ギャシャアア!!」


 そのムカデ型ヴェルデュの正面で、ミオンが”風の気質”を集中させた右の手のひらを突き出す。


「”如来神掌”!!」


 すると、透明で分厚い壁に正面激突したかのように、突っ込んできたムカデ型ヴェルデュは頭から押し潰されてしまった。ミオンが放った巨大な衝撃波によって粉砕されたのだ。


 車のように巨大なトンボのヴェルデュも飛来してきた。その前脚は獲物を捕まえることに特化したのか、より刺々しく、そして(たくま)しくなっている。


「ブゥゥゥン」


 トンボのヴェルデュが日影を捕まえようと、突撃してきた。

 その飛行速度はすさまじく速く、マッハに届くかと思うほど。

 あの巨体でこの速度を出すのは、それだけで驚異的だ。


 しかし日影は、すでにトンボのヴェルデュの接近の気配を(とら)えていた。事前に敵の接近を知っているなら、マッハで向かってこようが対処は可能。『太陽の牙』を力の限り振り下ろして叩き潰した。


「おるぁッ!!」


「ブブ……」


 さらに、日向の方にもトンボのヴェルデュが一体飛んでくる。

 日向は日影のようにタイミングよくトンボのヴェルデュを叩き潰すことはせず、その場で『太陽の牙』を縦にまっすぐ、どっしりと構え、トンボのヴェルデュの方から刀身に激突させて両断した。


 また別のトンボのヴェルデュが、日向の背後から接近。

 その発達した前脚で、日向を捕まえようとする。


 しかし日向は、背中に目でもあるかのように、振り向くことなくしゃがんでトンボのヴェルデュを回避。それと同時に、自身の頭上に向かってイグニッション状態の『太陽の牙』を一振りして、頭上を通過しようとしたトンボのヴェルデュを真っ二つにした。


 今の日向の戦いぶりを見て、スピカが声をかけてきた。


「なんだか調子が良いみたいだねー日向くん! 動きが軽いというかー。心なしか、()き物が落ちたような顔になった気がするよー?」


「実際、そうだと思います。俺は今まで心配してました」


「心配してたって、何を?」


「北園さんがヴェルデュ化して、俺がそれを始末しなければならなくなる展開です。北園さんが見たっていう『俺が北園さんを刺し殺す予知夢』が実現するとしたら、それが可能性としては一番高かったですから。でも、北園さんもヴェルデュ化の予防薬を飲んだから、もうそんな心配をする必要もなくなりました」


「なるほどねー。最悪の予知夢も回避できた。ロストエデンの倒し方も分かった。もうワタシたち、後は勝つだけだね?」


「ですね。……エヴァ、レオネ祭司長の居場所は分かるか?」


「はい。もうこの真下あたりです。さっそく降下しましょう。重力操作の能力で、皆さんを地上に降ろします」


「よし。それじゃあ、飛び降りよう!」


 日向の合図で、七人は一斉に飛空艇からジャンプ。

 ロストエデンを倒すため、リオデジャネイロの街中へ飛び込んでいった。

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