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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1523話 正義の覚悟

 日向、ジャック、エヴァの三人の視線の先で、ロストエデンが四回目の復活を果たしてしまった。


「あれが、ロストエデンの復活……? なんというか、イメージよりも随分と気色悪かったな……」


 日向がつぶやく。

 一方で、ロストエデンを初めて見たジャックが日向に声をかけてきた。


「アイツがロストエデンか。想像してたよりデケェな。これで何度目の復活なんだ?」


「これでたしか四回目だったと思う。それと、あの大きさはこれまでの中でもぶっちぎりで最大サイズだよ。というか、あいつ絶対に復活するたび大きくなってるよ……」


 それから日向は、エヴァに声をかけた。

 もともと彼がこのロストエデンの復活シーンを見ることになったのは、これを見るために外へ飛び出したエヴァを追いかけたのがきっかけだ。


「なぁエヴァ。どうしてここまでしてロストエデンの復活を見たかったんだ?」


 先ほどは日向の質問に答えなかったエヴァだが、今度は答えた。

 ……何やら青ざめた、絶望の表情を浮かべながら。


「わ、私がロストエデンの復活を見たかったのは、ロストエデンが復活する瞬間をこの目で直接見れば、奴がどのような仕組みで復活するのか、どういう権能が働いて復活するのかが分かると思ったからです……」


「それで、分かったのか? ロストエデンが復活する仕組みは?」


「はい、分かりました……。もしかしたら、ですが、奴を倒す方法も……」


「え、本当に!?」


「はい……。ただ、この方法は……」


 ……と、その時。

 日向たちの頭の中で、北園の声が響いた。

 彼女の”精神感応(テレパシー)”の超能力だ。


(日向くんたちー! こっちはそろそろ生存者の集合が終わりそうだよー! 本堂さんの薬作りも順調みたいー! 早くエヴァちゃんを呼んでって本堂さんが言ってたー!)


「これはいったん、話は後にした方がよさそうだな。エヴァ、移動しよう。今の話も、皆が集まっている時にしてもらった方が時間を短縮できる」


「そう……ですね。分かりました……」


 元気なさげに、エヴァは返事をした。

 いったい彼女は、何を知ってしまったというのだろうか。


 それから日向たち三人は移動。

 政府市庁舎の前に停泊させてある飛空艇の中へやって来た。


 日向たちが乗り込んだタイミングで、飛空艇は北園の操縦によって飛行を開始。ロストエデンが出現した地上から、空へと逃れた。


 飛空艇内の通路や小部屋には、北園たちが集めてくれた生存者たちがあちこちにいた。しかし彼らの表情はみな一様に疲弊しきっており、少し前のようにヴェルデュ化による疑心暗鬼で他人と言い争う者は、もはや一人もいなかった。


 コックピットへ移動しながら、ジャックが日向に話しかけてきた。


「なぁヒュウガ。俺も非常事態だと思って何も言わなかったけどよ、けっきょく生存者たちを飛空艇に乗せて空を飛ぶ展開になっちまったな」


「ああ……そうだな」


「ヴェルデュに攻撃されて負傷したことがあるヤツらも何人かいる。ソイツらがここでヴェルデュ化して、俺たちや他の生存者に襲い掛かって来るとも限らねー。またアラムみたいな犠牲者が出る可能性もあるぞ。それでもこのまま全員を乗せ続けるか?」


「だったら、ヴェルデュ化の疑いがある人たちを今からでも地上に降ろすか? ロストエデンも復活して、ヴェルデュたちも活性化し始めている、あの地上に」


「……ったく、意地の悪いこと聞いたら、意地の悪い答えを返されちまった。できるワケねーだろ、そんなこと」


 そのジャックの言葉に、日向も満足したようにうなずいた。

 再び表情を引き締めて、ジャックへ話を続ける。


「さっきエドゥが言ってたよな。『お前たちは、俺たちの楽園を破壊しに来た』。『お前たちはロストエデンを倒すためなら、ここの生存者たちを(ないがし)ろにしてもいいって思ってる』って」


「ああ……。言ってたな、そんな感じのこと」


「俺は、違うって主張したい。もうエドゥは俺たちの言葉も届かない怪物になったとしても、それでも。言葉で駄目なら行動で示す。俺は、この飛空艇に乗せた人たち全員を諦めたくない」


「ヒュウガ……」


「あのまま言われっぱなしっていうのは超絶(くや)しいし、さっきの場面でエドゥじゃなくて俺たちを信じてくれたあの人たちを裏切りたくない。何よりも、俺は俺自身に主張したい。俺はそんな楽な方法に逃げたりなんかしない。仮にも正義のヒーローを目指した人間として、助けられる人たちは助けたいって……!」


「……オーケー。オーケーだ。そこまで言われちゃ、俺も何も言えねーよ。エドゥに言われっぱなしはクソ腹立つってのは、俺もまったくの同感だしな。あの悲劇を繰り返さないよう注意しながら、全部上手くまとまる方法を考えようぜ」


「ジャック……ありがとう」


「それに、ロストエデンを完全に倒すことができれば、ヴェルデュ化を発生させるロストエデンの細胞も活動を停止して、もうヴェルデュ化発症の心配もしなくていいんだろ? エヴァが思いついたっていう『ロストエデンを倒す方法』が上手くいきゃ、ここにいる生存者たちもヴェルデュになることはない。晴れて、アメリカに招待できるってワケだ」


「そうか……そうだな。その通りだ。エヴァが言う方法で、今度こそロストエデンにトドメを刺せることを祈ろう」


 話はまとまり、一握(いちあく)の希望を胸に、二人はうなずき合った。

 その一方で、エヴァは話の中で自分の名前が出た時、より複雑な表情になっていた。

 

 やがて日向たち三人はコックピットに到着。

 すでにここには日向の仲間たちが集結している。


 北園はこの飛空艇を操縦中で、本堂は部屋の隅でヴェルデュ化予防薬のベースとなる薬剤を調合している。他の仲間たちはただ静かに、日向たち三人が戻ってくるのを待っていたようだ。


 日向たちがコックピットにやって来ると、日影が声をかけてきた。


「戻って来たか、お前ら。エヴァはどうして急に外に飛び出したりなんかしたんだ?」


「ロストエデンが復活する瞬間を見たかったらしい。それで、ロストエデンが復活する理由と、奴を倒す方法が分かったって」


「マジかよ、一大ニュースじゃねぇか。早く教えてくれよエヴァ。あのロストエデンがどうやって復活するのか。そして、どうやったらヤツを倒せるのか」


 皆の期待の眼差しがエヴァに集まる。

 そんな中、エヴァはただ一人、浮かない表情をしながら、説明を始めた。


「分かりました、お話しします……」

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