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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1525話 肉体と心臓

 ブラジルを消し飛ばして、ロストエデンの細胞を一つ残らず滅却する。

 それが、エヴァが提示した、ロストエデンを倒すための方法。


 それ以外にも方法はあるのではないか、と日向は考えた。

 狭山は『星殺し』を、日向たちでも超えられる障害として設定していると。


 ここまで見てきた、あらゆる要素に目を向ける。

 どこかにきっと、ロストエデンを倒すためのヒントがあるはずだ。


 ロストエデンの外殻と本体。

 この国に出現した、無数のヴェルデュ。

 ブラジル全土を植物で覆った緑化現象。


 エヴァが言う、ロストエデンの「生きているかも死んでいるかも分からない気配」と、この大地に張り付いたかのように回収できない『星の力』。


 突如として復活した、レオネ祭司長。

 ヴェルデュ研究班による、ロストエデンの死体の解剖結果。

 あらゆるヴェルデュに付着している、ロストエデンの細胞。


「……待った」


 日向の中で、何かが引っ掛かった。

 そしてしばらく考え込み、再びつぶやく。


「そうか……きっとこれしかないはずだ……」


「日向、何か分かったのか?」


 日影がそう尋ねてきた。

 日向はうなずくが、まだ迷いがある表情。


「たぶん……。これもほとんど消去法というか、確定的な証拠はないんだけど……」


「そう言われると一気に不安になってくるんだよな、これまでのロストエデン討伐失敗のパターンを考えると」


「ごもっとも……」


 日影の言葉を受け、口をつぐんでしまう日向。

 そんな彼に、ジャックが助け舟を出した。


「全ての疑問を排除して、最後に残った事実は、それがどんなに信じられなくて馬鹿馬鹿しくても、それこそが真実だ……って、どっかの推理小説で言ってたぜ。だからオマエも言ってみろよ。消去法も意外とバカにできねーモンだ」


「ジャック……。分かった。それじゃあ」


 そう言って日向は、いま思い至った考えについて、皆に説明を始めた。


「まず、俺たちが戦ってきた白いヴェルデュは、実はロストエデンの外殻だった。だからロストエデンには他に本体がいて、それを倒すことがロストエデンの討伐につながる。それは間違えてないと思う」


「第四形態のロストエデンを倒しに行ってた時に、お前が説明してた考察だな。けどよ、お前が言ってた『ロストエデンを派手に消し飛ばす』って方法でも、結局ロストエデンは倒しきれずに復活しちまったぞ。あの外殻の中に極小の本体がいるってのは違ってたみてぇだな」


 日影が口を挟んできたが、それを日向はうなずいて受け入れ、説明を続ける。


「確かにあの方法じゃロストエデンは倒せなかった。あの外殻にロストエデンの本体はいなかった。だから、外殻の外にいるのだとしたら?」


「外殻の、外……?」


「漫画とかゲームでたまに見るんだけどさ、肉体の外に心臓がある敵キャラがいるんだ。そいつらは、そいつの肉体が死んでも、生命の源である心臓は別の場所で動き続けているから肉体も実質死んでないっていう、疑似的(インチキ)な不死身状態になってる」


「ロストエデンも、そのパターンだって言いてぇのか」


「うん。ロストエデンはきっと、外殻と本体がそれぞれ独立して行動している『星殺し』なんだ」


 その日向の考察を聞いて、エヴァもまた何かに気づいたように発言する。


「なるほど……。あのロストエデンの外殻には、奴の心臓である『本体』がいなかった。心臓がないから、一種の仮死状態だと言える。あのロストエデンの外殻の『生きているかも死んでいるかも分からない気配』は、きっとそういうことだった……!」


「倒しても倒しても、ロストエデンを倒せなかったワケだよ。『星殺し』を倒すには、『星殺し』本体の討伐が必須。その本体がずっと別の場所にいたんだから」


「しかし……その考察の筋は通っていますが、結局、そのロストエデンの『独立した本体』というのはいったいどこに?」


「大丈夫。それについても考えがある」


 エヴァの疑問に、日向は力強くそう答えた。


「これまで見てきた『星殺し』の本体は、その『星殺し』の権能にちなんだ人型の怪物だった」


「そうですね」


「このブラジルで、俺たちの敵となって現れたのは、ロストエデンとヴェルデュ、そしてもう一人いるよな?」


「もう一人? ……あ、レオネ祭司長! まさか日向、あなたが言いたいのは……!」


「うん。きっとレオネ祭司長こそがロストエデンの本体なんだ。一見するとロストエデンでもヴェルデュでも、ましてやレッドラムでもない、あの人の役割。消去法で考えると、これしかない」


「『星殺し』の本体の共通点である、”生命”の権能にちなんだ見た目の怪物かは疑問が残りますが……人型であることは間違いありませんね……」


「だから、ロストエデン復活に合わせてレオネ祭司長が攻めてきたこの現状は、むしろチャンスとも言えるんだ。敵の最大の弱点が向こうからやって来てくれたんだから」


 日向の説明を聞いて、シャオランやジャックは目を見開き、日影やミオンはニヤリと微笑む。本堂やコーネリアスは何のアクションも見せなかったが、どこかやる気に満ち溢れたオーラを発しているように感じる。


 皆が、今度こそいけると感じたのだ。

 レオネ祭司長を倒せば、ロストエデンは今度こそ完全に終わると。

 全てのロストエデンの細胞は活動を停止し、もう二度と復活することはなくなる。


 そうと決まれば、さっそくレオネ祭司長を探し出し、倒さなければならない。


 レオネ祭司長さえ倒せばいいのであれば、極端な話、もうロストエデンを相手にする必要はない。エヴァの気配感知でレオネ祭司長を探し、この飛空艇で移動し、一気に仕留める。


 日向たちがそう考えた矢先に、この飛空艇に衝撃が走った。

 機内も揺れて、日向たちは体勢を崩しそうになる。


「わわっと!? な、なんだ!? 何かぶつかったのか!?」


「日向くん、敵襲だよ! 大きなムカデのヴェルデュが空を飛んで襲い掛かってきてる!」


 飛空艇を操縦する北園が叫ぶ。


 コックピットのモニター画面で飛空艇の外を見てみると、彼女の言うとおり、大きな羽がいくつも生えたムカデのヴェルデュが空を飛び、この飛空艇を襲撃していた。数は二体。


「ギャシャアアア!!」


「ギギギ! ギギギ!」


 長い身体をうねらせながら空を飛ぶ姿は、まるで東洋の龍。

 その身体で体当たりを仕掛けたり、大顎で噛みつくなどして、ムカデ型ヴェルデュは飛空艇を攻撃する。


「うわ、ムカデが空飛んでる!? 政府市庁舎で出てきた時はあんな姿はしてなかったのに……。ロストエデンの復活に合わせて、また進化したのか!」


 さらに、ムカデのヴェルデュだけではない。自動車ほどの大きさに巨大化し、針を射出するようになったハチ型ヴェルデュ。もとは手のひらほどのサイズだったのに、今や枕ほどのサイズになった、三十体ほどの群れで行動する蟲型ヴェルデュもいる。


「連中の進化も、いよいよ来るところまで来たって感じだな! アイツら雑魚的ポジションのクセして、どいつもこいつも『星の牙』レベルのヤベー見た目してやがる!」


 やや楽しそうに、笑みを浮かべながら声を上げるジャック。

 ロストエデンの倒し方も分かり、余裕が出てきたか。


 まずはこのヴェルデュたちを突破しなければ。

 さっそく飛空艇の甲板に移動しようとした日向たち。

 しかし、そんな彼らを本堂が呼び止めた。


「待て。ここまで来て、ヴェルデュ化発症でリタイアなどという事態になったら目も当てられん。準備は万端にしていくべきだ」


「本堂さん。そういうこと言うってことは、つまり……」


「ヴェルデュ化予防薬のベースが完成した。後はエヴァが手を加えてくれれば、出来上がりだ」

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