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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1508話 見えない連続殺人鬼

 ジャックからの連絡を受けて、日向と北園とエドゥは北館二階のヴェルデュ室へ向かう。

 ミオンには単独でのヴェルデュ探索を担当してもらった。彼女の実力なら、まず大丈夫のはずだ。


 北館二階の通路の突き当たりに研究室がある。


 その部屋の前にもエドゥアルド・ファミリーの構成員が二人、見張りとして立っていたのだが、先ほどの二人のように惨殺されていた。

 そのうちの一人に至っては、左肩から右わき腹にかけて真っ二つに切断されるという、ひどい殺され方をしていた。


「ひ、ひどい……」


 北園が思わず口元を手で(おお)う。

 一方、また仲間が殺されたのを見て、エドゥは怒りを燃やしている。


「クソッたれのヴェルデュめ……俺が必ズ……!」


 ……と、その時。

 研究室のドアが開き、中からジャックが顔を出した。


「おう、来たかオマエら。……そこの二人も、俺たちが駆けつけた時にはもう……」


「そうか……。それでジャック、部屋の中は?」


「ああ、こっちもひっでぇ有様だぜ」


 そう言ってジャックは、三人を研究室の中へ案内。

 ヴェルデュ研究室は、めちゃくちゃに破壊されていた。


 各種コンピューターや検査機器などはほぼ全てスクラップにされ、机の上のレポートはぐしゃぐしゃ。そして、ヴェルデュ化について調べてくれていた五人の学者も、引き裂かれたように殺されていた。


 部屋の中にはコーネリアス少尉がいて、机の上のぐしゃぐしゃにされたレポート用紙を見つめている。レイカの姿は無さそうだ。


「うわ、ひどいな……。ここだけ別の生物が暴れ回ったみたいに破壊されてる」


「何より問題なのは、学者先生たちがお陀仏にされちまったことだ。これじゃヴェルデュ化の研究ができなくなっちまう」


「何か、ここまでの研究データとかは残ってないのか?」


「机の上のレポートがそれっぽいんだが、見てのとおりバラバラに破られちまってる。ったく、どこのヴェルデュかは知らねーが、暴れすぎだぜ……」


 まだ見ぬ連続殺人犯のヴェルデュに悪態をつくジャック。

 そこへ、机の上の廃棄物同然のレポートを見つめていたコーネリアスが口を開いた。


「しかシ、このレポート、そこまで派手に破られてはいないようダ。シュレッダーで細切れにされていたならともかク、これなら少し時間をかければ修復できそうだゾ」


「そりゃ不幸中の幸いだな。んじゃエドゥ、レポートの修復を頼めるか? レポートはポルトガル語で書かれている。ネイティブのオマエが適任だろ」


 そう頼むジャックだったが、エドゥは首を横に振った。


「ファミリーの連中をやりやがったヴェルデュに、この手で直接落とし前を付けさせてやらねぇと気が済まねェ。レポートの修復はそっちでやってロ」


「おいおい……。ったく仕方ねーな。じゃあコーディ、悪いが任せていいか?」


「レイカほどポルトガル語にハ慣れていないかラ、少し時間はかかるゾ。いいカ?」


「必要経費と思って割り切る。レイカを見つけたらアイツに任せるよ。エドゥみてーなタイプは、一度決めたらテコでも動かねー。無理にレポートを任せようとしたら、きっと不毛な争いが発生するぜ」


「了解しタ」


 ジャックの指示を受けて、コーネリアスはレポートを修復する作業に入る。

 そしてエドゥはこの部屋を出て、ヴェルデュを探しに行ってしまった。

 部屋を出た直後のエドゥの背中に、ジャックが声をかけた。


「ヴェルデュ見つけたら俺たちを呼べよ! いくら直接カタキを討ちたいからって、オマエ一人じゃキツイだろ!」


「……ちっ、そうさせてもらおウ」


 そう返事をして、エドゥは去っていった。

 日向たちのもとへ戻って来て、ジャックはため息を吐く。


「はぁー。ったく、どうしてこう、人間同士、もっと協調できないかね?」


「本当にな」


「……まぁ、マモノ災害の決着の件でオマエらにケンカふっかけたことがある俺も偉そうに言えた立場じゃねーか」


「懐かしい話だなぁ。ところでジャック。レイカさんは?」


「オマエらからヴェルデュ侵入の連絡を受けた時、孤立している別館のファミリーの連中が心配だって言って、一足先にヴェルデュ探索に向かったよ。東館の方に行ったと思ったんだが、会わなかったか?」


「いや、会わなかったよ。入れ違いになったかな」


「ともかく、思ったより事態は深刻だぜ。別館にいる連中をいったんエントランスに集めよう。敵はどうも隠密行動がお得意らしい。この研究室、たどり着くには結構な人目を()(くぐ)らなきゃならねーはずだが、ご覧のとおり侵入されてるからな」


「同感だ。このままじゃ、孤立している人間から一人ずつ始末される。北園さん、また悪いんだけど……」


「まかせて。”精神感応(テレパシー)”でみんなをエントランスに呼び戻すよ」


「頼んだ」


 北園は能力を使って、東館や西館にいる人間たちに声を届けた。

 その声を聞いて、多くのエドゥのファミリーたちがエントランスに帰還。

 しかし、戻ってこなかった構成員たちもいた。


 北園の声を聞いて十分ほど経過。

 日向たちもエントランスに移動している。

 そこへ、西館にいた日影とシャオランとスピカも、いったんエントランスに戻ってきた。


「駄目だ。かなり探したが、西館にはヴェルデュどころかネズミ一匹いやしねぇ」


「お化け屋敷探索してるみたいで怖かった……」


「んなこと言うのやめろシャオラン。オレだって意識しねぇようにしてたんだぞ」


「ヴェルデュはいなかったけど、ワタシたちが探した限り、こっちで殺された子は一人もいなかったみたいだよ」


「了解です。……エヴァ、そっちはどうだ? ヴェルデュの気配は感じられるか?」


 そう日向がエヴァに声をかけたが、エヴァは首を横に振った。


「いいえ、残念ながら……。感じるのは、南館にミオン、東館にエドゥとレイカの気配。エドゥとレイカは合流し、一緒に行動しているみたいです。あと、北館二階の研究室にコーネリアス、同じく北館の三階の客室に仁とエドゥの仲間五人ですね」


「そういえば本堂さんの姿が見当たらないと思ったら、三階にいたのか。けど、いったいどうして? それも、エドゥのファミリーと一緒に……」


「そのエドゥの仲間たちが体調不良を訴えたのです。もしかしたらヴェルデュ化の兆候かもしれないと仁が判断して、三階に隔離し、様子を見ているようです」


「なるほど。孤立してるのは心配だけど、本堂さんなら大丈夫かな……」


 日向がエヴァの報告を聞いている横で、ジャックが頭を抱えながら、ぶつくさとつぶやいていた。


「しっかし、いったいどんなヴェルデュが侵入してんだ? 透明になる能力でも持ってんのかよ? でも透明になるだけじゃ、エヴァの気配感知はごまかせねーはずだしなぁ……」


「犠牲者たちがどんなふうに殺されたかを考えたら、犯人像も浮かび上がるかな? どんな生物がヴェルデュ化しているのか……」


 さっそく日向は思考を開始。

 ほどなくして、一つの結論をはじき出した。


 しかしそれは、はじき出した日向自身でも、到底信じられない解答だった。


「……いや、まさか。そんなはずは……」

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