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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1509話 推理パート

 政府市庁舎に侵入し、エドゥアルド・ファミリーの構成員たちやヴェルデュ研究チームの学者たちを殺害したヴェルデュの正体について考える日向。


 やがて日向は一つの結論を導き出したようだが、彼自身が最もその結論を信じられないというような、そんな表情をしていた。


 日向の様子がおかしいことに気づいたジャックが声をかける。


「どうしたヒュウガ? 何か分かったのか?」


「ジャック……それから皆も……俺がどんな結論を出しても、落ち着いて聞いてくれよ……?」


「あん? まぁ、オーケーだ。努力する。言ってみろよ」


「それじゃあ……。そもそも今回のヴェルデュの侵入、色々と違和感を感じないか?」


「違和感?」


「うん。ヴェルデュって殺戮本能の塊みたいな怪物なのに、暴れ方が妙に静かだ。どんなヴェルデュが侵入してきたにせよ、普通ならもっと派手に暴れ回って、壁とか装飾品とか巻き添えを喰らって壊されまくってるんじゃないか?」


「確かにな……。あ、でも、ヴェルデュ研究室はグチャグチャにされてたじゃねーか」


「でも、逆に言えば、そこだけだ。どうして研究室だけ破壊される必要があった?」


「そりゃあ……ヴェルデュどもが不利になる情報を抹消するため、とか……」


「ヴェルデュにそんな知性があるのか?」


「いやそう言われても分かんねーよ……」


「そもそも、ヴェルデュ研究室に向かう途中に、生存者たちがたくさん集まっているエントランスがある。生存者と見れば速攻で襲い掛かるヴェルデュが、そっちに引っ張られずにわざわざ研究室を狙い撃ちにした理由は?」


「んー……エントランスにはエヴァとかいたし、返り討ちにされる危険を感じて、強い奴がいない研究室を襲ったとか……。あー、けどヴェルデュがそんな理知的な判断をすること自体が問題なワケか。ロストエデンが倒されたことによる進化も、まだ発生はしていないはずだから、進化による知能の向上もないはず……」


「なぜヴェルデュは研究室に直行したか。ヴェルデュの知能指数は置いといて、さっきジャックが言ってた『ヴェルデュにとって不利益になる情報を抹消するため』と仮定してみよう。でもその場合、あの研究室でヴェルデュの研究をしていたってヴェルデュが知っていたのはなぜ? どうしてまったくの無駄なく、あの研究室に直行できた?」


 そこまで日向に言われると、ジャックは突如としてハッとした表情をし、日向と同じく何かに気づいたようだ。


「……おいおいおい。そういうことか? だとするとヤベーぞコイツぁ……」


「恐らくは。『犯人はヴェルデュ』って考えるから、いくつも違和感が生じるんだ。つまり、犯人は人間。この政府市庁舎内部にいる()()がやったと考えれば、全部つじつまが合う」


 その日向の答えを聞いて、他の仲間たちも驚愕している様子だ。


「ぼ、ボクたちの中に裏切り者がいるってことぉ!?」


「私の気配感知でも建物内のヴェルデュの位置を特定できなかったのは、そもそも最初からヴェルデュなどいなくて、犯人が人間だったから……」


「いったい何考えてやがるんだソイツぁ……。ヴェルデュの……ロストエデンの仲間になったって、良いことなんか一つもねぇだろうが……!」


「あ、でも日向くん。最初にエドゥのファミリーさんたちが殺された場所でさ、窓が開いてたよね? あそこからヴェルデュが侵入してきたって話じゃなかった?」


 北園が日向にそう質問するが、彼は首を横に振った。


「あれはたぶんフェイクだ」


「フェイク?」


「外は今も雨が降ってる。ヴェルデュが外から侵入してきたのであれば、ずぶ濡れになってるのは間違いない。だったらどうして雨に濡れていたのは、雨水が入り込んできていた窓の付近()()だったのか? ヴェルデュの濡れた足跡が廊下辺りまで続いてなければおかしいはずだ」


「あ、たしかに……。ヴェルデュがわざわざ身体を拭いて入って来たとは思えないし。そもそもヴェルデュなら、たぶん丁寧に窓を開けて侵入なんかせずに、窓を壊して入って来るよね」


「そう。だからあれは、中から誰かが窓を開けたんだ。構成員たちを殺した後、『外からヴェルデュが侵入してきた』って俺たちに誤認させるために」


「うう……まんまと騙されちゃった」


 悔しそうな表情をする北園。

 それから今度は、スピカが発言。


「こうして考えてみると、犠牲者たちの殺害方法も、これまでのヴェルデュと比べるとおかしなところがあるよねー」


「はい。多くのヴェルデュたちは、噛みつくか、引き裂くか、体当たりとか、そういった攻撃方法です。ですが、犠牲者たちの傷は……」


「うん。アレは引き裂かれたというより、大振りの鋭い刃物でバッサリと斬られたような感じだった。爪とかで引き裂いたにしては、遺体の切断面が綺麗すぎる。食いちぎられたような傷跡とかもまったく無いしね」


「中には、肩から逆側の腰にかけて身体を真っ二つに切断されていた遺体もありました。あんな芸当ができるのは、俺たちの中でも限られています」


「ここまで来たら、犯人候補も絞れそうだねー」


「はい。人を真っ二つに切断できるような武器、あるいは能力を持った人間をリストアップしてみましょう」


 さっそく日向は、犯人候補をまとめてみる。


 まず『太陽の牙』を持つ日向と日影。

 腕から刃を生やせる本堂。

 高周波ブレードを装備しているレイカ。

 ”風の練気法”で斬撃もできるシャオランとミオン。

 ”スサノオの一太刀”という規格外の風の斬撃が撃てるエヴァ。


 こんなところだろうか。

 リストアップが終わった瞬間、日向はすぐに声を上げた。


「日影! いったい何があってこんな非行に走っちゃったんだ!」


「待てテメェ。オレなわけねぇだろうが。だいたいアリバイもある。オレはずっとシャオランと一緒に西館で行動していたんだぞ」


「分かってる。冗談だよ冗談。そもそも、さすがのお前でも、素の身体能力で人間を真っ二つにするのは難しいだろうし。”オーバードライヴ”を使えば話は別だけど、そうなれば遺体の傷口に焦げ跡ができるはず。それが無いってことは、お前じゃないんだろう。残念ながら」


「残念ながらって言うな」


 続けて、北園とエヴァも手を挙げる。


「私も日向くんとずっと一緒にいたから、アリバイを証明できるよ」


「私はずっとエントランスにいました。ここにいる生存者たちが私の証人になってくれます」


 残る容疑者は本堂、ミオン、レイカの三人。

 誰が可能性が一番高いか、日向たちは考える。


「本堂さんは……何となく違う気がするんだよなぁ。あの人ならたぶんもっと上手くやる。レポートの破棄だって、あんな雑に破り捨てるんじゃなくて、電撃で消し炭にしてただろうし」


「ミオンさんは第一発見者だし、ちょっと疑わしいところがあるかなぁ……。私たちと別れた後、すぐに南館の方に向かったから、そこから研究室を襲えるかは微妙なところだけど、私たちが気づいていないだけで、実際は順序が逆……研究室を襲撃してからファミリーさんたちを殺したって可能性もあるし……」


「でも師匠の性格的に、やるなら普通に殴って仕留めると思うんだよね。まぁ、誰かに罪を被せるためって線もあるんだけど……」


「ったく、異常事態だぜ。マジで本当に誰かが裏切ったのか? ここまで一緒に戦ってきた仲間だぞ? 疑っていいのかよ……?」


「ジャックくんー。レイカちゃんに怪しいところはなかったー?」


「新しいお友達とやらにぞっこんなところ以外、いつも通りだったと思うけどな……。だいたいレイカにせよ、ミオンにせよ、ホンドウにせよ、動機が見えねー。ヴェルデュの味方をしていったい何の得がある?」


 ……と、その時。

 急にエヴァが声を上げた。


「あ……これは……人の気配が次々と消されて……殺されていく……!?」


「何だって!? エヴァ、場所は!?」


「この北館の三階です!」


「三階といえば、本堂さんがいる……。まさか本堂さんが裏切り者……!?」


「急いで向かいましょう!」


「ああ! そうだ、シャオランはこのエントランスで待機してくれ! ここを完全に空けるわけにもいかないからな」


「わかったよ!」


 シャオランを置いて、日向と北園、日影とエヴァ、スピカとジャックは三階へ急行した。

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