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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1518話 分かり合えない正義

 ヴェルデュとなったエドゥと戦闘になった日向たち。


 先に仕掛けてきたのはエドゥ。

 装備している三丁のアサルトライフルやガトリング砲、ミサイルランチャーに火炎放射器で、全てまとめて射撃してきた。


「消し飛べぇェ!!」


 このエントランスには、遮蔽物として使えそうなものがほとんどない。日向たちはそれぞれ散開してエドゥの射線から逃れる。


 北園とエヴァが電撃を撃ち出し、エドゥに攻撃。

 しかしエドゥは真正面からこの電撃を受け止め、耐えてみせた。


「くはァ! 効かねぇな、この程度の攻撃なんザ!」


 ジャックがデザートイーグルで、コーネリアスが対物ライフルで、それぞれエドゥを射撃。両者とも、狙いはエドゥの手足や肩などであり、心臓や頭部など確実に命を奪うようなポイントは避けて撃っている。


 二人の銃撃に対して、エドゥはジャックの銃弾を全身のツタで受け止めつつ、コーネリアスの対物ライフルだけは集中して回避した。


「あっぶねぇなァ!」


 言いながら、エドゥは二人に向かってガトリング砲を射撃。

 ジャックとコーネリアスは左右に分かれ、銃弾を避ける。


 その間に日影と本堂がエドゥの左右から接近。

 それぞれ『太陽の牙』と右腕の刃を振りかぶり、攻撃を仕掛ける。


 だが、二人の接近にいち早く気づき、エドゥは反撃を仕掛けてきた。日影にはミサイルランチャーを、本堂には火炎放射器を、それぞれお見舞いする。


 日影たちもまた攻撃の失敗を悟り、事前に離脱。

 二人が通過するはずだった地点を、それぞれ爆撃と爆炎が包み込んだ。


 するとここで、シャオランが”空の気質”の空間を展開。

 その空間でエドゥを(とら)えると、その場で掌底を繰り出した。


「やぁッ!!」


 シャオランの空の練気法”無間”。

 ”空の気質”の空間内にいる相手ならば、シャオランがどこで拳を繰り出そうと攻撃が命中する。


 シャオランにまったく触れられていないにもかかわらず、エドゥの腹部に重い衝撃が走る。そしてエドゥは壁まで吹っ飛ばされた。


「ぐぅゥ!? はは、やるじゃねぇカ……!」


 これまで強大な敵を何度も沈めてきたシャオランの拳を、エドゥはまともに喰らいながらも耐えきってしまった。


 実際のところ、シャオランはエドゥを殺さないよう、手加減して攻撃していた。


 今ここにいる日向たちはフルメンバーだ。

 日向たちは六人全員いて、ARMOUREDの二人もいて、ミオンまでいる。

 彼らがその気になれば、エドゥ一人くらいはたやすく撃滅することができるだろう。


 それができないのは、躊躇(ちゅうちょ)しているからだ。


 この場には多くの生存者たちがいるが、彼らの中にはエドゥを慕っている者も多い。エドゥアルド・ファミリーの構成員などがその代表格だ。


 そんな彼らが、エドゥのことを心配そうに見ている。

 自分たちのリーダーはどうなってしまうのかと、不安そうにこの戦闘を見守っている。


 彼らの心境を思うと、下手にエドゥの命を奪うことができなかった。


 それに加えて、先ほどのエドゥの言葉で、ここにいる生存者たちは「もともと日向たちはこのリオデジャネイロという、緑化現象で作られた生存者たちの楽園を終わらせるために来た」という事実を再認識した。


 ここでエドゥを殺せば、日向たちに対する生存者たちの心境がさらに悪化する。そうなれば生存者たちは日向たちに反発し始めて、いよいよ彼らをこの街から退避させるどころではなくなるだろう。


 そして肝心のエドゥは、日向たちが手を出しあぐねているのをいいことに、銃火器を思う存分撃ちまくる。

 時には生存者たちをギリギリ巻き込むかどうかという射撃も織り交ぜ、日向たちに「生存者が巻き込まれないよう守らねば」という意識を植え付けてくる。


「エドゥはかなり駆け引き上手な面もある。この状況を狙って作り出すために、戦闘前にあんな啖呵(たんか)を切ったのだとしたら……くそ、やってくれるよ……!」


 せめてエドゥの武装を解除しようと、日向はエドゥが触手で装備しているガトリング砲めがけて斬りかかる。


 しかしエドゥは日向の接近を察知し、逆にタックルを喰らわせて日向を吹き飛ばしてしまった。


「おらァ!!」


「うぐっ!?」


 日向が壁まで飛ばされ、叩きつけられてしまう。

 その隙を狙って、エドゥが全装備の銃口を日向に向けた。


「お前が一番気に入らなかったよクサカベ。いかにも温室育ちで、理想ばかりペラペラと語って、結果としてこの街を地獄に変えたお前がナ! 粉々になりやがれェ!!」


 エドゥが全ての銃器を集中砲火してきた。

 ガトリング砲の徹甲弾、ランチャーのミサイル。

 火炎放射器の炎、アサルトライフルの弾丸。

 その全てが日向に襲い掛かる。


 逃げ道を塞ぐように弾丸をばら撒いてきたなら、日向は回避のしようがなかっただろう。

 しかし、エドゥは日向のみ一点を狙って射撃してきた。これならギリギリ避けられる。


 日向は大きく右へ跳んで、エドゥの射撃を回避。

 再びエドゥの武装を狙い、斬りかかる。


「俺はまだ、諦めてない! 確かに俺はこの街を救えなかったかもしれない! けど、まだここに生きている人たちがいる! 彼らを救うっていう理想は、まだ諦めてない!」


 言いながら、日向がイグニッション状態の『太陽の牙』で斬りかかったが、エドゥに避けられた。


 そのエドゥの回避先に回り込むように本堂、日影、エヴァもまた立て続けに斬りかかるが、エドゥはそれらの攻撃も避けてしまい、大きくジャンプ。


 飛び上がったエドゥは、下にいる日向たちに向かって銃火器を一斉射撃。

 空襲のような攻撃が降り注ぐが、すぐさまその場から退避して、日向たちはエドゥの攻撃を回避。


 着地したエドゥは、先ほどの日向の言葉に対して、言い返してきた。


「嘘ついてんじゃねぇヨ! どうせお前ら、もうここにいる生存者たちを避難させるつもりはねぇんだロ!?」


「……!」


 それは、先ほどジャックにも言われたことだ。

 日向たちは、ここにいる生存者たちを見捨て、ロストエデン討伐に集中するべきだという話をしていた。


 日向はまだその考えに完全に賛同したわけではなかったが、まさかここでエドゥの口からその話が出てくるとは思わず、固まってしまっていた。


 それを、図星を突かれたのだと受け取ったのだろう。

 エドゥは得意げに、話を続ける。


「少し考えりゃ分かることダ。あの飛空艇と、飛空艇を操縦する人間。ここにいる生存者たちを避難させるためだけに、この二つの重要な戦力を手放すなんざ、そんなバカな真似はできねぇよなァ?」


「しまった、カマをかけたのか……! 最初から憶測で『俺たちが生存者を見捨てるつもり』なんて言ったな……!」


「そもそも、お前らはこの楽園を破壊するためにやって来タ。だったら、今さらここの生存者なんて、もうどうでもいいよなァ? どうせ他の国には、生き残りがたくさんいるんだロ? ここにいる人間を犠牲にすれば、この星の未来が救えるっていうのなら、お前らにとっちゃ安いモンだよなァ!?」


「違う! お前たちの楽園を破壊するためじゃなくて、ロストエデンを倒しに来たんだ! 生存者たちのことだって、どうでもいいなんて思ってなんかいない!」


「どうだカ! お前がそう思っていても、肝心なのは、ここにいる連中がお前らのことをどう思っているかだゼ!」


 そう言ってエドゥは、今度はこの場にいる生存者たちに呼び掛け始めた。この街に住んでいた人々、それから彼のファミリーの若者たちに対して。


『なぁお前ら! そろそろお前らも分かってきただろ! コイツらに従ったところで、明るい未来なんかありゃしねぇ! 武器を取って、一緒に戦え! コイツらを街から追い出そうぜ!』


 エドゥに呼び掛けられた生存者たち、それからファミリーの構成員たちは、それぞれ顔を見合わせる。ある者は困ったような表情で。ある者は不安そうな表情で。


 生存者たちが自分について来てくれることを確信しているのだろう。

 勝ち誇るように、エドゥは日向に向かって叫ぶ。


「さぁヒュウガ、お前の罪業を見つめる時ダ! 自分たちの正しさを優先して、この街に住む人間たちを(ないがし)ろにしようとした、その報いを受けやがれェ!」


 やがて。

 エドゥのファミリーの一人が代表して、彼に返事をした。


『エドゥ……。俺たちは、ヒュウガたちを信じる。お前の言い分には、従えない』


『…………は?』

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